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太陽と月の欠片 大会3

 いつもは2回戦3回戦で姿を消しているらしい。
 それが順当に勝ち上がっていく。
 「大海と吉村がいるだけでこんなに違うんだな…まぁそれよりも杉浦が入ったおかげで真面目に練習も効いているのが一番なんだろうけど」
 キャプテン青山がベスト8をかけた試合の前に言った。
 きっと誰もが杉浦が選手で入れたら、と思っているはず。
 バレーはどうしたって個人だけで頑張っても仕方のない競技だ。
 「ベスト8行ったら初めての事だ」
 青山が笑っている。
 皆が生き生きしていた。
 3年生は1試合1試合が引退をかけたゲームだ。
 3年生3人は高校でバレーをやめるらしい。進学校でそれでも3年間バレーをしてきたんだからやっぱり好きなのだろうに。
 「ベスト8までいけば来年は俺達よりもっといい人材も入ってくるだろう。大海のためにも頑張らないとな。大海には有名になってもらわないと」
 バレーの強豪校ではなくぬるいと最初はちょっとばかり不満もあったが今ではここの学校でよかったと大海は思う。強豪校のように全国から選手を集めるような学校だったらきっとこんなほのぼの先輩などいるはずない。
 スタメン獲得に躍起になり人を貶めて、だってあるかもしれない。
 それがここはない。
 「……俺、ここの学校でよかったと思ってるっす」
 なんといってもここに杉浦もいた。
 青山や他の3年が大海の身体を小突く。
 「こっちこそだ!ベスト8見られるなんて思ってもなかった」
 「もっと上いかないと」
 大海が当然の事として言うと、ぎゃははと笑いながら皆でじゃれつく。
 杉浦もそれを見て薄く笑っていた。

 試合前のアップ。
 これを勝つとベスト8。
 さすがにここらまでくれば相手校の上手さはアップを見ただけでもわかる。
 アップのときは杉浦も入る。
 コートに一番初めに並ぶときも、最後も。
 でもコートの中には入らない。
 試合で一緒にしたい。
 それはきっと大海はバレーを続ける限りずっと思ってしまう事だろうと思う。
 そして杉浦もきっとそう思ってくれているだろう。

 試合開始のホイッスルの音。
 応援に来た保護者や学校の生徒達の応援の歓声。
 この試合の始まる前の緊迫感が好きだ。
 キャプテンのトスでサーブはキャプテンから。
 大海が前衛に上がる。
 相手のスパイクを吉村が上げてオープンからのスパイク。
 一発目は決まった。

 バレーは流れに左右もされる。
 流れがよければ何でもない事でも面白いように点数が入っていく。そのかわりに流れが相手チームに行ってしまうとなにをしても点数は入らない。
 流れを掴むためにも1発目は大事で、大海はそれを手に入れた。
 しかし流石に相手も簡単に乗らせてはくれない。
 常に大海にはブロックが2枚、3枚つく。
 すでにここまで勝ち進んできてかなりマークされているのだ。
 それでも負けるわけにはいかない。
 杉浦の指示で練習をしたおかげで大海のチームもブロックが形になっている。
 試合を重ねる毎にそれが完成していくのも感じていた。
 それでも一進一退の試合。
 攻撃が単調になってくると、すかさず杉浦がベンチからタイムを取った。
 「攻撃が単調になっています。なかなか決まらなくて苦しいのはわかるけど永瀬だけではだめです」
 「すまん…相手のブロックがよくてどこに上げても止められそうな気がして」
 セッターの渡辺が弱気を見せる。
 大海と青山以外のアタッカーがどうしても弱いからその気持ちもわからなくもない。
 でもそれでは大海でも抜く事が難しくもなってくる。
 「練習を思い出してください」
 「分かった」
 渡辺が頷く。
 それでも一進一退。流れは両チームとも留まったまま。
 1セット目は取った。2セット目は取られた。3セット目のデュースの末取られる。
 もう後がなくなった。
 「もう後がありませんよ」
 静かに杉浦が言うのに皆が気持ちを噛み締めた。
 特に3年生。
 「キャプテン」
 青山が頷く。そして気合の一声を上げ、皆がそれに答える。
 運命の4セット目。
 
 
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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