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熱視線 間奏曲~インテルメッツォ~1

 「お前一回家帰ってきたら?」
 「え…?」
 「明羅が嫌じゃなければ送っていってやるが…」
 朝の食事をしながら怜が言ってきた。
 帰れっていう事…?
 明羅は不安に心が揺れた。やっぱり男だし…嫌になった…?

 昨日は曲に怜も喜んでくれたと思ったけど、その後のジュ・トゥ・ヴに喜んでしまったけど、その後のキスはやっぱり怜の心を冷やしてしまうものだったのだろうか?
 明羅は初めてのキスが怜で嬉しい、と思っただけだけど…。
 「着替えとか…足りないだろ?もっといる物だってあるだろう?携帯の充電は?そういやお前の携帯が鳴ってるの聞いた事ないな」
 「え…?あ、俺友達とかもいないし…。…え、と…着替え…?」
 「ああ。お前の服。そんなお仕着せじゃなくて、持ってきたら?」
 「………持ってきて、いいの…?」
 「は?何?お前ここにもう来ないつもりだったのか?」
 「ううんっ!」
 明羅は首を振った。

 「……いて、いい?」
 「当たり前だ。おい、携帯」
 「え…?」
 「番号」
 怜も携帯を出してきた。
 「俺も大概携帯などならないがお前は俺以上だな」
 怜さんの番号を教えて貰えるの…?
 明羅は大慌てで携帯を出した。
 「俺の番号言うからかけてよこせ」
 明羅は怜の言う数字をどきどきしながら押し、怜の携帯が鳴って本当だと明羅は感動した。
 「メールは…?俺は滅多に使わないが」
 「え、と、教えてもらっていい?」
 怜が自分のメールアドレスを表示させて携帯を明羅に渡した。
 「お前から送って俺の携帯にいれとけ。で?着替えどうする?」
 「あ、…行ってもらってもいい?怜さん、車、乗せてくれる?」
 「勿論」
 怜が頷くのに明羅は思わず笑みが出た。
 「ついでに帰り買い物してくるか」
 そのまま明羅もここに戻ってきていいらしい怜の言葉に明羅ははにかみながらこくりと頷いた。

 怜の車に乗って明羅の家に向かった。
 学校が真ん中で北が家。南が怜さんの家。電車一本でいつでも来られると思えば明羅は嬉しくなる。
 怜の運転はスムーズで明羅の身体が揺れる事はない。
 流れるのはカーナビの音。
 あ…。
 怜の家から送った曲が流れた。もう、使われたんだ。早!とか思っていると怜が反応していた。

 「お…この曲いいな……。ん?なんかどっかで聞いた事あるようなフレーズだな…?」
 「えっ!?」
 聞いた事ある?
 明羅の頭の中で色々な音楽のフレーズを考える。何かと似てしまっただろうか…?そりゃ音の数は決まっているのに曲は数え切れないほどあるわけで何かと似てしまっても仕方ないけれど。
 声を出した明羅を信号待ちで止まった怜が運転席からじっと見ていた。
 「…思い出した。お前の指の音だ」
 「わっ!怜さん音読んだんだ!?」
 「いや、読んだんじゃないけど、たまたま指見てたら音まで見えたから…ってそうじゃなくて!コレ、お前か!?」
 怜がカーナビを指差した。
 「え…と……ぅん……」
 怜が頭を抱えた。
 「…あの日に作ってたやつ?」
 「そう…。依頼のだったから聞かせられなかった、んだ…」
 信号が青になって車が出る。
 はぁ、と怜が大きく嘆息していた。
 「…CMにねぇ…。後は?他にも曲あるのか?」
 「え、と……昨日怜さんが…」
 「アレか!?俺が気に入ってるって言った!?………はぁ、納得。お前が話に乗ってこないと思ったら…。どんだけだ、お前…」
 怜が手を伸ばしてきて明羅の頭をまたぐしゃぐしゃにかき混ぜた。

 「運転!危ないよっ」
 「………大丈夫だ。あと隠してることは?」
 「ええと……多分、ない、と思う」
 両親の事も言ったし。曲の事も言った。
 「曲は……誰も知らないんだよ…?名前も出してないし」
 「…俺だけか?」
 「うん。親にも言ってないし。家の者にも言ってないから…」
 怜の口角が上がった。
 「なるほどな。それで稼いでるって事か」
 「一応。微々たるもんだけど」
 「……やっぱ才能あると思うぞ」
 「曲作る?」
 「そ」
 明羅は怜に誉められて気分が上昇した。
 「万人にも受けるってことだ。CMに使われるって事はそうだろう。依頼が来る位なら企業も聴いてる人も求めているって事で、俺だけがそう思うんじゃないって事だ」
 「そう、…かな?」
 「ああ、そうだ」
 怜が言い切った。
 
 

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