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太陽と月の欠片 問題2

 テストも終わってあと1ヶ月ほどで夏休み。
 それも部活三昧になる予定だ。
 部活ないのはお盆一週間位。
 「大海、お母さん達はお父さんのとこ行くけどあんたどうするの?」
 「え?ああ、別に行かなくていい」
 「大海身体大きいし、お父さんとこ狭いからお母さん的にはその方いいけど。家に一週間一人も…」
 母親が難しい顔をする。
 「大丈夫だって。大学行くようになったら一人暮らししなきゃいけなくなるし。ただ杉浦でも呼んでいい?」
 「そりゃいいけど。あちらにはお世話になりっぱなしだし…。杉浦君なら羽目外すとかなさそうだしね」
 「…ないだろうね。目の事もあるから無茶もしないし」
 「そうね。吉村くんだったら心配だけど」
 「……吉村に言っとこう」
 あははと母親が明るく笑っている。
 「じゃ、毎日ちゃんと連絡入れて」
 「了解」
 うし!と大海は内心ガッツポーズだ。
 1週間部活もなし。親もなし。

 「な、夏休みの部活ない1週間ってお前用事ある?」
 「…特にないけど」
 駅から学校に向かう間に杉浦に聞いてみた。
 「ウチこねぇ?誰もいなくなるんだ。母親と弟は父親のとこ行くし」
 「………永瀬がいいなら」
 「当たり前だっつぅの」
 大海の内心はかなり浮かれたけれど杉浦はいたって平静に見える。
 「まぁ…まだ先だけどな」
 浮かれてる自分が恥かしくなった。
 いつも杉浦には余裕が見えて、自分はがっついたり落ち着きがないようで凹むことがしばしばある。

 試験前の部活なしの時は学校後に一緒にいられて、大海の部屋でキスしたりも出来たけど、また部活が始まればそんな事も出来なくてちょっと、いや、かなり物足りない。
 夏休みになったらもしかして、と密かに期待しても健全なはず。
 「セッターがさ」
 杉浦が話題を変えてきた。そんなに嬉しくもなかったのかとちょっとがっかりしてしまう。
 「え?ああ、…」
 「やっぱり一人じゃだめだと思うんだ」
 杉浦が難しい表情を浮べた。
 「アタッカーも弱い。来年の1年に期待っていってもまだ先だし、経験者、しかも使えるやつが入ってくるかも分からないしね…」
 杉浦は真面目だ。
 先の事を色々と考えている。
 大海など部員がいないんだから仕方ないと思うだけなのだが…。

 しかし人数が足りないのも本当だ。
 3年生が抜けて練習試合形式も出来ないのだ。
 セッターも杉浦が出来るんだったら、と何度も言いたくなる。
 それは言えない事だけれど。
 「アタッカーとセッターが欲しい、な…」
 杉浦が呟いた。
 「永瀬の負担が大きすぎる…」
 「…考えても仕方ないから。難しく考えるな」
 杉浦の頭に大海は手を置いて撫でる。どうしても触れてしまう事は多くなったって仕方ないよな?と自分に言い聞かせる。
 「ま、そうだね。出来る事するしかないな」
 杉浦も頷く。
 大海はいつでも一緒にいたいと思っているのだが、杉浦にはあまりそれが見えないと思う。
 それでもたまにキスしてきてくれたりするし、誘いを断られたこともないし、足りないまで言われたのだから一緒にいたくないわけじゃないと思うんだけど。
 キスより先に進んだのは結局まだあの時の1回だけ。
 とりあえず夏休みの1週間は一緒にいられるらしいのでそこで! 
 大海は心の中で意気込んだ。
 
 そんな時期はずれに転校生がやってきた。
 双子の。
 一人は大海のクラスに入ってきた。
 背が大きい。体もいいし何かスポーツやってるはず。
 なんだろう?
 大海は興味を引かれた。
 「相澤 光(ひかる)です。別なクラスに双子で宙(そら)もいるので、よろしく。二卵性だからそんなに間違う事ないと思うけど」
 その転校生がくるりとクラスを見渡して大海を見た。
 お?という顔をする。
 知り合い?いや双子の知り合いはいないな、と大海は首を捻る。
 女子が目を輝かせている。
 餌食だな、と哀れに思う。
 杉浦は密かに騒がれてはいるらしいが、大海とのペアが出来上がってるとという認識らしくて今の所平和だ。
 転校生に双子でかっこいいでは騒がれること間違いないだろう。
 ご愁傷様、と大海は転校生を見た。

 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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