静かに声もたてずに身体を震わせる杉浦に大海まで泣きたくなってくる。どうしてこんな仕打ちをするのかと憤りさえ浮かんでする。
「…俺は杉浦みたいに難しく考えないけど、簡単にも考えていない。前も言ったけど、全部受け止める気でいる。セッターとしてコートで隣には杉浦はいないかもしれない。でもそれ以外は全部いてほしと思ってる。コートの中でさえ、実際に杉浦はいないけれど、いつでもそこにいるように思ってる、んだ…セッターが杉浦だったら、っていつも思う。ここじゃない、もっといいとこにボールは吸い寄せられるように飛んでくる。きっとそれはどんなうまいセッターだってずっとそう思うだろう…。それ位杉浦は俺にとって特別なんだ」
「………あり、がとう……」
よしよしと頭を撫でる。
「バレーだけじゃない。全部だ。まだ高校入ったばっかで全然自由になんかならないけど…。俺、真面目に考えてる。大学はバレーで行く。全日本も行く。お前が出来ない分も背負うつもりで。その時も絶対杉浦は隣にいて欲しいと思ってる。そうじゃなきゃ全日本行く意味ないから。杉浦いないんだったら行かなくていい」
「それはダメだっ」
「…だったらいて?杉浦離れたらだめだ。やる気なくなる」
「……………だって…本当に、いいのか…?」
「じゃないと本当やる気でないんだ。杉浦休んだ一昨日なんてふざけてるのか、って皆に言われた。そんなつもりないけど…本当に…。自分でも分かってなかったけど。お前いないと力も気力も全部抜ける」
「……俺、何度も永瀬に逃げ道作ったのに永瀬全然…」
「必要ねぇもん。なんで?俺は杉浦好きだ」
「……馬鹿だ」
馬鹿って返されるってどうよ…?
「え~…杉浦まで馬鹿って言う?」
「馬鹿だよ。…俺、言ったらきっともう絶対離してやれなくなるけど、それで、永瀬、いいのか…?」
「いいよ。だからどうしてそんなに難しく考えるかな?yesかno、いるかいらないか、それでいいじゃん。その後の事は後から考えればいい」
「………単純」
「だから杉浦は難しく考えすぎだって言ってるの」
「永瀬…」
杉浦が大海の腕の中で顔を上げた。まだ涙で真っ黒の瞳が潤んでいるのが可愛い過ぎて正視できない位だ。
「好きだ。お前だけ、しか、いらない…」
杉浦の告白に永瀬の心が熱く震えた。
「ちょっと…苦しい」
「あ、わり…」
思わず力が入りすぎてぎゅうぎゅうと腕に力を込めていたらしい。
杉浦は文句を言いながらも離せとも言わないし、耳が少し赤くなっているから照れているだけか?
それにしたって嬉しすぎてどうにかなってしまいそうだ。
「…俺、走って来ていい?」
「は?」
「頭沸騰してるから」
「………行くな」
「行きませんっ!」
杉浦が目を伏せながら言えばますます力が籠もってしまう。
「…だから苦しいって」
ふっと慌てて大海は腕の力を抜いた。
「…キスは?…しないのか?」
「するっ」
これは杉浦からの催促?
大海は顔をゆっくり近づけて唇を重ねた。大きな手で杉浦の頬を包む。
何度も軽く合わせた。
「……足りないけど?」
唇を離すと杉浦が拗ねたように言った。顔が仄かに紅潮してて、それがまたやばい位に可愛い。
「お前、やばい…」
「何が?」
それに答えず大海はまた唇を重ねた。すると今度は杉浦の舌がちろりと大海の唇を舐めてくるのに大海はその舌を捕らえた。
そうなればもう我慢なんか出来なくて、大海は杉浦の口腔に舌を差し込んで貪るように荒々しく舌を絡めた。
「…ふ……」
杉浦の息が漏れればさらの煽られてますます熱が籠もってしまう。
やばい、よすぎる。
「……も、う…」
杉浦がはっきり顔を赤くして大海の顔を手で押し戻した。
「十分…?」
離れた杉浦に不満そうに大海が聞いた。
まだしたいけど。というか、いくらだって大海は足りないくらいだ。
「そう、じゃなくて…」
杉浦の唇が唾液で濡れて光ってるのがエロい。
絶対やばいって。
「…永瀬…」
杉浦がふと目線を外したけどそっと手は大海の自己主張してる所に触れてきた。
「杉浦っ」
「……だ、してやる」
小さな声で杉浦が顔を背けながら言うのに大海は慌てた。
キスだけで大海がもうどうしようもない位になっていたのに気付いてたらしい。
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