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副会長はいじっぱり 20

20 敦(ATSUSHI)


 「……なぁ、柏木の好きなのってもしかしてフクカイチョー?昨日お姫様抱っこしてたってほんと?」
 「…具合悪くしたから、だけどな」
 「ほんと、なんだ…」
 へぇ、と顔を赤くしたまま三浦が頷いている。
 「で、フクカイチョーなの?」
 「だよ」
 うわぁと三浦が嬉しそうにしてる。
 「で?で?フクカイチョーも?」
 「さぁ?」
 「え?ちげぇの?」
 途端に三浦が不安そうな顔をしたのに敦は笑った。
 「お前、キスマークまでつけられてて不安なの?」
 「え!?だって、それは……その……。………ん?…柏木、もしかして俺の好きな相手、分かってる…?」
 「分かってるけど?」
 うわ~~、と三浦がしゃがみこんだ。
 「似合わねぇ、とか不釣合いって思わねぇ?」
 「は?別に思わねぇけど…」
 つうかカイチョーの方が敦に牽制してくる位なのに何言ってんだ?
 「……あのさ、ちゃんと好きだって言えって言ったよな?」
 「言えねぇんだもん!」
 いつやら相談されたときに素直に言えと言ったんだけど、どうも三浦は言えないらしい。
 「…………」
 思わず如と照らし合わせて敦はカイチョーも不憫に思えてきた。
 こっちの気持ちなんて理解してねぇんだよな、と素直じゃない如とこの友達に頭を抱える。
 それでもキスマーク残すほどな事はイタしてるんだろうからカイチョー様の方が敦より優位か?
 敦など如から拒否を喰らってるんだから。
 …人の事などどうでもいいや、と敦はカイチョーが如に恋愛の意味で興味がないと分かれば問題はない。
 「……素直になれば?」
 「なれれば相談なんかしねぇもん」
 そりゃそうだ。
 「だって…優しくねぇんだもん…。意地悪ばっかなんだもん」
 三浦が立ち上がって歩き出すのに敦も一緒に教室に向かう。1年と2年では棟が反対方向で後ろを振り返れば如はさっさと階段を登るところだった。
 敦は携帯を取り出してメールを打つ。
 「…なんだよぉ!話してる途中にメールかよ」
 「ああ、ちょっと恩を売っておこうかと思って」
 「は?恩?」
 「そ」
 「わけわかんねぇ奴」
 三浦がむっと唇を尖らせた。
 「三浦はとにかく思った事口に出せば?嬉しいなら嬉しいって言え。嫌なら嫌って言え」
 「ええぇ~~~…」
 「それも言えねぇのに相談なんかすんなよ」
 「う……」
 「素直に思った事言え。意地張るな」
 「………出来れば……はい」
 仕方なさそうに小さく三浦が頷いた。
 

 「なんだ?あのメールは?」
 昼休みに図書館に行けばすでに来ていた如が小さく聞いてきた。
 「カイチョーに伝えてくれた?」
 「言ったけど…。意地悪しないで優しく、だっけ?何それ?」
 「内緒」
  敦がくすっと笑えば如が面白くないという顔をする。
 「なんだよ…。なんで和臣と敦が内緒話なんだ?」
 「……如、面白くないのはどっちに?俺?カイチョー?」
 「は?何の事だ?」
 はぁ、と敦は溜息を吐く。
 「…いいけどね。ほんとは別に内緒ってほどじゃないんだけど。如は気付けない、だろうな…」
 自分の事だって分かってないみたいだから、仕方ない。
 「敦!?どういう意味…」
 「し!声、小さく」
 「ぁ……」
 ちょっと大きくなった如の声に思わず敦は如の口を押さえた。
 如の口を覆った手に如の唇が触れている。キスは出来ないけど…。
 「ゆき……ちょっとだけ、いい?」
 小さく如の耳元に敦が囁いた。
 「な、に…が…?」
 どうにも我慢出来なくて敦は椅子に座ってる如を腕で包む。
 「ふざけてない、から…ちょっとだけ我慢して?」
 「……別に、我慢なんて…」
 如の声が小さい。
 敦は頭を如の肩に乗せる。
 あ~、このままキスしたい。
 押し倒したい。
 ……いくらなんでもそんなことはしねぇけど。
 「あ、つし……別に…俺、ヤダって言ってる、んじゃない…」
 小さな小さな如の声だ。
 「うん、分かってるよ。でもふざけてるとは思ってるんでしょ?」
 「………」
 「はい、ごめんね?」
 如の顔を覗きこんで腕を如から離した。
 「別に、謝らなくたって…」
 「だって俺はそうしたいけど、如はそうじゃないだろうから」
 「だから……っ!……」
 如が顔を俯ける。
 別に抱っこしても如が抵抗ないのだって知ってるけど。
 顔が赤くなってるのはもう如だって意識してるはずと思うんだけどな、と敦は上から耳が赤くなっている如を見下ろす。
 三浦に素直になれって言葉は如に向けた言葉だ。
 「好きだよ?」
 敦の言葉に如が真っ赤な顔で敦を見上げた。
 

 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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