12 敦(ATSUSHI)
なんであそこで如は真っ赤になったんだ?
敦は授業中も如の事ばかり考えてた。
体育の時も手をふり返してくれたし、ということは敦の事を分かって見てたってことだ。
いくらか前進か?
………でも期待して逆戻りは避けたいからやっぱり我慢の日々だろ。
はぁ、と敦は小さく息を吐き出す。
毎日如の部屋には顔見たくて行くけど、抱きしめたいしキスしたいしで我慢が大変だ。
如は普通に着替えとかするし、無防備でいるから。
やっぱ全然分かってないよな、と敦はがっくりする。
キスまでしてんのにその敦の前で普通に制服脱ぎだすんだから。
さらにそれをもっと脱がせたいと思ってるなんてきっと如は思ってもないのだろう。
押し倒してしまったあん時に震えるくらい如は動揺してたはずなのにあとは全然平気そうだ。
でも、手を払われたのも同時に思い出す。
あれをまたされたら、が恐くて触れられないというのもあった。
また如に手を払われたら…?
敦は小さく首を振った。
とりあえずさっきちょっと触った分に如が拒絶を見せなかったので今はよしとするしかない。
とにかくテストでという期限があるんだから焦るなと自分に言い聞かせるしかない。
もういつ切れてもおかしくない感じはするけど、如を泣かせたいわけではないのだから。
あの時の泣いた如と怯えた如には自分でもなかった事にしたい位だ。
それでもいくらかあれで如もちょっとは違うと思ってくれたに違いないと信じるしかない。
「如、ゆき…?あれ?」
ベランダから渡ってきたのはいいけれど電気がついてるのに部屋に如がいなかった。
下か?まぁいいや、と如の椅子に座って机に向かった。勉強の途中だったらしい。書きかけのノート。
「真面目、だよな…」
如の使ってるシャーペンを持ってくるりと回す。
字も生真面目にきちんと並んでいる。
部屋も綺麗に整頓されてるし、ごちゃっとしてる所は全然ない。
教科書も綺麗だ。
ちょいちょいと教科書にいたずら書きをする。
「あれ?敦、来てたのか?」
「ん」
お風呂に行ってたのか。
髪の毛濡れてるし肌がピンク色になってる。
これはヤバイ。
敦は椅子から立ちあがった。
「敦?」
「あ?何?」
「……いや」
何か言いたそうに如が口を開きかけた。
「え、と…あ、そう、図書館で、ありがと…」
「いんや。あんなとこで寝てちゃダメだって」
「でも敦しか来ないから。それに寝てる位どってことねぇし」
「そんなの分からねぇだろ。どってことなくねぇから!とにかくダメ」
自分の事全然分かってねぇんだよな。
どんだけ人気あるかなんて思ってもねぇんだ。クラスで話すヤツが増えてくにつれて生徒会の面々の人気ぶりが敦にも分かるようになってきた。
とにかくハンパねぇ。
信者みたいなもんだ。
特に会長と如が!
それがもしあそこで如が寝てるなんて知られたらきっと覗き魔であそこは埋め尽くされるに違いない。
「…百歩譲って俺行く時はいいけど、行けねぇ時はダメだ。ぜってぇ寝んなよ?」
「なんだよソレ」
「如がどんだけ綺麗かなんて他のヤツに見せてやりたくねぇもん」
「っ!………な、にバカな事言ってんだ?」
かっと如の頬が赤くなってる。
あれ…?
「ゆ、き…?」
何…?
今まで綺麗、可愛い、言ったって全然何の反応もなかったのに、何だこれ?
「……とにかくダメ。いいな?」
「……………いばるな」
上目遣いがヤバイぞ。
「……じゃ、俺戻る」
「え?あ、ああ……」
如がちょっとしゅんとしたように見えた。
何だ?
気になったけど今は風呂上りのピンク色になってる如はヤバイ。
手を伸ばしたくなってしまうからとにかく離れるのが先だ。
「じゃ、明日」
「ああ…うん」
小さく如が眼鏡をくいと押さえながら頷くのを見てから自分の部屋に戻った。
乱雑とまではいかないけど整理整頓されたとまでは言えない部屋。
これでもヤローにしては綺麗な方だとは思うけど。
如の部屋が異常に綺麗なだけだ。
ま、如らしいけど。
ベッドに寝転んだ。
仄かに上気した肌を思い出して身体が熱を帯びてくる。
「あ~~……ヤりてぇ…」
でも無理は絶対ダメだ。
無理したら二度と触れなくなりそうだ。多分……いや絶対。
テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学