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太陽と月の欠片 夏休み4

 なかなか時間が過ぎるのが遅い。
 それでも時計の針は少しずつ動いていく。
 「あ、買い物行かねぇ?」
 「買い物?」
 「そ。杉浦朝、パンでいい?パン俺今朝食っちゃって切らしちゃったんだよな」
 「…行く」
 一緒に近所のスーパーに行った。
 買い物籠持ってあれこれいいながら買い物。
 大海の食欲はすごくて母はその分の金を置いていってくれてるので何も問題ない。
 適当に乾物なんかも使っていいからと言われてるし金なくなってもどうにかなるだろう。
 それより杉浦と一緒に買い物がちょっと照れる。
 別に人から見たら友達同士のなんてことない事なんだろうけど、大海にとっては恋人同士のデートにしか思えない。
 ん…?
 そういえばどこにも一緒に出かけた事がなかった、と思い当たる。
 いつも互いの家か部活だけ。
 折角の夏休みなんだからどっかに行けばいいじゃないか!
 海?に男二人はないだろう。それに海パンだって杉浦が持ってきてるはずないし。
 そういやどっかで祭りがあったはずだ。
 日中スポーツ店でシューズみたりして祭りに行くのはどうか?
 「永瀬?どうかした?」
 「え?ああ、いや」
 一人で頭の中でプランをたてて顔が弛んでしまう。
 「ねぇ、永瀬って甘いものとか好き?」
 一人で考え事していた大海に杉浦が聞いてきた。
 「ん?わりと好き。それに俺好き嫌いねぇもん」
 「じゃ、コレ買ってくる」
 杉浦が手に持ってたのはスィーツ2個。
 「え?あ、別に一緒に…」
 「いい。払ってくる」
 杉浦がさっさと一人で行って会計を済ませてくる。
 「なんだ?一緒でよかったのに」 
 「…いい」
 その後会計を済ませてスーパーを出ればもう夕方で帰って飯の支度して夜になるじゃん、と思えばまた落ち着かなくなってくるけど、そうは見えないように気をつけるしかない。
 隣に並んで歩く杉浦も口数は少なくて、チラッと視線を向けるけど、表情は別に変わっていない。
 変わってないけど、やっぱ身構えるよな、と大海はとんとんと背中を叩いた。
 「杉浦は好き嫌いねぇの?」
 「……人参キライ」
 真っ赤になって言う杉浦に大海はぶっとふきだした。
 「小学生か!?」
 「だって!キライなものはキライなんだから仕方ないだろっ」
 「…あとは?」
 笑いながら聞く。
 「…もういい」
 ない、とは言わないからあるんだろう。
 「なんだよ?教えて?」
 「……きのこ類」
 「まじで?うまいのに」
 「…うまくない。ぐにぐにして気持ち悪い」
 杉浦の答えにどうしたって笑いは治まりそうになかった。
 「もう言わないからなっ!」
 つんとして顔を赤くして足を早める杉浦を追いかけた。
 「先に教えてもらっとかねぇと。キライなもの混じってたらやだろ」
 「…あとは無理すれば食えるからいい」
 「あっそ。じゃあ食ったほうがいいな」
 杉浦の意外な一面に家に帰るまでずっと大海は笑いっぱなしで、杉浦はむっとしっぱなしだった。

 「俺用意してっから杉浦先にシャワー使ってきていいよ。今も歩いて汗かいたろ?」
 「え!…いいよ。永瀬が先で…」
 「いいって。先行って来い。火使うと汗出るから俺後でいいから。使い方分かるだろ?あ、っとタオル出しとく」
 杉浦の腕を引っ張って風呂場に押し込んだ。
 まったくすぐ遠慮するんだから。
 杉浦が出てこないのに安心して大海は冷蔵庫を覗き込む。
 杉浦のお母さんのくれたものを開けてみておかずなど入ってるのにそんなに用意する物が少ないな、と大海は感謝する。
 出来るといってもそこまで本格的にではない。
 ただ小さい頃からわりと母親のする事を見てきたし手順も分かる。
 包丁もこれからは男の子も出来なきゃ、と時間がある時に触らせられていたので使えるのだ。
 その母親に感謝だ。
 じゃなかったらきっと置いていってはもらえなかっただろう。
 杉浦の方がそつなく何でも出来そうな気がするけどまるきり出来ないらしい。
 そして目の事もあるし手元は危ないだろう。
 やっぱり自分が出来てよかったと大海は一人でにやにやと笑いが出る。
 
 「先に使わせてもらったよ」
 おずおずと杉浦が戻ってきたのに途端に落ち着かなくなってきた。
 さっきまでは全然考えてなかったけど、これから…。
 夜はきっとまだまだ長そうだった。

 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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