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副会長はいじっぱり 13

13  如(YUKI)


 やっぱり敦はすぐに帰って行った。
 風呂入っている間に来てたんだ。
 椅子に座って…。でもすぐに自分の部屋に戻っていってしまった。
 今までの普通は何だったんだろう…?
 好き?
 「…わかんねぇ、よ」

 図書館で目覚めた時に敦の顔があって寝ぼけて家かと思った。
 多分船漕いでたんだろう。
 敦が身体を支えてくれてたんだ。
 でもそれだけだった。
 いつも抱きついてきたのに…。

 何なんだ?寂しい…?
 でもこの間ベッドに押し倒された時の敦は普通じゃなかった。
 だって目が違ったから。

 自分でも訳わかんねぇ。
 体育の時もじっと敦は如を見てた。
 敦は目立つ。
 昔は髪の色だけで目立ってたけど今はそれに加えて背も高くなったし、かっこよくもなったから余計に。
 そんなの知ってる。
 敦はずっと如の後ろにいて如が守ってた。
 それなのにいつの間にか敦は如を通り越していってしまった感じがする。
 ずっと子供だったのは自分だ。
 好きってなんだ?
 そういえば和臣が付き合ってるのか?とか好き同士とか言ってた。
 好き同士?付き合ってる?

 「え…?」
 付き合うって…。
 一応如だって知ってる。
 男と女がも…。男同士も。何しろ男子校だ。
 男同士の付き合うって…。
 かっと顔が熱くなってくる。
 そういう好き?
 「あ……」
 そういえば押し倒されたんだ。
 敦はそういう好き?自分に対して、したい、と思うのか?
 キスはした。というかされた。
 別に何とも思ってなかったけど…。じゃれ合いの延長かと思ってたけど違う?
 ふざけてる、と言ったあとだ。敦が触らなくなったのは。
 ふざけてないから触らない?
 わかんねぇ…。
 如は頭を抱えた。
 「勉強…しよ」
 椅子に座ってシャーペンを持ち教科書を見た。
 「あ……」
 教科書の端っこに敦の字だ。
 無理すんな。
 そう小さく書かれてる。
 それに思わず顔が緩んでしまう。



 「図書館に行ってくる」
 「…ここのところずっと二宮は昼休みは図書館だな?」
 「え?ああ……」
 だって敦が待ってるだろうから。
 「誰かと待ち合わせ?」
 「い、いやまさか!図書館行くとゆっくりできるから」
 「ふぅん…」
 和臣が意味深に笑った。
 「番犬によろしく」
 「……番犬じゃないし」
 なんで?敦と会ってるのを知ってる?
 
 慌てて如は図書館に向かった。
 そっとあまり人の出入りしない方の入り口から入って本を見るふりしなら奥へと進んでいく。
 「あ、…あつ…」
 敦の陽に透けた髪があった。
 「……寝てる?」
 今日は敦が寝てた。
 腕組して長い足を組んで顔が俯いている。
 その前に如が屈んで敦の顔を覗きこんだ。
 動きもしないで敦がすぅすぅと寝ている。
 小さい時はお人形みたいに可愛い顔だったのに、いまはモデルのような顔になってる。
 こんなとこ誰かに見られたらどうすんだよ、と思って昨日敦が言ってた事を思い出した。
 敦も同じ事言ってた。
 見られたらどうするって……。別にどうもしないよな?
 でも敦の寝顔を誰かに見られるのやだ…。
 自分だったらいいけど。
 だって敦はずっと如だけのものだ。
 
 ………今なんて思った…?
 かっとして慌てた。
 何?自分?
 敦はものじゃない。
 でもずっと小さい頃から敦には如だけだった。
 何かあればすぐ泣きついてきて。
 …今は勿論泣きついて、なんて事はないけど。
 じっと敦の顔に見惚れた。
 キスしたんだ、そういえば…。
 自分の唇を手で覆って息が止まりそうになる。
 そうだ、何回か敦にされたじゃないか。
 抱きしめられてキスされて。

 全身がかーっと熱くなってきて心臓がうるさくどくどくと鳴ってくる。
 何コレ…?
 「敦っ……あ、つし…」
 小さく呼んで敦の足に手をかけた。
 「ん…ゆき、ちゃん…?………どした?」
 「変……だ……心臓…壊れそ…」
 「え!?何!?顔真っ赤だ!熱でもあるか?」
 敦の手がすぐに如の額に伸びてきた。
 「うわ!まじ如、熱出てる!なんでだ?昨日も朝も何でもなかったよな?」
 今の今までなんでもなかったよ。
 なんか頭がふわふわしてきた。
 「如っ!」
 変だ。
 「あ、つし…」 
 助けて…。
 そう言えたかどうか。
 敦の腕が如の身体を抱きとめてくれた事は分かった。
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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