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副会長はいじっぱり 16

16  如(YUKI)


 ええと…。
 如は目が覚めて状況を考えた。
 自分の部屋は分かるけど、敦が自分のベッドの横に寝てて、おまけに手を繋いでる。
 なんだこれ?恥ずかしい…。
 敦の顔が目の前にあった。 
 綺麗な薄い色の髪。
 昼休みに図書館に行った後がどうも記憶が曖昧だ。
 なんか身体がかっとして熱があがったのは覚えてるけど。
 ゆっくり考えていく。
 保健室で早退って言われて敦がついてきてくれて、繋いでるほうじゃない手で額を触ればヒエピタが貼られてて夢じゃないらしい。
 今は普通、なはず。
 あんなに熱いと思った身体は平熱に戻ったらしい。
 なんであんなに熱?
 なんか自分が崩壊してた気がする。
 あれ、夢じゃねぇのか?
 繋いだ手の感覚にどうやら夢ではないらしいと如は頭を抱え込みたくなった。
 
 一体どうしたんだ?
 図書館で…。
 敦が…寝てて…。
 横にある敦の顔を見た。
 そういえば小さい頃はよく一緒に寝てたけどさすがに中学あたりからはなかったな、とまじまじと眠ってる敦の顔を見た。
 そう、昼休みの敦の寝顔も久しぶりに見たんだ。
 自分から手を繋げと出したのを思い出す。
 部屋に戻らないと敦が言ったのにほっとした事も。
 なんか敦は俺のもの発言した気もするけど…。
 それに対して敦は何て答えたんだっけ?
 いや、そうじゃなくて…。
 色々なんか恥ずかしい事言ってた気がする。
 かぁっと顔が真っ赤になってくるけど繋いでる手を離すつもりもない。
 ずっとどこかよそよそしかった敦だけど、こうして隣にいるのに安心する。

 だから、コレおかしいだろう?
 敦、と呼ぼうと思ったけど気持ちよさそうに寝てる敦の顔に起こすのをやめ、じっと顔を見た。
 かっこいい、と言ったはず。
 いや、そうだから別にいいけど。
 どうもなんとなく覚えてるけど、敦の態度とか返事の記憶が曖昧だ。
 目の前の顔。 
 そういえばキスしてるんだ。
 どうしよう…?
 如がふざけてると言ってから敦は全然抱きついてもこないし、キスもしてこないけど。
 いや、それで普通はいいはずなんだけど。
 目の前にある唇に目を奪われた。
 キス、したい。
 ちょっと顔を近づければすぐ出来そうだ。
 敦にはふざけてるって言ったけど…。
 別に如はふざけてないし。
 いいよな…?

 そっと顔を近づけて軽く触れるか触れないか位に唇を合わせた。
 心臓が半端なくどきどきしてる。
 「ん……?」
 「……敦?起きた…?」
 「ん、…ゆき?」
 さらに心臓の動悸が激しくなったけど平静に聞こえるように気をつけた。
 パチッと目の前の敦の目が開いたのに心臓が飛び跳ねる。
 気づいてない、よな?
 目の色も敦は薄い茶色だ。
 ちょっと青みかかって見えるのが綺麗なんだ。
 コレ知ってるのも家族以外では自分だけのはず。近くじゃないと絶対分からないから。
 「…まだ顔赤いな…熱は?」
 「いや、多分もうない、と思うけど…」
 「そう?」
 ふぁ、と欠伸しながら敦が起き上がって繋いでいた手を自然に離した。
 あ……。
 離したくない、と思ってしまった。
 これを離したらまた敦はどこかに行ってしまう、と漠然と思った。
 どこかってどこ?と問われても答えようはないけれど。
 そして何処に行くわけでもないのも分かってるのに。
 「……なにそんな不安な顔してんの?」
 「………してねぇよ」
 「してるでしょ」
 敦の手がさらりと如の頬に触れて首に触れた。
 「ああ、熱ほんとないな」
 「…だろ?」
 熱を確認しただけか。
 いちいち動揺してしまいそうな自分が嫌になる。
 熱を確認すると敦がまた如の手を握った。
 「………」
 敦は全部分かってるのか?
 どうしよう…。
 「何?手、離したくないんじゃなかったの?」
 「……別に。何も言ってねぇよ」 
 「……………素直じゃないんだから」
 くすと敦が笑った。
 分かってんじゃん。
 ちょっとムカつく、けどちゃんと分かってくれてたのが嬉しいとも思ってしまう。
 「それで?如、何か俺に言う事ない?」
 「え?何…?あ…今日は迷惑かけた。悪かった。授業まで早退させて」
 「あのね。そんな事どうでもいいけど?そうじゃねぇだろ?」
 「………?」
 何かあったか?
 分からなくて如は敦を見て首を傾げた。
 「好き。は?」
 「…………はぁ?」
 「はぁ?じゃないでしょ。如、俺の事好きでしょ?」
 「な、何言ってんだ?」
 「だって今キスしただろ。ゆきから」
 今の、キス…?
 起きてた、のか?コイツ?

 如は頭の中が真っ白になった。
 
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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