27 如(YUKI)
校門から敦の教室を見上げると敦が三浦くんと頭をくっ付けるようにして並んでこっちを見ていた。
仲いいよな…。
ちり、と敦がここ最近全然じゃれてこないのに心が何かを訴えている。
あ…。
敦が如が見てるのに気付いて手を振ってきたので小さく手を振り返した。
体育の時もそうだけど、敦は如の視線にすぐ気付く。
それに思わず満足してしまうのが自分でもおかしい。
ふざけてる、とは言ったけど、今はもう正直ふざけてるとは思ってはいない。
…軽い、とは思うけど。
だってあんな簡単にさらっと好きだ、なんて言えるのがおかしいじゃないか。
満点とったら如から言って、なんて言ってたけど絶対言えるはずなんかない。
「……そういえば、和臣はテストで毎回満点?」
「え?ああ、まぁね」
なんでもないように和臣が頷いている。
学年トップは和臣、如は万年2位だ。これ位突出していればもう和臣に張り合おうとする気など毛頭ない。
いつも如は自分が出来る範囲で頑張るだけだ。
「……和臣って勉強してるの?」
「……たまには」
してねぇんだ…。敦と同じタイプか。
なんでそんな普通じゃないのに囲まれてんだろ…。
そういや満点とったら敦の好きにしていいって約束したけど。
好きにって…?
………ちょっと、待て。そういや昨日敦はなんて言ってた?
好きって言って?の言葉に動揺して他の言葉を聞き逃したけど…。
好きとか、抱いてって…言ってたような。
抱いて、って抱きしめて、の意味じゃねぇ、よな?
かっとして如は今気付いた。
信じられねぇ…敦のヤロー!
気付かなかった自分も自分だけど!
言えるか!そんな事!
いや、ちょっと待て。好きにしていい、って事はそういうコトか?
…前にもそういや押し倒された、し。
「二宮?」
和臣に呼ばれて如ははっとした。
「どうかしたか?赤くなったり青くなったり…。まだ具合悪いのか?」
「あ、いや、大丈夫だ」
如は片手を上げて眼鏡に手をかけた。
動揺が激しいが必死に自分を落ち着かせようとする。
考えるな。どうせテストはまだ先だ。
こうして校門に立つのも期間限定なので今日で終了。
あとは週明けに学校出て、ゴールデンウィーク。
テストはもっとずっと後だし、全然まだまだじゃないか。
動揺した自分がバカみたいだ。
「二宮」
和臣の硬い声に如が顔を上げた。
登校の時間がせまってきてるのに生徒の波が多くなってきていた。
その中に図書館でみた奴ら、3年の赤井沢とその取り巻き連中がにやにやした顔で如を見ながら通り過ぎていく。
「……何かしてきそうな感じはするな」
ちっと和臣が舌打ちした。
「二宮、あの番犬から離れるな」
「…番犬ってね」
敦は犬じゃねぇっての。
「ふざけてるんじゃない。本当にだ。あいつらはかなり性質の悪い噂も聞いている。今までもな…。現職議員とか、代々代議士の家柄だとかで何しても許されると思っているらしいから。今まではそれでも俺には無害だったから放っておいたが…。あの目を見れば二宮を狙っているのは確かだ。一人で動くなよ?」
「……なんだよ、それ」
はぁ、と如は溜息を吐き出した。
確かに如を見る目がかなり気持ち悪い事は確かだが、それでどうなるっていうのか。
面倒な、と如はちょっと面白くない。
そして和臣が敦をなんでそこまで重要視してるのかも謎だった。
「なんで和臣はそんなに敦の事信用っていうか、信頼っていうか…してるんだ?」
「ああ?だって番犬クンは二宮が一番大事なんだろう?彼には俺の大事なモノを任せているからな、その為には俺だって協力するさ」
「大事…?」
敦が…自分を?
「な、な…んで?」
「はぁ?」
「敦が……俺、…?」
「………お前達は本当に手がかかる。……きっと柏木も俺に同情してんだろうな…。ちょっと腹立つな…」
はぁ、と和臣が呆れたように如を見て、そして大きな溜息を吐き出していた。
「まぁ、お互い様だけど。きっと柏木も同じ事思ってるんだろうからな…」
やれやれと和臣が肩を竦めた。
意味が分からなくて如は首を傾げた。
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