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熱視線 小夜曲~セレナーデ~7

 明羅の身体がかぁっと熱くなってきた。
 「意味わかるな…?」
 「分かるけど…分かんない、よ…」
 「そのままだ、って言っただろ」
 「分かんない、よ…」
 怜の手が明羅の頬を包んだ。
 「怜さん…」
 明羅は怜のTシャツを掴んだ。
 「明羅…」
 怜の顔が近づいてきたのに明羅はぎゅっと目を閉じた。

 怜の唇が明羅に触れると明羅はぎゅっと心臓が捕まれたように苦しくなった。
 「怜、さん…」
 怜の唇が触っただけですぐに離れた。
 「…やっぱり、全然違和感ないな」
 怜が眉根を寄せて呟いた。
 違和感って…。
 「お前は?男の俺にこんな事されて嫌じゃない?」
 「………や、じゃない」
 明羅は顔が絶対赤くなってると思いながらも小さく返事した。
 だってずっと欲しいと思っていた人だ。
 …こういう意味じゃなかったはずだけど。
 「顔、真っ赤だ」
 言わなくたっていいじゃないか。明羅がちょっと睨むと怜が笑った。
 「それじゃ可愛いだけだ」
 可愛いって…。

 怜が明羅の上から身体を退けた。
 「……お前はなんだ?」
 「…なに、って…?」
 「俺はここに人は入れた事がない。いや、生方とかは来るけど、それだけだ。お前みたいにこんなにすんなり入ってくる奴なんていなかった」
 「連れてきた、の怜さん、だよ?」
 「そう。だからなんなんだ?大体連れて来るのが有り得ない」
 「知らないよ…。でも俺だって…怜さんじゃなきゃついてこない」
 「当たり前だ」
 なんだそれ?
 くすっと明羅が笑った。
 「お前は俺だからついてきた。俺はお前だから連れてきた。なにしろ10年越しだ」
 確かに…。
 10年前から焦がれていた人だった。
 怜も10年前から気付いていたのには驚いたけど。

 「俺の欲しい音を全部持っている人」
 「……明羅が欲しいのは音だけ、か…?」
 明羅は首を振った。
 「今日、車で出かけたでしょ…?楽しかった。ピアノの事なんて全然考えてなかったよ?…ずっと一緒にいたいって、思った…」
 怜がふわりと笑みを見せた。
 「俺もだ」
 「全部…ご飯作ってくれるのも…手伝いするのも…俺、手伝いなってないけど、車で出かけるのも…一緒にいられるの、嬉しい…」
 怜がふっと笑った。
 「お前学校どこ?」
 「え?青桜」 
 「…………ちょっと待て?……高校生?」
 明羅はこくりと頷いた。
 なぜか怜が焦っている。

 「まじでか?何年?3年?」
 明羅は頷いた。
 「………そりゃまずいだろう…色んな意味で…」
 はぁ、と怜が嘆息した。
 「…進学は?」
 「音大にしようかと思ってたけど…ピアノは諦めたから決めてない」
 「は?なんで?」
 「……怜さんのせい」
 「………作曲は?」
 「趣味だよ?」
 「趣味の域じゃないだろうが。いや、ちょっと待て。二月生まれって言ったな?今…17!?そしたら俺のコンサート一番初めに来たの7歳!?」
 「…そうだけど?」
 はぁ、とまた怜が溜息を吐き出す。
 「……どれだけ普通じゃないんだか…。普通の7歳がクラシックあんな真剣に聴くか?まぁ、…環境がそうなら分かる気もするが…」
 呆れたように明羅を見る。
 「おまけに青桜……学校に二階堂 宗(そう)いるか?」
 「いるけど…」
 …二階堂…?怜と同じ苗字だと思って勿論知っていた。まさか?
 「ソレ、異母弟」

 「え、ええっ!!」
 嘘だ、と思って怜をじっと見た。
 「本当」
 怜が頷く。
 「行き来はしていないけどな」
 新事実に明羅はまじまじと怜を見た。こんな近くに接点があったなんて。もっと先に知ってたら怜とももっと早くに知り合えたかも…。と話した事もない二階堂 宗の顔を思い浮かべた。
 「しかし…17…」
 怜が頭を抱え込んでいた。
 「20歳位だと思ってたのに…10歳も違うのか?」
 怜が頭を抱えながら明羅を見ていた。
 「……10歳も違ったら…だめ…?」

 明羅の瞳が揺れた。
 「ばか。そうじゃない…」
 怜はベッドに横になって明羅の身体を抱き寄せた。
 「やっぱしっくりくる…。どこも柔かくもないし、痩せ痩せで骨ばっかみたいなのにな…」
 「………すみませんね」
 明羅はむっとした。そりゃ細いのは知ってるけどっ。
 「別にだめって言ってないだろ」
 そうだけど。そんな事言われるの全然嬉しくない。

 

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