23 如(YUKI)
「敦!あれ、何?」
「何って?」
如はちょっと前を歩く敦の袖を引っ張った。
「……三浦くん……置いてきてよかった、のか?」
敦を伺うように見れば敦は平然としている。
「は?置いてって…俺別に三浦なんていらねぇし」
「…え?」
「え?ってなんだ?」
「や……仲いい、から…」
「まぁダチとしてならな。………ゆきちゃん?」
「え?何?」
敦が顔を覗き込んできた。
「ダチの好きと如に言ってる好きの種類全然違うよ?如にはキスしてぇっていっつも思ってるけど三浦には微塵も思わねぇよ?つうかキショイ」
悪寒がしたのか敦が震える。
「…そう、なのか?」
「当たり前だろ。男同士なんて考えたくもねぇよ」
じゃあ、女の子なら…?
学校敷地内からはもうすでに出ている。いつもは一人で歩く道だけど敦と話しながら歩けば道のりが短く感じる。
「女子……とは…?」
「んん?」
「キス、あんの?」
「…………」
敦が如からついと視線を反らせて目を泳がせた。
コイツ、キスしたことあんだ…。
「……へぇぇえええ…。あるんだ?」
ムカつく!
敦のくせに!
如なんか敦しか知らないのに。
「でも自分からしたいと思ったんじゃねぇよ?されたっつぅか…」
「………いつだよ?」
「中学ん時。呼び出されて。………ゆきちゃん?怒ってんの?」
「はぁっ!?べっつにぃ~~~!なんで俺が怒んなきゃねぇんだよ?」
「怒ってる…」
敦の顔が笑ってる。なんで嬉しそうなんだよ。
「…ごめんねぇ?俺だってしたくもなかったんだけど」
「だからっ!別に謝る必要なんかねぇしっ!ムカつくだけだっ!俺なんてお前がはじめ、て……」
がばっと如は自分の口を押さえた。
「……ゆきちゃ~ん……それ、まじ…?俺したのが、初めて?」
「俺はなんにも言ってねぇ!」
絶対顔は真っ赤だ。眼鏡を押さえて敦に顔を見られないようにと思ったってきっと敦は全部分かってると思うけど。
「聞いたよ~ん」
「気のせいだ!」
「うわぁ……どうしよ…。ね、家帰ったら抱きしめてキスしていい?」
「いいわけあるかっ!」
「え?ダメ?」
「…………」
ダメって事でもないけど…。
「だから、それがふざけてるって言ってるんだ」
「………ふざけてねぇのに」
ちぇっと敦が舌打ちする。
「ま、いっかぁ……。そっか。如、初めて…」
「うっせぇ!」
早歩きで道を歩くけど、背が違ければ足の長さも違うわけで敦には全然余裕だ。
でもどうやら敦は三浦くんは友達としか見てないということらしいけど…。
「ん?」
如は立ち止まった。
「如?どした?」
「なんで三浦くんと和臣?」
「はい?今そこに気づく?」
敦がふきだしていた。
敦と三浦くんが仲いい事ばかり気になって和臣がどうしてまで考えがいってなかった。
「多分付き合ってるから。…いや、まだなのかな?よくは知らねぇけど」
「…………え?」
如は目を大きく見開いて敦を凝視した。
「…可愛い」
また敦がふざけてる。そこは無視。
「なにそれ?三浦くんと和臣が?」
「なにそれ、じゃなくて」
ぷぷっと敦が笑ってる。
「俺もねぇ、如がカイチョーといつも一緒で不安だったけど。カイチョーが俺睨んでたの如狙ってるからかなぁ?とかも思ったんだけどどうも違うぞってよく見てたら三浦見てるし。三浦からも相談聞かされてそんでアレ?って思って気づいたんだけどね」
「………ふぅん」
思わず口が弛みそうになった。
なんだ、そっか。三浦くんは和臣が好きなんだ。
………そうかぁ?
さっきの生徒会室でのあれはどうしたって和臣から離れるために暴れてただろう。敦の背中に抱きついてたし。
「……三浦くんは違うんじゃないの?」
「あん?何が?」
「和臣が好きなわけじゃないんじゃ…?」
「はぁ?どうみたって好き好き言ってるようなもんだろうが」
「え?………そうか?」
敦が呆れたように如を見てた。
「さすが如」
「……どういう意味だよ」
「え?そのまんまだけど?……ねぇ、如って男同士ちゃんとどうするか知ってんの?」
な、何を聞いて来るんだ!コイツは!
思わず顔を真っ赤にさせると敦が頷いた。
「知ってるんだ。ふぅん」
納得したように呟く敦にますます顔が熱くなる。
なんで顔色だけで分かってしまうのか。
…いや、そりゃ小さい頃から一緒にいるんだから当たり前だろうけど。
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