「なんか宙とも仲良しだね?」
杉浦がちろっと大海を見た。
「ん?ああ。思ったより話しやすかった。今まで全然話ししてなかったけど」
「なに話して?」
「あ~~~~………」
「…ソレも話せない事?」
「…でもないけど…。杉浦の事だから」
「俺?」
部活の帰り道。いつもこの時間は特別だ。
「……永瀬って誰とでも気軽に話せるね」
「まぁ、人見知りはないな。それでも…杉浦だけは別だ」
いつでも気になって仕方がない。
視界にいないのが心配で仕方なかった。
「…そう?」
杉浦はなんでもない事のように答えてるけれど、耳が少し赤くなっているのに気付けば大海だって嬉しくなってしまう。
「あ~あ…早く夏休みになればいいのに」
「…部活きつくなるのに?」
「部活きついのは全然いいし。なんつっても杉浦といられる時間増えるのが一番でしょ」
「…………俺だって、早く夏休みになって欲しいと思ってる」
小さく囁くように言う杉浦に大海は思わず杉浦の肩を組んだ。
可愛いすぎる!
毎日一緒にいられる時間は多いけれど、学校じゃどうしたって何も出来ないし触ることだって無理だ。
行き帰りだって駅までの短い時間。
土日だって毎週毎週互いの家に泊まるってのも出来ないし。
まったくもって自由にならない、と大海はもどかしくなる。
杉浦はどうなのか?
いつも平静に見える。
でもいつだかは足りないとも言ってたし、今だって夏休みが楽しみだって事はきっと大海といられるはずの1週間が、って事のはず。
この間はキスだけにしたけど、夏休みのその時は…。
思わず大海は想像してしまう。
光に言われた事も考えてしまうし、どうもそっちにしか考えがいかなくなってっることに頭を振った。
仕方ない。
なんといっても健康な高校生男子ですから。
自分で開き直ってしまう。
杉浦はどう考えてるんだろう?
いいよ、と言ってたけど、本当に?
積極的な杉浦にもいつも大海はどきどきしてしまうのだが。
光に言われた忠告を思い出す。
…ちゃんと上手くできるだろうか?
思わず不安がよぎってしまう。
「永瀬?どうかした?」
「え?あ、何でもない」
杉浦が黒い瞳で大海を見ていた。
その杉浦の肩を離す。
濡れたような目に思わずどきどきしてしまう。
唇が目に入って、もう頭の中は杉浦の事だけだ。
「ああ~~~……なんでこんなかな……」
「何が?」
「……なんでもない」
自分がこんな事ばっかり考えてるなんて杉浦が知ったら絶対ひくだろう。
思わず大海は自分を取り繕った。
そんな大海を知ってるのか杉浦がくすりと笑った。
「夏休み…楽しみにしてる」
にっこりと笑われればうっと声が詰まってしまった。
とりあえず杉浦も同じように一緒にいられる事を楽しみにしているのならばそれでいい。
余計な事は考えるな!
そう思ったって無理なんだけど。
とにかく自分に言い聞かせる。
杉浦と駅で別れて自分の家に向かう。
なんでこんなに好きかなぁ、と自分に呆れる。
独占欲は尋常じゃない。
それでも宙の件がなくなってちょっとは落ち着いたけど。
はぁ、と自分の小ささに溜息が漏れてしまう。
いつでも杉浦を部屋の閉じ込めて自分の自由に出来ればいいのに、と思いながら、それは杉浦じゃないとも思ってしまう。
杉浦も自分を好きだと言ってくれたけど絶対自分の方が夢中になっている。
いつでも触ってたくて、キスしたいなんて。
綺麗でも男なのに。
その杉浦のイく時の声を思い出してしまって大海は顔を一人で赤くした。
頭を振り、自宅まで走って帰ることにする。
部活をしてもまだ体力は余っていた。
へとへとに力が抜けるまで部活があればいいのに!
そうしたら不埒な思いはいくらか軽減されるかもしれないのに。
いや、それでも無理か、と思わず笑ってしまった。
だって疲れたってなんだってこの独占欲は消えないだろう。
杉浦のセッターの姿を思い浮かべろ。
反った指。
上がるトス。
目を閉じても浮かんでくる。
あれが欲しかった。
今目の前にいる杉浦とは同じコートに立てない。
それでもいい。あの一緒に闘った試合が、時間があるから。
きっと杉浦もそう思ってくれてるはずだ。
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