今日から杉浦と1週間。
別に今までだって来た事あるのに緊張する。
だって家には誰もいない。学校も部活もない。
隔離された時間だ。
杉浦は暑かったからか汗を滲ませている。
眼鏡を取ってやるとちょっと表情が和らいだ。
…でも普段と変わりない、ように見える。
飲み物を持っていくといった大海の喉が変な緊張にからからに渇いていた。
いつも部屋に入ってすぐに待ちきれずに杉浦にキスしたり、抱きしめたりと触るけれども今はマズイ気がする。
ずっと散々この1週間が待ち遠しかった。
がっつきそうで、そりゃみっともないだろう。
がりがりと大海は頭をかく。
テーブルに置いた杉浦の眼鏡。
今日から1週間…。
ずっと間近にいられる事に嬉しくて心が落ち着かない。
父親の単身赴任に感謝だ!
部屋にアイスコーヒーを持っていくと杉浦が大海のベッドに座っていた。
手にはバレーの雑誌。
小さな字は見えなくてもある程度のは見えるらしいが、その見え方がどうなっているのか大海には分からない。
「ほら」
「あ、ありがとう」
コップを差し出すと杉浦が白いのどを見せてそれを嚥下するのに思わず見惚れてしまう。
だめだ。もうどこもかしこも頭ン中がやばい方にしか向いていない。
「永瀬も喉、渇いてるだろ?」
飲まないの?と大海がこんな腐れた思いを抱いているなんて知らない顔で杉浦が黒い瞳で大海を見ていた。
「ああ。汗かいたし…」
慌てて大海はごくごくと一気に飲み干すと杉浦がふっと笑った。
「随分喉渇いてたんだ?」
渇いてる。もうずっと。
それは外の暑さとは関係ない渇きだけれど。
いつもは何とも思わないでただ一緒にいられるのが満足な時間なのに、今日はどうも落ち着かない。
杉浦の隣に座って一緒に雑誌を覗き込んで話をしてもどこか気分は上の空のような感じだ。
そりゃそうだ、頭の中が全部杉浦で埋まってるんだから。
ふっと会話が途切れた。
なんとなく気まずいのは大海だ。
自分がぐるぐるしてるから。
だいたい杉浦がベッドに座ってるのもまずい。
押し倒せばそのまま…。
「永瀬……」
「あ、な、なんだ?」
不埒な思いに縛られてて妙に焦ってしまい声が上擦りそうだ。
「…キス、もしてくれない、のか?」
うーわーっ!
杉浦が大海の顔を覗きこんできたのに心臓がさらに飛び跳ねた。
そのまま杉浦が目を閉じ大海を待つのにもう我慢できるはずなどない。
杉浦の身体を抱きしめて唇を重ねた。
何度も、何度も。
杉浦の口腔に舌をねじ込んで絡めれば杉浦もそれに応えるのにさらに煽られる。
いつもキスがままならないので互いの部屋に行った時は何度も貪るように、がいつもの事だった。
「杉浦」
「ん……」
今のは思わず食べてしまいそうな位に荒々しくなってしまったのに反省する。
我慢は限界だけど、絶対手荒になどしたくない。
杉浦の長い前髪をかきあげ、そしてまたキスする。
今度はがっつかないように。
「杉浦……」
杉浦が手で大海の顔を撫でた。
「……俺、永瀬は、いらない……?」
視線をふっと逸らす杉浦の身体をベッドに押し倒した。
「欲しいに決まってる」
「……だって、前もいい、って言ってたし…。こんな事俺の方から言うの、永瀬、は…嫌にならない…?」
「なるわけないっ!やせ我慢してただけなんだから。もうずっと…こうしたかった…」
ぎゅっと杉浦を抱きしめればおずおずと杉浦の手が永瀬の背に回ってきた。
「………よかった」
ほっとしたような杉浦の声に杉浦が不安だったのだと気付く。
「……また余計な事、考えてない、よな?考えててもいいけど、言って?」
「……………永瀬は俺の事なんてきっと、その…抱く、なんて考えてない、のかな、と」
杉浦が顔を赤くして恥かしそうに顔を背けているのがやばい位に可愛い!
「んなわけあるか!…言っちゃなんだけど!もうずっとソレばっか考えてた。もうずっと…。キスしたいし、抱きしめたいし、抱きたい…。杉浦こそ、いいのか…?」
「……いい、って言ってるだろ」
そんな事言われて止まれるはずはないだろう。
テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学