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副会長はいじっぱり 25

25  敦(ATSUSHI)


 満点かよ…。
 がっくりと自分の部屋から恨めしそうにすぐ隣の家の窓を見た。
 小学生じゃねぇんだからそんな簡単じゃねぇだろうに。
 しかもご褒美をほしがってるんじゃやっぱ小学生と一緒か。

 仕方ねぇから性根入れるか…。
 …ったく如の為だけだぞ。こんな事すんの。
 その当人は分かってんだか、分かってねぇんだか。
 いや、如はぜってぇ分かってんだよな。
 ほんっと振り回されるっつうの。
 こっちは如の態度一つでハラハラドキドキだってのに。
 
 「ゆきちゃ~ん?」
 窓を開けて名前を呼んだ。するとすぐに窓が開く。
 「何?」
 「一応頑張るからさ~…ぜってぇ逃げんなよ?」
 「………」
 うっ、という表情で如が怯んだ。
 「さすがに約束守んのにぷらぷら出来ねえからベンキョーします!後でメールする」
 「……メールじゃなくていいだろ」
 「いいの!じゃね!如も頑張ってね?」
 「……ああ」
 如は頷いてぴしゃりと窓を閉める。
 あ~あ、素っ気ないんだからもう。
 敦は苦笑が出てくる。
 素直じゃないし、意固地だし。曲がった事キライで綺麗好きで、でも優しいんだ。
 敦は自分がずるいことを知っている。
 弱いふりして綺麗な如を独り占めしたくてずっと如にくっ付いてきた。
 さすがに背も体格も如を通り越してしまえばそれが通じないけれど、でも小さい頃の刷り込みで未だ如の中には敦に対しての特別枠があるのは分かってる。
 嫌われてないのは分かるけど、敦と同じ意味での好きという感情が如の中にあるのかと問われればさすがにそれは謎だ。
 いや、敦は抱きたい好きだけど、如が抱かれたい、なんて思うはずねぇよな、とも思う。
 好きというのは疑ってないけど、やっぱ微妙だとは思ってしまう。
 今の対応だってどうしたって温度差は感じてしまう。
 「うまくいかねぇなぁ…」
 窓に向かって呟いた。
 足を一歩出せば目の前に如がいる。
 ちょっと腕を伸ばせばすぐに掴まえられる。
 敦は大きく背伸びをして窓から離れると机に向かった。


 真面目に勉強なんていつ以来か?
 首をかきこきと鳴らして隣の窓を見る。
 まだ電気がついてるけどもうそろそろ寝る頃か?
 携帯を取り出してメールしようかと思ったらその如からメールが来た。

 <ほどほどにして寝ろ>
 
 ほどほどで満点取れると思ってんのか?
 それとも満点など取らない方いいと思ってるのか。
 それでなくともレベルの高い秀邦なんだぞ?
 はぁ、と溜息が漏れる。

 <寝るよ。明日何時に家出る?>
 
 目の前の部屋にいるけどメール。
 なんとなくくすぐったいのはなんだろう?
 すぐに7時15分、とメールが返ってくる。
 一緒に行くから、と一緒におやすみ、とメールすればおやすみ、とすぐ返ってくる。
 如はなんて思ってんのかな?
 聞いても答えてもくれなさそうだけど。
 
 如が電気を消したのを見て敦も電気を消した。
 きっと部屋を明るくしたままだと如が気にするだろうから。
 ほんっとこんなに考えてるのに!
 つれないよな…。でもま、それでもいいんだけど。
 だって昨日はキスしてきた位だし。
 …本人が認めてないけど。
 
 ベッドに入って図書館の事を思い出す。
 あの政治家のバカ息子が如を舐めるように見ていたのが分かった。
 如を隠すようにしたけれど、後からカイチョーからどうも如を泣かせてみたいとか言っているらしいというのを聞いて沸騰しそうになった。
 学年が違うのにどうすればいいかと思ったらカイチョーのほうから交換条件を出されたのだ。
 三浦は三浦でどうもサッカー部の奴らの反感を買ったらしいと。
 それで学年ではカイチョーが如を、敦が三浦を守るという条件の元に合意したのだ。
 それにしても如と三浦ってすっごい似てると思う。
 綺麗さと可愛さでいったら如の方が勝ってるに決まってるけど、きっとカイチョーは三浦をそう思ってるだろう。
 だからこそ如を任せても信頼も出来るんだけど。それもきっとお互い様だ。
 「しかし満点……」
 簡単に言ってくれるよな…。さすがゆきちゃんだ。
 敦はげんなりしてしまう。
 でも好きにしていいんだ。
 「………取れるか?」
 取るしかないけど。
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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