「復活?」
「……よく分かんねぇけど」
部活中に光が大海に耳打ちしてきたのに大海も首を傾げながら答えた。
朝の杉浦の言葉に拒絶を喰らうのかとどきりとしたけれど、どうも違うらしい。
杉浦は何故か元通り、いやさらにやばい感じになっている気がしてならない。
そう思うのは大海だけかもしれないけれど。
朝は大海の腕にしがみついて、学校でも今までここ何日か避ける様に触れなかったのが嘘の様に思わず抱きしめたくなる位に見えない壁が消えていた。
それはいいのだが、部活の時に杉浦と宙が話している所を見るのはちょっと面白くない。
宙が杉浦の肩を触ればちりっと焦燥感が湧く。
何でもない、と大海は自分に言い聞かせるけれど、吹っ切れたような杉浦は一昨日までとは全然違う感じがしてならない。
「永瀬、宙とコンビ。他のアタッカーも。そのあと渡辺さんとも同じように」
杉浦の指示で皆が動く。
杉浦はお兄さんに色々練習法とか相談して聞いているらしい。夏休みにはお兄さんも見にきてくれるという話で、大海もちょっとわくわくする。
それは期待にドキドキするが、今の問題はそこじゃなくて杉浦の事だった。
宙は何かと杉浦に話しかけている。
同じクラスの吉村とも話はしているが、あまり喋る方ではないらしくそれ以外はほとんど話している所を見ない。社交的な部分は全部光が持っていったのだろうか?と訝しんでしまう。
必要な事以外は話さないように見える。…杉浦以外には。
「旦那、大変ね」
大海がやきもきしてると後ろから吉村がぶつかってきながら笑って言ってきた。
「…別に」
「ぷぷっ。強がり~」
大海は吉村にからかわれてむっと口を噤んだ。
それからもずっとセッター3人で色々と話をしていたけど、宙は杉浦しか見てない。
やっぱり光の言う通り、か…。
どうしても気になってしまって大海は落ち着かない。
「どうかした?」
皆と別れた帰り道。
この時間だけはいつもほっとしてしまう。
歩きながら杉浦が首を傾げて聞いてきた。
「……どうもしない」
「みたいには見えないけど?…何?」
杉浦は大海を見上げていた。
髪と眼鏡の隙間から黒い目がまっすぐ大海を見ていたのに感動してしまう。ここ最近はずっと視線も避けられていたのに。
思わず手を広げた。
「…なに?」
その手、と杉浦が指差す。
「…抱きしめたいな~と思ったけど、まずいな~と思って我慢してるとこ」
くすっと笑う杉浦に余裕が見える。
こんなに自分は杉浦に振り回されているのに。
「明日、ウチ来る?」
「行く!」
杉浦からの久しぶりのお誘いに大海は即答した。明日は土曜日で部活は午前だけ。杉浦のお母さんは土曜日も仕事なのでそしたら午後はいっぱい時間がある。
思わず満面の笑みが出ても仕方ないだろう。
とはいってもどうしても一昨日までと違いすぎる。一昨日までは杉浦は全然顔も合わせようともしなかったのに。
「ん~~~と………どうした、のかな…?」
聞いてもいいのだろうかと戸惑いながらも大海は杉浦に聞いてみた。
「ん?ああ……永瀬、ごめんね?」
杉浦がにっこりと笑う。
「う……いや、別に…いい、んだけど…」
可愛すぎる。
そんなにっこりされたらなんでも許してしまいたくなる。
そのうち駅に着いてしまって結局一昨日までが何だったのか全然大海には分からないままだった。
「あ、杉浦」
「何?」
「え~~と……」
宙に気をつけろ、はおかしいか。あんまり近づくなも自分が小さく思えてしまう。どう言ったらいいかとぐるぐるしてると杉浦がくすっと笑った。
「宙の事?」
「えっ!あ、……う、ん……」
「気にしなくていいよ。俺誰にも興味ないから」
「え…?」
「今までもこれからもきっと気になるの一人だけだから」
じっと杉浦が大海を見ていた。
「そ、それ……」
「じゃ、明日ね。ありがとう」
「あ、ああ…明日」
さっと杉浦が行ってしまった。
どういう事だろうか……?
大海は頭が混乱してしまった。
気になるの一人だけって、もしかして自分の事か?と大海は自分のいいほうに解釈するけれどいや、まさか、でも、としばらくその場で一人眉間に皺を寄せて汗をたらたら流しながら立って考えていた。
テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学