26 敦(ATSUSHI)
いつもより早い時間に学校に到着。
如が校門で生徒会役員で服装チェックするためだ。
でもそれももう今週で終わるらしい。
学校に着くと生徒会の役員がすでに集まっていて、その中にカイチョーと一緒に三浦もいた。
「はよっす」
カイチョーに挨拶すればおはようとにっこり微笑まれる。
それに対してカイチョーに襟首を掴まれている三浦は仏頂面だ。
如はいつも通りに表情が変わらない。
そして会計と書記の役員は生徒会に関係ない敦と三浦がいるのに訝しげにしているが会長様がいるので何も言えないのだろう。なんだろう?という表情を見せながらも黙っている。
「柏木、じゃあコレを頼む」
カイチョーが三浦を差し出してきて敦は頷いた。
「コレってなんだよ!」
きゃんきゃん三浦が顔を真っ赤にして騒ぐけれど誰も意に介してない。
敦は三浦の腕を掴んで如に向かい、そっと顔を近づけて耳元に顔を寄せる。
「如、昼は?」
「あ……と…、屋上?」
「如のクラスまで行く?」
「……あとメールでもする」
「そ?」
なんだ、残念。あれ?でもそうすると三浦が…。
如の隣に立っていたカイチョーに視線を向ける。
「昼休みどうしたら?」
「生徒会室開けるからコレ連れて来て欲しい」
「了解っす。じゃ如もカイチョーと一緒に生徒会室いて?」
「……分かった」
眼鏡に手をかけながらも素直に頷く如に敦がくすっと笑った。
「じゃね?」
「ああ」
如はきっと学校で他の人の前でも普通に自分と話しするのになんとなく落ち着かない様子なのだろう、と思って敦は笑ってしまう。別に中学ン時だって普通に話してたはずなのに。ただ確かに学校よりも家帰ってからのほうが自然だから何となく気持ちは分かる。
「なぁ、柏木とフクカイチョーは付き合ってねぇの?」
「ないね………まだ」
カイチョーと別れれば三浦は大人しくなる。
教室に入って窓際から校門に立つ如を見ていた。1年の敦たちのクラスの窓際から校門がちょうど見える。まだ時間が早いので教室には敦と三浦しかいない。その三浦も一緒に窓から下を見ていた。
「あれで?」
「あれで」
「だってフクカイチョーの態度なんか違うし」
「でも如が認めねぇからな。そういうお前だってカイチョーの前だと全然ちげぇし」
「だって!横暴だろ!?」
「横暴?そうか?お前を心配してるんだろ」
「………そう、…?」
「だろ。じゃなきゃなんでわざわざ一緒にいるんだよ。いいけどカイチョーと三浦ってどういう関係?」
「………。和臣は一条の跡取りで家もすごいのは知ってるだろ?俺は父親が和臣のお父さんの運転手。小さい頃に母親亡くして、それから一条の家で一緒に育ったんだけど…いっつも遊ばれて、俺の事おもちゃだとしか思ってないとしか思えない」
「へぇ」
たいして興味はないけど相槌を打つ。
「俺の事よりフクカイチョとどうなの?」
「だからわかんねぇよ?嫌われてねぇのは分かっけど」
「な!昼休みって何?」
三浦はひとの事に興味津々らしい。
「ずっと昼休みいなかったのってフクカイチョと会ってたの?」
「…図書委員だから図書室にいたんだけど?」
「え~?柏木が?真面目に?それ嘘だろ」
「………お前、そんな事言うならお前が俺に言った事全部カイチョーにばらすぞ?」
「や!やめて!くださいっ!」
三浦が両手を合わせた。
「まさか柏木がフクカイチョと繋がってて和臣とまで話するようになるなんて思ってもなかったのに…つうか、和臣ってバレる事もないと思ってたのに」
「……あんだけ睨まれれば分かるっつぅの」
「え?」
「朝、カイチョーに俺、毎朝睨まれてたから」
「え?」
校門から如が振り返って敦のほうを見てるのに気付いて敦はひらひらと窓から手を振った。
すると如が眼鏡に手をかけながらも小さく手を振り返す。
「……何アレ?…チョー可愛い」
三浦が呟いたのに敦はふふんと得意そうに笑った。
「おまえもちっとは可愛くしたら?あんなにきゃんきゃん騒いでばっかねぇで」
「……いいだろ!別に!…………俺だって可愛くしたいけど」
はっと三浦が口を押さえる。
「……カイチョーに教えてやろっと!」
「言うな!!」
三浦からかうと面白い!だからきっとカイチョーも意地悪したくなんだろうけど。
それはとりあえず三浦には黙ってたほうがいいだろうな、と真っ赤になってる三浦を見て笑った。
「……でも、昨日は、ちょっとは和臣、優しかったぞ?」
敦は笑いたくなる口を押さえた。
「…気味悪かったけど」
どうやら敦の助言を実行したらしい。
「……素直に認めりゃいいのに。三浦もだけど如もだ」
「フクカイチョも?」
「そう。まぁ如は如だから何でもいいけどね」
何したって言ったって如が敦の一番に変わりはないから別にいいけど。
でもやっぱ好き、位は意思表示してほしいと思ったって悪くはないよなと敦は窓から如をずっと視線で追いかけていた。
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