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熱視線 小夜曲~セレナーデ~3

 「どっか遊びにでも行くか?外はとんでもなく暑いが…」
 いつもエアコンの効いた部屋にばかりいるので確かに暑いという意識がなかった。
 「どこに?」
 「ん~~~…どこも人は山ほどか…。ドライブにでもしとく?車の中なら快適だし」
 「うん」
 そういえば明羅は車で遠出とかも今までした事ないな、と怜をじっと見た。
 「途中で美味そうな店があればそこで飯」
 明羅は頷いた。
 


 「ね、ね、…どこ行くの?」
 「やっぱ夏なら海でしょ。くそ暑いし、着く頃には夕方だから眺めるだけだけど」
 「…普通暑いから海に行くんじゃない?」
 「だめだめ。車で快適に眺めるだけで十分だ。俺は暑いのは嫌いだ」
 「……夏生まれなのに?」
 「関係ない」

 車が走り出す。
 カーナビを入れて音がなるが画面は地図で音はテレビだ。
 そして日差しが強いのか怜がサングラスをかけたのに明羅はどきどきした。
 着てるのはいつもと一緒でTシャツにジーンズなのに、今日はちゃんと無精髯もなくてかっこいい。
 大人の男、という感じで明羅は見ていられなくて外の景色に目を向けた。
 見たいのに見られない。
 だっていつもと違う。
 「…時間ってどれ位かかるの?」
 「1時間半ってとこかな。眠いなら寝てていいぞ?」
 「え?寝てたら意味なくない?」
 思わず怜の顔を振り向いてそのいつもと違う顔を見てかぁっとなった。
 怜の顔も明羅を向いていたけど視線はサングラスのせいでどこを見ているのか見えない。
 
 その時テレビの音が明羅の曲を使ったCMが流れた。
 この間怜がさらりと流して弾いたやつだ。明羅はどきりとした。
 「お。これいい曲だと思わねぇ?」
 「えっ!?」
 明羅の心臓が大きく跳ね上がった。
 「そ、そう?…この間も弾いてたよ、ね」
 「おう。密かにお気に入りだ」

 にかっと八重歯を見せて怜が笑うのに明羅はもうだめだ、と思った。
 ずっとずっと気づかないふりをしていたのに。
 分かっていないふりをしていたのに。
 「生方に調べてもらったけどこれ誰作ったのかわかんねぇんだよな」
 「………そう?」
 「そう。なんだお前はそう思わないか?話合うかと思ったんだが」

 だってそれ俺が作ったやつだから…。
 恥ずかしくて明羅は言えなくて顔を俯けた。
 まさか怜がそんな風に思っていたなんて知らなかった。
 どうしようと明羅はわけも分からず落ち着かなくなる。
 もうだめだ。
 だって心が嬉しいと悲鳴を上げた。
 違う、と自分に言い聞かせていた。

 だって自分はこれでも一応男で、怜さんも男だ。
 怜はかっこいい。
 燕尾服でもかっこいいし、今みたいなのだって、無精髯だって。
 自分はかっこいいから程遠いのはわかっているけど、それでも一応男だ。
 中学の時女の子と付き合った事は一応あったけど相手からの告白で何していいのか分からなかったから結局何もないまま自然消滅した。
 それ以降は何もない。
 好きになった子もいなかった。
 待ち焦がれていたのはずっと年1回の二階堂 怜だったのだ。
 好きとかそんな簡単な事じゃなかったはずだけど…。

 うわ、やめて!と明羅は恥ずかしくて耳を塞ぎたくなった。
 怜が鼻歌で明羅の作ったフレーズを歌ってる。
 恥ずかしすぎる。
 でもそれくらい怜が気に入っているならば嬉しい。

 やっぱり好きだ。
 もう二階堂 怜の音が、じゃなくなっていた。
 全部が。
 寝るときの腕なんてやばいと思う。
 明羅の細い白い腕と違うのだ。

 「……ね、なんで怜さん家からあんまり出ないのに俺みたく白くないの?」
 「地黒だろ」
 鼻歌を止めて欲しくてどうでもいい質問をしたら簡単に答えられてしまった。
 だから恥ずかしいからやめてくれ、と明羅は嬉しいながらも複雑だった。
 それなのに何回も曲が流れるから…。
 もう明羅は諦めて外だけの景色を見るのに集中した。
 
 「うわっ!海!海!」
 「当たり前だ」
 明羅は運転する怜の服を引っ張った。
 「俺初めて、かも」
 「は?」
 「海来たの」
 「……まじめにか?」
 明羅はこくりと頷いた。
 「仕方ねぇな」
 怜は車を止めた。
 もう夕方になりかかっていて皆帰る所だ。
 「足だけでも浸かってみ?」

 買ってもらったのはちゃんと靴まで揃っていて、今はそのスニーカーだった。
 明羅は怜に促されてそれを脱いだ。
 「あつっ」
 砂が熱い。
 「だろ?日中なんて火傷するんじゃないかってほど熱い」
 怜も靴を脱いでジーンズを捲くった。
 波打ち際を裸足で歩くと波がやってくる。
 「うわぁ~~~~」
 波が引くとざわざわと足の裏の砂が崩れそうな感覚がする。
 「ちょ、ちょ…」
 明羅は怜の腕を掴んだ。
 「これ、怖っ」
 「ば~か」
 怜が口を押さえて笑ってた。 
 

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