28 如(YUKI)
とりあえず、3年とは教室が離れているし、何もなければクラスから如は出歩くわけでもないので何も問題ないはずだが、和臣のほうが神経質になってると思ってしまう。
その和臣と昼休みに生徒会室に向かう。
屋上に行こうかと思っていたがそれは和臣に止められてしまった。
あの図書館での静かな時間が好きだったのに、それを邪魔されたという所では赤井沢には恨みを抱く。
生徒会室にノックの音がしてドアが開いた。
「俺は別に来なくていいっていってるのにっ!」
「ほんっときゃんきゃんうるせぇなっ」
敦が三浦くんの腕を掴んで引きずるように連れて来た。
「ご苦労」
和臣が笑って答えてるのに如はやっぱり不思議だ。
そして三浦くんはやっぱり敦にしがみつく。
「翔太?」
にっり笑ってる和臣の顔が怖い。
それに敦に抱きついている三浦くんを見れば如だって面白くはない。
なんで敦も普通にさせてるんだ?
「三浦?離れろ。離さねぇとばらすぞ?」
敦がそんな事を言ったらぱっと三浦くんが敦から離れた。
それにほっとするけど、面白くないと思うと思わず如の眉間に皺が寄ってしまう。
「如」
敦が如の顔を覗きこんでくる。
「どうかした?」
「あ?何が?」
「ここ皺寄ってる」
敦の手が伸びてきて如の眉間に触れた。
その手にびくっと思わず身体が反応するとすぐに敦は手を引っ込めた。
「…わり」
別に触れられるのが嫌なんじゃない。
謝る敦にそう言いたかったのにわざわざそんな事を言うのも可笑しいだろ、と如は顔を俯けた。
なんで敦が謝るんだ?別に何も悪い事もしてないのに。
如は妙に苛立った。
「柏木…ちょっと」
和臣が敦を呼んで窓際に寄ると二人で耳打ちしながら何か話している。
背の高い二人は身長が同じ位だ。
180センチ越してるって嫌な奴らだなとじとりとそれを見ていると別な方からじっと視線を感じた。
見てたのは三浦くんで如よりも小さい身長で目が大きくて可愛いという言葉が確かに当てはまる。
「座っていいよ」
如は三浦くんに生徒会の会議用のテーブルと椅子が並んでいる所を指差し、自分も座ると大人しく三浦くんも座った。
いつも和臣の前だと騒いでいるけどそうじゃないのか?
今年の1年の中で一番可愛いと称されているのが分かる。
どこを向いても男しかいない男子校だからちょっとでも可愛いだけでもまるで女の子みたいな扱いにされてしまうのに三浦くんは本当に可愛いから騒がれるのも当然だ。
「フクカイチョは柏木の事、好き、なん…です、か?」
「は?」
小さく三浦くんが聞いてきたのに思わず目が点になって聞き返した。
「それとも…和臣…?」
「いや、それは絶対ない」
すかさずそこは即答した。
「…そう、なんです、か?」
三浦くんが如の返事にふにゃっと表情を緩めた。
「よかった。フクカチョ…が和臣好きだったら勝てねぇから…」
「は?」
小さく三浦くんが嬉しそうに呟いてる。
どうやら本当に三浦くんが好きなのは和臣らしい。
でもだったらなんでいつも敦に抱きついて和臣を拒否してんだ!?
そこはどうしてもちょっと面白くはない。
けど、なんとなくそれを言うのも憚られる。
敦は全然自分に触ってもこなくなってるのに。
家帰っても抱きついてもこないのに。
けど、なんでソコに自分がイラッとしてるのか。
いや、嫉妬だ、と半分分かってもいるけど…。
「…和臣が好きなの?」
敦と和臣がまだ話をしているのを確認しながら小さく三浦くんに聞いてみるとこくんと小さく頷いたのに如はほっとした。
だから、なんでほっとすんだよ?
それはだって敦は如のだからだ。
「…和臣好きなら…敦に抱きついてるの、よくない、と思うけど?」
小さく如が口に出した。
「あ、…そう、だよね…」
三浦くんが素直に頷いた。
「反対に和臣に抱きついてやればいいのに?そしたら和臣きっと絶句して黙るんじゃない?」
「え?そう!?」
「多分。だって和臣いつもイライラしてるよ?いつもあんまり表情出さないけどかなり面白くないってのは見えるし」
「…そう、かな…?和臣、いつも顔変わんないから」
「きっと君から抱きついたら変わるんじゃない?」
「そっかな…?」
イライラしてるのは如だ。
でも素直な三浦くんはそんな事微塵も疑ってないんだ。
本当は如が三浦くんが敦に抱きついてるのを見てるのが嫌なだけなんだ。
「和臣もきっと本当はそうして欲しいんじゃないかな?和臣が誰かに執着してるとこなんて始めて見たし」
「え?そ、そう…?」
三浦くんが嬉しそうにしていれば如も安心してしまう。
テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学