19 敦(ATSUSHI)
校門に並ぶ生徒会の役員達の前に立つ如の後ろに敦も立った。
「今日は立たなくてすみません」
「いや。体調は大丈夫なのか?」
会長が如を見、そしてその後ろに立つ敦にも視線を向けた。
「大丈夫です」
答える如を見ないで生徒会長は敦をじっと見る。
「番犬クン、おはよう」
「おはようございます」
「和臣っ!」
如が慌てたようにしたけれど敦はにっこりと笑ってそれに答えた。
「如、別にいいよ?」
「よくないっ!」
「いいって。カイチョー様は俺の事気に食わないから」
くすっと敦が笑う。
「気に食わない?」
「そう」
不思議そうな顔をする如に敦が苦笑する。
そして敦は生徒会長の前に立つ如の後ろから両腕を回して如の肩抱きしめるかのように掴んだ。
ざわりと周囲が色めき立つ。
「ん?それは意思表示?」
会長が笑みを浮べて敦を見た。敦もにっと会長に笑ってみせる。
「ええ。勿論。これで安心?カイチョー様、持ちつ持たれつ、でどうですか?」
「………いいだろう。特別に。色々アドバイスしてくれてるらしいから認めてやる」
如が怪訝な表情で敦と会長を見比べる。
すぐに敦は如から離れた。
「じゃあ、アレ、には興味はないということか?」
会長が確認するように聞いてくるのに敦は頷いた。
「勿論。全然。…そちらこそ?」
「ないな」
敦は手を差し出してきた会長とがっしりと握手した。
「情報の提供ならいつでも受け付けよう」
「了解です。あっちの番犬もしますか?」
「…まぁ、君が興味ないならそれにこしたことはないな」
「…敦?和臣と何話してんだ?意味わかんねぇけど?」
如が敦と会長を不思議そうに見比べている。
「なんでもない。如、いこ」
くくっと敦が笑いながら如の背中を押した。
「敦?」
「ん?何?」
「和臣と仲良かったの?」
「はぁ?んなわけないでしょ」
「だって、俺でもお前達の会話分かんねぇから」
「ん~~~…だろうね。俺とカイチョー様しかわかんねと思うよ?」
ゆきちゃん鈍感だし、と心の中で付け加える。
「ちょっと俺も安心したかなぁ」
会長の興味が如に向いてないのが分かってちょっとほっとした。
しきりに如が首を捻ってるのがおかしい。
「……敦?」
「何~?」
校庭を横切って昇降口に向かう。
「……いつも一緒にいる…三浦クン、は…?」
「え?さぁ?その辺いるんじゃない?」
ん?
如の声がどこか伺ってる様子なのに敦はなんだ?と如の顔を覗きこんだ。
「いいのか?」
その如が確認するように敦に聞いてくる。
「何が?」
「だって……いつも、一緒、だから…」
おや?なんか如の様子が変だ。
「…別に約束してるわけでも何でもねぇよ?途中で一緒になってクラス一緒だから、一緒に来るだけだけど?」
「そう、なのか?」
「だよ」
これはもしかして如は気にしてた、のか?
どことなくほっとした様子を見せる如に敦は口端が緩む。
「早く認めてくんねぇかな?」
「ん?何を?」
「俺が好きなの如だけで、如も俺の事好きってこと」
「…………何バカな事言ってんだか」
口はそう言うけど満更でもなさそうな如の態度に敦はほくそ笑む。
「ゆきちゃん可愛すぎ」
「またわけわかんねぇ事言うし」
はぁ、と浅く如が溜息を吐く。
「今日も図書館来る?」
「行くよ」
「じゃ、昼休みね?」
「………ああ」
かなり如の敦に対する態度が軟化してるし、顔が仄かに紅潮してるし、絶対如の中で敦はもうただの幼馴染は脱却してるはず。眼鏡にずれてもないのに手をかけるときは動揺してる時だ。
眼鏡に手をかけながら答えた如に敦は心の中でガッツポーズを作った。
昇降口で1年と2年で如と別れるとすぐに三浦が来た。
「柏木!フクカイチョーと仲いいの!?」
「…幼馴染」
「まじで!?」
幼馴染って言っていいって言ってたから別に言っていいんだよな?
いいけど、コレをあのカイチョー様がねぇ…と思わず敦はじっと三浦を見た。
「何?」
「いいやぁ?」
まぁ小動物みたいで可愛いといえば可愛いけど。
んんん…???
「三浦」
「なぁにぃ?」
上履きを履こうとしてる三浦が屈んでいるのを上から見たら項に…。
「ここ、見えるけど?」
「は?何が?」
項を突く。
「キスマーク」
途端に三浦が項を手で押さえて火がでそうな位に真っ赤になっている。
「……やることヤってんだ……さすがだ…」
思わずカイチョーの不遜な笑みまで脳裏に浮かんできた。
「さすがって!なんだ!?」
「あ、いや…」
さすがなのは三浦じゃなくてカイチョーの方だ。
「…よかったな」
「…別によくない。最後までヤってないし」
「そうなの?」
「…だってアイツ意地悪いんだ」
まぁ、だろうな、と敦は納得する。
テーマ : BL小説
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