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太陽と月の欠片 部屋4

 携帯の目覚ましがなって大海は目を覚ました。
 そうだ、杉浦の部屋だ、と起き上がってベッドを覗き込むと杉浦がまだ寝てた。
 カーテンからの仄かな朝の光に綺麗な顔が照らされて心臓がバクバクした。
 うわぁ…。
 朝からいいもの見た。
 大海はベッドに顔を乗っけて息を止めながらじっと杉浦の寝顔を見つめる。
 睫毛長い。口がちょっと開いてるのがやばい。
 そっと前髪に触れて髪を上げてみた。
 「ん…?」
 杉浦の睫毛が震えた。
 「おはよう」
 声をかけると杉浦の目がゆっくりと開いてくる。
 「永瀬…?」
 その唇に誘われるようにちょっと触れるとがばっと杉浦が口を抑えて起き上がった。
 「な、何…す…」
 「だって断らなくていいって言っただろ」
 「………」
 杉浦の顔が真っ赤になってる。予測してなかった事だったらしい。
 「朝から杉浦の寝顔見ちゃった」
 ぷぷっと大海は笑った。
 「しかも寝癖つき。か~わい~」
 「…ふざけるな」
 慌てて髪を撫でるのがまた可愛くて。
 「俺は短いから寝癖つかねぇし。新鮮~~」
 はぁ、と諦めたように杉浦が溜息を吐き出した。
 「……心臓に悪い」
 どきどきしてるって事か?
 「永瀬」
 「うん?」
 にこりと杉浦が笑顔を見せた。
 ちょい、と自分の唇を指差す。
 もしかしてもっと、キスってことか…?
 大海は喜んで顔を近づけ、唇を重ねると杉浦が大海の頭を抑えて舌を入れてきた。
 うぉっ!
 杉浦の舌が大海の舌を絡めてきた。
 唾液の混じる音が生々しい。
 始めは杉浦から仕掛けてきた事だったのに、それに夢中になって大海は杉浦の舌を絡めて、今度は杉浦の口腔に舌を差し込んだ。
 「んっ……」
 杉浦の鼻を抜ける声にますます熱は上がってすっかり大海のものが天を衝いて大きくなっている。 
 やばいなぁ、と思いながらも止められなくて、何度も何度も舌を絡めた。
 「永瀬っ!」
 ぐいっと杉浦が大海の身体を押した。
 「いつまでっ!」
 ぐいと濡れた唇を手で拭っている姿にまたぐっと色気を感じてしまう。
 「…だってエロいんだもん」
 「はぁ?」
 杉浦は立ち上がってさっさとベッドを降りた。
 「杉浦…?」
 「ザマァミロ。治まるまで部屋からしばらく出られないだろ」
 べっと舌を出して杉浦はドアを開けてばたばたと出て行った。
 大海はぽかんとしてそのあと噴き出した。
 可愛い!
 杉浦の顔がありえないほど真っ赤だった。
 しかし、朝っぱらからベロチュー…。
 なんかオトナになった気分だ。
 

 日曜でも部活で杉浦と一緒に杉浦のお母さんに見送られて杉浦の家を出た。駅に向かって歩く。日曜の朝なので人影は少ない。
 「なぁ……」
 「何?」
 大海はずっと気になっていたのだが、お母さんがいて聞けなくていたので杉浦の耳元に小さく声を出した。
 「お前、ベロチュー誰かとした事あんの?」
 「………」
 杉浦がじろりと睨んできた。
 「誰ともないけど?キスだってした事ないし」
 「まじで!?じゃ、俺だけ?」
 「…声でかい」
 大海は口を押さえた。
 「あ、俺もないから!」
 「………そう」
 「なんだ…嬉しくない?俺は嬉しいけどな……」
 「……別に。俺は永瀬がどうか関係ないし」
 「え?」
 関係ないってどういう事?
 「今日はあとその話題振るなよ?」
 「え?あ、ああ」
 杉浦に冷たく釘を刺されて大海は頷いた。
 「今日からブロック強化だ。永瀬はいいけど…やっぱ兄貴に聞いてみるか…。効果的な練習」
 「あ、ああ。そうだな」
 バレーの話になるけどなんとなく杉浦に拒絶を喰らったようで大海はしゅんとしてしまう。
 「永瀬、昨日の試合でコンビネーションどうだった?」
 「……前よりはいいけど、どんぴしゃに中々こねぇから辛いとこはあるな。昨日の相手だったからそれでも決まったけど…」
 「…そうだな。上位校なら拾われてるだろう。問題多すぎ」
 「……そうだな。それでも前より全然いいけどな」
 「もっといけるはず」
 杉浦は考え込んでいる。
 そのあともずっと学校につくまで話題はバレーの事だけだった。
 学校についてしまうと日常的な事で杉浦の家に泊まってキスしたなんて嘘だったのではないかと思えてくる。
 ずっと部活中も杉浦の態度は変わらずいつも通りだったのにも全部自分に都合のいい夢だったんではないかと思えてくるのに大海は何回も、いや本当にあった!…はず、と頭を振っていた。
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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