「永瀬…嫌じゃない?」
「何が?」
杉浦の手が震えて大海の服を掴んでいた。
その手を掴んでやる。
「…永瀬」
「だからお前考えすぎ。泣いて叫んでいいって言ってるのに」
「…しない。そんな事しないけど…どうするの…?俺、答えだしていいの?出したら永瀬きっとひどいよ」
「ああ?何が?」
「だって…俺きっと……永瀬しかいらなくなる…」
大海は目を見開いた。
「……俺、家もそんなで…きっと……」
「いいよ。っていってもまだまだガキだけど。大きくなるから」
「なってるけど?」
「いや、身体じゃなくて」
分かってるよ、と杉浦が笑う。
「………前に言ってた関係ない、とか言ったのはどういう意味?」
ずっと気になっていた事を聞いてみる。
「ああ……永瀬が誰を好きだろうが、どうしようが、俺は永瀬しかいらない、から…」
「……俺だって今までこんなに誰かに執着した事ないけど?」
「そ…う…?」
「ない」
大海は杉浦に何度もキスした。手も掴んだまま。
「…手繋いだまま寝る?」
ウザイだろうか?でも心細げに見える杉浦を放したくない。
杉浦が頷いた。
「お前、恥かしい」
頷いたくせに杉浦がそんな事を言うのでよけい顔が赤くなってくる。
「俺だって自分で恥かしい」
大海は自分のベッドに戻るけど手は繋いだまま。
「…でもありがとう…。今まで誰にも…言った事なかった」
「いくらかすっきりするだろ?」
「…ああ。永瀬に…頼ってばかりなのが……バレーも戻ったのも永瀬がいたから…」
「……それ、…後悔してないか…?」
「なぜ?…してない。楽しいよ。たとえ自分が出られなくてもやっぱりバレーが好きなんだろう。したかったんだ、とも思う。今は永瀬とのアタック練習が一番楽しいと思う。…絶対もうボールに触らないと思ったのに。それも永瀬が責任とってよ?」
「勿論」
「……いや、そこで肯定されてもどう責任取るんだよ?」
杉浦が呆れた声を出した。
「わかんねぇけど」
「分かんないくせに勿論なんて返事するな」
「気持ち的には杉浦の全部俺が受け持ちたいから。あ!キス約束とかもうするなよ」
「え?別に減るもんでもないだろ。というよりあれふざけてただけだろ」
「いや、絶対半分以上マジだ。だからもう絶対ダメ!な!ホントは顔だって隠しておきたい位なのに」
「…………」
杉浦がじとりと大海を見た。
「永瀬……」
「小せぇってんだろ?分かってるし!…吉村にも言われた。でも仕方ないだろ」
もうこうなったら恥かしいも小さいもどうでもいい。全部言ってやる。
すると呆れたように杉浦が大海を見た。
「……だいたいヤローとキスなんか好きじゃなきゃ出来ないだろう?俺だって最初から誰ともする気なんかないし。そもそも課題クリア出来ないだろうとは思ってたから。永瀬だけだ。やっぱり俺が思ってる以上なのは」
「……………そうなんだ?」
「当たり前だ」
杉浦が頷く。
「なんでそんなに永瀬は嬉しそう?」
「え?…だって杉浦好きじゃなきゃキス出来ないんだろ?」
だったら大海の事は好きって事だ。
それに杉浦も気付いたのかかっと顔を赤らめている。それでも杉浦からの直接の言葉はまだない。まだないけど、言ってるようなものだろう。どうしても口端が上がる。
「…寝る」
杉浦が布団を被った。でも手は離さないのにやっぱり大海の顔はどうしても緩んでしまう。
「電気消すぞ」
大海はリモコンで電気を消した。
自分の部屋に杉浦がいるのが不思議だけど、違和感はない。
先週は杉浦の部屋で今週は自分の部屋。
3年後は一緒に住んでいる予定。
それが不思議としっくりくる感じがする。
「杉浦、ホントになんでも言っていいから。気遣うな。当たっていいし泣いていいから」
「……たまになら…いい、か?……本当に?さっきみたいにぐずぐずになるぞ?」
「別にいい。可愛いだけだから」
「…………永瀬?」
「ん~~~?」
「…いや、なんでもない……おやすみ」
「おやすみ」
笑いが漏れそうだ。杉浦が澄ました声じゃなくて戸惑っている。照れているんだろう。きっと表には見えないのだろうけど。
杉浦の握っている手にぎゅっと力を入れると杉浦も握り返してきた。
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