杉浦が変わった。
表向きには何も変わったようなところなど見えないだろう。
でも変わった。確かに。
自分は呆れられたのか?
大海は微かに見え隠れする杉浦の拒絶に焦っていた。
うざく思われたのだろうか?
なんとなくぎくしゃくしている。
光がクラスにいるから…?
いや、違う。
「俺ちょっと宙とコンビの事で話してくるから」
杉浦がそう言って昼休みに弁当をさっさと食べ終えると行ってしまう。
「…どうしたの?」
「………知らねぇ」
光が大海を伺う様に見てきた。
「最近杉浦って大海に冷たくない?」
やっぱり光にもそう感じてしまうのか。
改めて人に言われてしまえば大海はがっくりしてしまう。
「…………俺、うざい?」
「…ちょっと?」
光がふき出す。
「やっぱマジなんだ」
「うっ」
思わず吐露してしまったのに確認されてしまった。
「でも杉浦は別にうざいっては思ってないだろ?」
だといいけど…。
じゃ、なんで?
でも杉浦を見ていればどこか無理している感じがする。
わざと…?
でもどうして?
「ふ~ん」
「……なんだよ?」
光がにやにやして見ていた。
クラスでも杉浦と光と3人でつるむようになっていた。
光はいつも誰にでも気さくだしあっという間にクラスに馴染んでいたけれど何かと言えばやはり一緒に行動が多い。
「俺中立~。宙の味方もしないから安心していいよ?」
にやにやと笑う。
「宙はやっぱり…」
「マジじゃない?初めて見たもん。自分からアプローチするの」
大海は頭を抱え込みたくなった。
そしてはぁ、と溜息を吐き出す。
「でも杉浦は宙の事相手してないでしょ」
「…そうかぁ?……」
大海は光がそう言っても安心出来るはずなどない。
杉浦が先を考えて行動するのはいつもの事で大海みたいに行き当たりばったりではない。何かを考えて、だとは思うけれど。
「いいよ。一人で大丈夫だから」
何度も杉浦にそう言われてきたけれど、今回ほど硬い声は今まではなかった。
「別に俺が勝手についてくだけだから気にしなくていい」
大海がそう言うと杉浦は顔を歪めて顔を俯ける。
杉浦からはっきりした拒絶を聞くまで引くつもりはなかった。
そんな簡単に諦めるほどの思いなんかじゃない。
そんなんだったら最初から好きになどなるか。
無言で駅まで歩く。
杉浦の目の調子にはかなり気を遣った。
元々最初から杉浦は言わないのに頑なに見える今の様子ではさらに自分から言う気などないだろう。
どうして、と聞き出したい思いを飲み込む。
もし聞いてこれ以上ない拒絶の言葉が杉浦から出てきたら大海はきっと再起不能になってしまいそうだ。
触りたい。触れたい。
手を伸ばせばすぐ横にいるのに杉浦はその全身で拒否しているのを感じた。
「…永瀬、明日は本当にいいから。病院行く日だから学校休む」
「………分かった」
定期健診で大学病院に通っている事は聞いていた。でも治療法がないのだとも。
「…永瀬、……」
杉浦が駅に着いて顔を上げて何かを言おうとしてまた顔を俯けた。
「…ありがとう。じゃ」
「ああ。気をつけてな」
杉浦は小さく頷いて駅に姿を消した。
やっぱり何か違う。
嫌われてるのとも違うようだけど、でも大海を拒絶しようとしている。
何故?
それでも大海は自分を変えるつもりはない。
翌日、杉浦が病院だといったとおりに欠席で誰もが大海になんで?と聞きに来る。
別にそれはいいのけど。
部活を一緒にするようになって、なおかつ本当に付き合ってる事なはずの杉浦と会わない日がなかったのにクラスにいない事が、横にいない事が物足りなかった。
やる気もなにも出なくてただぼうっと時間が過ぎる。
気をつけたのはノートを取る事だけだ。
あとで杉浦がノート貸して、と絶対言うだろうから。
あ~あ、つまんねぇ…。
まったくもって今日は気分がよくない。
ずっと燻っている気持ちにさらに杉浦がいなくてこのまま杉浦が離れていってしまいそうな気持ちになってくる。
はぁ、と大海は杉浦のいない席を見て何度も溜息が漏れてしまった。
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