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副会長はいじっぱり 15

15  敦(ATSUSHI)


 「如、家の鍵は?」
 「ズボンのポケット」
 質問にもちゃんと答えるし大丈夫だろうとは思うけど。
 タクシーの運転手さんに鞄を持ってもらって如を家の中まで運んだ。
 「すみません、バッグ玄関に置いて…どうもありがとうございます」
 そのまま玄関の鍵を閉めて如を抱き上げたまま部屋まで如を運ぶ。
 そういえば如の家に玄関から入ったのは何年ぶりだろう?と首を傾げた。
 部屋が隣り合わせになってから毎日出入り口は窓だったから。
 何となく変な感じ、と思いながら如の部屋に向かう。
 「あつし…?」
 「何?…ちょ……ゆき!?」
 お姫様抱っこしてやってる如が敦の首に腕を回してきた。
 なんだ?やっぱ酔っ払い?
 「あつし…」
 如の息が首筋に当たる。
 身体はやっぱり熱い。
 なんで突然熱なんて?
 でもちょっとこの如はまずい!なんかわざと敦を試しているのか?と思えてくる。
 
 「如、手離して?」
 ベッドに身体を下ろしたのに如の手が離れない。
 「制服皺になるよ?」
 「…脱がせろ」
 俺様発言に敦が目を見張る。
 「……いいよ。脱がしてやるから」
 敦が言ってやっと如の手が首から離れた。
 眼鏡を外してやって、学生服を脱がせ、シャツのボタンを外していくけど、ヤバイ。
 熱でどこか朦朧としてる如の顔が赤いし、目が潤んでる。
 エロい感じな如に敦は正視出来なくて視線が彷徨いそうになる。
 見たいけど、見られない。
 このまま抱きしめたい衝動に駆られるけど我慢だと必死に自分に言い聞かせる。
 まったく、敦は自分で自分を誉めたくなる。
 「……如、身体起こして」
 下にTシャツ着てるからまだよかったけど。これが何も着てなかったら絶対止まるはずないと断言出来る。
 「敦、寒い」
 「はいはい。ロンTでいい?」
 「ん」
 チェストから出してやって着せてやる。
 全部身を任せてる如が可愛い。
 可愛いけど、下はまずくないか…?どうしよう?
 そう思ってたら自分でベルトを外してズボンを脱ぎ始めたのでまだほっとする。
 視線は向けないようにして脱ぎ終わった後布団をかけてやった。
 ヒエピタ、たしか家の冷蔵庫にあったな、と思い出した。
 「如、ちょっと待ってろ」
 「どこいく?」
 「家。ヒエピタ持ってくっから」
 「…ん。……あつし、暑い…」
 「我慢して。汗かけば熱下がるから。ちょっとだけ待ってろ」
 暑いと言ったり寒いと言ったり、熱でそうなんだろうけど。
 窓を開けて自分の部屋に戻り階下に下りて冷蔵庫を覗くとやっぱりヒエピタが入っててそれを持ってまた如の部屋に戻る。

 「ひゃぅ…」
 額に貼ってやると如が目をぎゅっと閉じた。
 「冷たくて気持ちいい…」
 「はいはい。如、少し寝て」
 「ん…あつし…いる?部屋戻んねぇ?」
 「戻んねぇから」
 こんなの一人で残してたら危ない気がする。
 「手」
 「はい?」
 「手」
 如が手を伸ばしてきたのでそれを掴むと満足そうに笑みを見せた。
 「ええと…ゆきちゃん…?どうしちゃった、のかな?」
 「べつにぃ。どうもしないけど?ただ、ここんとこずっと敦すぐ帰るし…」
 どこか熱に浮かされたような如の口調にどきりとする。いや、ホントに熱あるんだけど…。
 握った手はぎゅっと力が入っていて、敦はベッドの端に腰かけた。
 「ゆき…?」
 「んん~…?」
 「……毎日、俺、すぐ帰るの…寂しかった…?」
 「んん~~~……かな…ぁ?よくわかんね。でもちっさい時のあつしはちょー可愛かったの!ぎゅってしたくて…。それなのに、最近は可愛くない…」
 なんだぁ?今度は絡んで来るのかぁ?まるっきり酔っ払いじゃねぇのか?
 「…でかくなったからね。ごめんね?可愛いままじゃなくて」
 「んん…。でもかっこいいから」
 「はい~?」
 「敦、遠くにいてもすぐ分かるし。あつし、俺のもの」
 「はぁ?…ゆき?ゆきちゃん?…大丈夫?」
 俺のものってなんだ?
 かっこいい、とかってまさか如がそんな風に思ってたなんて全然知らなかった。
 本当なのかな?
 「如、俺の事かっこいい、って思ってんの?そんで俺、如のもの?」
 「そ!あつしはかっこいい!髪綺麗なの!そんで俺の!……違うのか?」
 「違くない。ゆきは綺麗で可愛いよ」
 無邪気な顔の如にキスしたくなる。
 でもコレ、絶対正気じゃないよな…。
 なんか幼児化してるみたいだし。
 「ゆき、キス…」
 どさくさに紛れてキスをねだろうとしたら如はすでに眠っていた。
 「嘘だろ…」
 敦の手を握り締めて気持ちよさそうにすぅすぅと眠っていた。
 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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