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副会長はいじっぱり 3

3  敦(ATSUSHI)

 「ゆきちゃん」
 ゆきちゃんの部屋の電気がついて帰って来たのを確認してすぐに窓からゆきちゃんの部屋に移動する。
 隣接した家は本当に目と鼻の先。
 一歩くらいしか離れていないから出来る事。小さな柵と言っていいようなベランダに足をかけて移動する。
 いつもゆきちゃんの窓の鍵は閉まっていないし敦の窓も鍵はかかっていない。
 でもゆきちゃんが敦の部屋に来る事はなくなって、今は敦からしか部屋に行ってない。
 いつからだろう…?
 
 「敦、重い」
 如ちゃんの背中に張り付いて背後から抱きしめる。
 それでも如ちゃんは敦の腕を振りほどかない。
 もうずっと小さい頃から抱きついてたからこれは普通の事。
 ただ、前はゆきちゃんが抱きしめてくれたのに、自分が育ってしまったからどうしてもゆきちゃんの方が小さくて反対になってしまったけど。
 机にすぐに向かおうとするゆきちゃんは真面目だ。
 「…庇ってくれてありがと」
 「………当然だろ」
 学校では話しかけるな、と言ってたゆきちゃんだけどちゃんと髪の事でゆきちゃんは助けてくれた。
 「ねぇ…高校決まったら言いたい事あるって言ってたでしょ?聞いてくれる?」
 「だから、別にそんな前置きしなくたって毎日来てんだから別に今更ことわる事ないだろうが。ったく、なんだってんだ?お前は」
 美人な顔に似合わない投げやりな言葉だけど、これが出るのは自分にだけ。
 「ゆきちゃん…好きだよ」
 「ああ?な、に…言って?」
 さらっと言葉が出てしまった。
 本当はちゃんと向き合って、面と向かって言おうと思っていたのに。

 さらりと口に出てしまった言葉に思わずゆきちゃんの顔を背後から覗きこむとゆきちゃんは真っ赤になっていた。
 「お前、何言ってんの?…そんなの小学生じゃねぇんだから面と向かって言う事と違うだろう!」
 「え?」
 普通告白は面と向かって言う事だと思うけど?
 「恥かしいヤツ」
 「え?ちょっと、ゆきちゃん?」
 「なんだよ」
 「あの、ちゃんと好き、なんだけど?」
 「はぁ?だからなんでそんなのいちいち…敦っ!!」

 絶対ゆきちゃんはただの幼馴染としてだけの好きと勘違いしてる。
 ゆきちゃんの座っている椅子を引っ張ってくるりと向きを変えた。
 「なんだよ?邪魔すんな」
 「……告白してるのに邪魔?」
 「はぁ!?告白~?…………告白?」
 怪訝な表情でゆきちゃんの眉に深い皺が浮かんだ。
 「なにふざけた事言ってんだ?」
 「ふざけてない」
 椅子に座ってるゆきちゃんを見下ろす。
 「ゆきちゃん…………如。…俺ふざけてないけど」
 「何呼び捨てにしてんだ?ふざけてない?なお性質が悪い!」
 「ゆきちゃんって呼ぶの俺もうやめっから」
 「はぁ?なに?呼び捨てにする気か?」
 「うん。……如」
 かぁっとゆきちゃんの顔がさらに真っ赤になってる。
 必死にずれてない眼鏡を直してるのが可愛い。
 「……可愛い」
 「は!?テメー何言ってんだ?寝ぼけてんのか?」
 「寝ぼけてないよ。……如。俺、ずっとゆきちゃん好きだった。小さい頃からずっと」
 ゆきちゃんの頬に手をかけるとびくんとゆきちゃんが目を閉じて身体を揺らした。
 その反応、まずいでしょ。
 焦燥感が浮かんでくる。
 ちょっと上向きになって目を閉じられたらキス待ってるみたいに見えるじゃないか。
 思わず吸い寄せられるようにゆきちゃんにキスしてた。
 「俺、ちゃんとこういう好き、だけど?」
 「あ、あ、敦っ!?な、なに…して……」
 「キス」
 がばっとゆきちゃんが自分の唇を真っ赤な顔しながら手で覆った。
 「ずっと…ずっと、ゆき、好きだったから…」
 「……ふざけるなって言っただろ!」
 「ふざけてない」
 「とにかく!部屋から出てけ!!今すぐだっ!」
 ゆきちゃんが立ち上がると敦の背中をぐいぐいとベランダに押しやった。
 「なにバカな事しやがる!しばらく来るな!!」
 ぴしゃっと窓を閉め、鍵をかけてカーテンも閉められた。
 
 「はは……」
 ずるっと敦はベランダに座り込んだ。
 そりゃそうか。幼馴染だと思ってただけなのにキスなんかされりゃそりゃ嫌われるか。
 ゆきちゃんには絶対嫌われないと思ってたのに違ったらしい。
 「あ~あ……」
 敦は頭を抱えてしばらくそこに留まったけれどカーテンが開く事もなかった。
 
 
 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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