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副会長はいじっぱり 9

9  敦(ATSUSHI)


 「如!…ゆきちゃんっ!ごめん…っ!もう……しねぇ、から…」
 敦は涙を静かに流して震えてる如にびっくりして直接肌に触れていた手を離した。
 代わりに身体を抱きしめて背中に手を回して宥めるように撫でる。
 「ぅ……っく……」
 必死に声を我慢してる如を見て心臓が苦しくなった。
 自分は何馬鹿な事をしているのか。
 泣かせたいんじゃないのに。
 如が意地っ張りで見栄っ張りなのも知っているのに。
 そこが可愛いのも全部分かってるのに。
 「ゆきちゃん……」
 「ばか、やろ……」
 ひくっとしゃっくりしながら声を出す如が壮絶に可愛くてどうしようもなくなる。
 「うん……俺がバカ、だから。…ごめん…如…」
 いつもよしよしと撫でてくれるのは如だけど、今は反対に敦が宥める。
 「ゆきちゃん…」
 頬を手で挟んで如の額に自分の額をつけた。
 「ごめん…。俺がわりぃから…」
 「…ったりまえ、だろ」
 敦は自分のTシャツの裾で如の涙で濡れた顔を拭ってやる。
 ああ…くそ可愛い…
 「ゆきちゃん……可愛い…。ねぇ、もうしねぇから。だから鍵、締めないで。ほんとつれぇから…」
 「…分かった、から……もう、…離、せ……」
 泣かれながらそんな事を言われたら離すしかないだろう。
 敦は仕方なく如から身体を離してベッドの脇に腰かけた。
 「如……でも…俺ふざけてないから。本気だ」
 如がむくりと身体を起こした。
 「敦が、本気になんて…なるか…?いつだって…敦はふざけてるだろ」
 「ふざけてないっ!」
 ちょっと声を大きくしただけで如がびくっと身体を竦ませたのに敦は愕然とした。
 「如…?」
 手を伸ばそうとしたらその手を払われたのにまたショックを受ける。
 「あ……」
 悪い、というような表情を如が浮べるのにさらに敦は胸が苦しくなった。
 如に恐怖を与えたのが自分なのだから。
 敦は行き場のなくなった手を静かに引っ込める。
 「…どう、したら…本気って思ってくれる?」
 「どう…?」
 如が顎に手を置いて考え込んだ。
 「……部活も入ってないんじゃあれだし…とりあえずじゃ、勉強?テスト真面目に受けて。敦いつもわざと間違えるだろ」
 「…………」
 敦は黙った。
 やっぱり如は気付いてたんだ。
 「本気って言うならちゃんと見せて」
 「………分かった」
 「その他も。出来る事はちゃんとやれ。お前、いつでも何でも全部手を抜いてるだろう」
 その通りなので敦は思わず黙ってしまう。
 「………そう、したら…如、信じてくれる、のか…?」
 「分かるわけないだろっ!」
 「えっ!?」
 「敦の本気なんか見た事ねぇし!ふざけてばっかだろう!いつだって!抱きついてくんのだってだっていっつもふざけてだろうが!小学校の頃なら分かるけど、中学になってからはふざけてだろ。背も伸びてかっこよくなって、なにも俺に甘えてくる必要もねぇのに勝手にお前がそうしてたんだろうが!その延長でキスか!?ふざけてるとしか思えねぇだろ!どうしたって!」
 「…………如はそう思ってたんだ…?……分かったよ。もう抱きつきもしねぇよ…。ふざけねぇから…」
 敦は唇を噛んで答えた。ずっとそんな事してたの如にだけなのに、全部如はふざけてただけ、としか捉えてないのだ。
 そんな約束して自分が保つかという不安はあるけど、それよりも如が本気で見てくれなきゃ意味はないのだ。
 「如にキスもしねぇし、抱きつきもしねぇ。テストも他も頑張る。そしたら如はちゃんと俺を見てくれる?俺がちゃんと好きだって言ったのに如は答えてくれるか?」
 「出来たらの話だ!」
 「………分かった。でもそん時は俺もう我慢しねぇよ?今までだってずっと我慢してたんだから」
 「…何をだよ?」
 如が眉を寄せて難しい顔をする。
 そういえば眼鏡を取ってたんだと机に置いてた如の眼鏡を如に戻してやる。
 目の前の顔。
 キスまでしたのにまたオアズケだ。
 でもさっきの如の態度をみたら少し間を置いた方がいいのかもしれない。
 「我慢は我慢だ。俺は如の事が好きだって言ってるんだから…。…いくらなんだって意味わかるだろ?」
 えっちな話なんて如とは一切した事なんかないけど、さすがに如だって知ってるはず。
 しかも男子校なんかに行ってるんだから男同士のそんな話だって聞いてるはず。
 案の定かっと真っ赤になった如に敦は満足な表情を浮べた。
 
 
  
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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