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副会長はいじっぱり 11

11  敦(ATSUSHI)


 思わず顔が緩む。
 体育の時間に如が手を小さくふり返してくれた。
 それが可愛くて。
 思い出しては敦は悶えそうになってしまう。

 「柏木?どうかしたの?」
 「え?ああ、なんでもねぇ」
 変なヤツと言わんばかりの三浦の顔。ま、それも分かるけど。
 「お前すごいな…もしかして学年一番じゃねぇ?」
 三浦がさっきの短距離のタイムを思い出してにっかりと笑った。
 「え?ああ…かも、な」
 面倒だな、という思いが敦は湧くけど如と約束した手前もあって妥協は出来ない。
 なんとしても如に認めてもらわないと。
 「中学ン時は部活何してたんだ?」
 「サッカー」
 「へぇ~。サッカーも上手いの?」
 「…ほどほどには、まぁ」
 三浦が呆れたように敦を見た。
 「てめ、自分でほどほどという位じゃ結構上手いな」
 すっかり三浦は敦の言い方の正確な捉え方を分かるようになっていた。
 
 「俺の事はいいけど、お前は例のヤツとはどうなんだよ?」
 話題を変えるために三浦に話をふった。
 「え…?………別に変わんねぇよ…」
 その三浦がしゅんと小さくなる。

 相談を受けたのはいつだったか。
 好きなヤツがいるんだ、と三浦が唐突に話を始めたのに敦はきょとんとなったのだ。
 そしてどうしたらいいかとか、自分はどう見えるかなんて聞かれたってそいつじゃないんだから答えようもなかった。
 「柏木は?」
 「ああ?俺も変わんねぇよ。全然」
 はぁ、と二人で溜息を吐き出す。
 
 相手が誰、なんて互いに言ってはなかったけど敦は何となく三浦の好きな相手の見当がついていた。ただ、どうもその相手の表情は読めなくてもどかしくはあるのだが。
 もし向こうも三浦の事が好きだったら如に対して安心出来るんだけど、と思うけど…。
 ちらっと隣にいる三浦を見る。
 可愛いって言えばそりゃ男にしたら可愛いほうだけど、やっぱり如の方が綺麗で可愛い。
 安心できねぇ、と頭を抱えたくなる。
 早くくっ付いてくれると安心出来んだけどな、と三浦をけしかけるのだが相手は尻尾をつかませないから仕方ない。
 いいように三浦があしらわれているようだ。しかも三浦も素直じゃないし。
 ま、そうだろうなとも納得するけど。
 とりあえず人の事などどうでもいい事だ。

 
 「ゆ……」
 図書館の奥。いつもの場所に如がいた。
 昼休みは時間があればいつも如がここにいる。
 学校での唯一如と過ごせる場所。
 そこに今日も如がいたけど椅子に座ったまま如が目を閉じていた。
 寝てるらしい。くらくらと身体が揺れてるのが可愛くて思わずじっと見惚れる。
 「おっと…」
 如の身体が倒れそうになるのに敦は脇に立って自分に如の頭をつけ、身体を押さえた。
 無防備すぎる。
 眠ってるとこなんて誰かに見られたら絶対やばいだろう。
 寄りかかるところが出来たからか、上を向いてすっかり眠ってる如の顔を見ればキスしたくなってきたって仕方ないだろう。
 これは抱きしめてんじゃないからいいよな?身体倒れそうで危なかったからだ、と敦は如の肩を押さえながら言い訳する。
 ちょっと半開きの口元がヤバイ。
 キスしてぇ~。
 我慢だ。
 葛藤する感情と必死に戦っていた。
 だめだ。ちゃんと我慢しねぇと。
 またふざけてると思われる。
 それはやっぱり歓迎出来ない。

 ずっと如は眠ったまま。
 首痛くなんねぇかな、と敦は腕で首も支えてやる。
 「ん…?」
 あ、目覚めちゃった、か?
 「あ、つし…?」
 「ん。如…もうすぐ予鈴なるぞ?」
 「は?予鈴?」
 ぱっと如が目を開けるとまっすぐ敦を見ていた。
 そしてどこかきょとんとした表情。
 絶対コレ寝ぼけてる。
 「如、ここ学校の図書館。で、昼休み。もうすぐ終わるけど」
 「え…あ、…ああ」
 如は目をぱちくりして考えてそして小さく頷いた。
 やっと状況が分かったらしい。
 「…こんなとこで寝て…。身体椅子から落ちそうになってたし。誰かに見られたらまずいだろ」
 「え?誰かって敦しかこないだろここ。もう1年の時からずっとココ使ってるけど誰もこねぇもん。あ……」
 如がそう言いながらそっと敦の腕を押し戻し、敦の身体に凭れていた頭を離した。
 「わり…支えてくれてた、んだ…?」
 「だから、如、倒れそうで危なかったし」
 「……ん」
 なんでそんな真っ赤になってんの?
 「…ありがと」
 小さな声、うつむく如の白い細い項が目に入る。
 我慢しろ!自分。
 
 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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