落ち着かなくなった心を隠すかのように大海はテレビをつけた。
「杉浦のお母さんが持たせてくれた分あるし、あんま時間かかんねぇから」
「あ、うん」
杉浦の顔も赤い。
暑いから?
それとも意識して?
どうも大海の頭の中もほわほわとしてきた。
熱にうかされたようなまま、意識がふわふわとしたままでご飯の支度をして。
一緒に食べて。
何を喋っているのかも全然分かってないまま普通を装った。
杉浦はやっぱり変わらないように見えて自分だけがこんなに浮き足立っているのだろうか、と情けなくなってきそうだ。
「冷蔵庫開けるね。……永瀬、はい」
晩飯を食べ終えて、杉浦も片付けを手伝ってくれて。
なんか一緒に住むとこんな感じになるのか、と一人で何年後かを想像するという気の早いことを考えていると杉浦が冷蔵庫から買ってきたスィーツを出してきた。
生クリームと果物がのったプリン。
「ごめん。泊まりに来て永瀬に迷惑かけっぱなしだけど…。ちょっとだけ、息抜き」
「…ありがとう」
並んでテレビ見ながら頬張る。
ちょっとしたお礼のつもりか?
…やる事がかわいい。
ちらと杉浦を見れば唇の端についた生クリームを舌で舐め取っていて、それが扇情的に目に映った。
どくどくと大きく心臓が跳ね上がる。
やばい。
前髪が邪魔だからと杉浦は髪を結わえていてその綺麗な整った顔が出てるし、額に解れた髪が張り付いている。
大きめのTシャツから見えるうなじも、どれもが大海を誘い、煽っているようにしか見えない。
そうじゃねぇだろ、と視線を杉浦から外そうと思っても外せない。
しかしどうやら杉浦は甘いものが好きらしい。
満足そうに味わいながら食べている。
それがおかしくて、思わず笑ってしまった。
「何?」
ちょっとへそを曲げたような杉浦の顔にまた笑ってしまう。
「なんでもないけど……お前かわいすぎる」
人参が嫌い。今日始めて知った。
甘いものが好き。
これも。
きっともっともっと知らない所があるのだろう。
大海は杉浦の唇に指を這わせた。
「クリームついてるし」
くすっと笑うと慌てて杉浦が口を拭ってる。
その手を掴まえて大海は顔を寄せると杉浦の唇を舐めた。
「甘」
「ちょ…なに、恥かしい事してる」
「なんで?だめ?」
「だめ、…じゃないけど」
杉浦が顔を俯ければ耳まで真っ赤になっている。
だからなんでこんなにかわいい反応なんだ?ヤローなのに。
「杉浦」
頭を捕まえて深くキスした。
もう我慢なんて出来るか。
杉浦の口の中も大海の口の中も甘いクリームの味がまだ残っている。
だからきっと甘いんだ。
「なが、せ……」
杉浦の声が掠れてる。
「もう、待たなくて、いい…?」
こくりと小さく頷かれて大海はテレビを消すと杉浦の手を引いて自分の部屋に向かった。
杉浦をベッドに座らせてそしてすぐに横たえ、その身体を組み敷いた。
「あ……俺まだ汗流してねぇ」
「……いいよ」
杉浦が大海の首に腕を巻きつけてきた。
杉浦の顔が大海の首元にある。
「くさくねぇ?」
「…ないよ。永瀬の匂いがする」
すんと鼻を鳴らされればもう箍が外れてしまう。
「好きだ」
「……俺も…。俺で、永瀬には悪い、けど」
「は?なんだそれ。意味わかんね」
そんな事をよく杉浦は言う。
「何が悪いんだか…。俺が杉浦欲しくてバカみたいになってるのに」
「そんな、事ない…。永瀬…」
ぎゅっと杉浦が抱きついてくるその首に口を這わせた。
仄かに汗ばんでいる杉浦の身体の熱にますます煽られる。
「杉浦。……悠……欲しい」
「…よかった」
「よかった?」
「だって永瀬、全然それらしくしてないから…そんな事考えるの俺だけかと思ってた、から…」
杉浦が照れたように小さく言った。
「は?俺、そればっか考えてんだけど…。キスしたいな、とか抱きしめたいな、とかばっか。学校に部活にで全然出来ないけど。……杉浦もそう思ってくれてた?」
「……当たり前だろ。言っただろ?俺もう永瀬、離してやれないって」
「いいよ」
大海はぎゅっと杉浦を抱きしめた。
テーマ : 自作BL小説
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