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副会長はいじっぱり 29

29  如(YUKI)


 昼休みは生徒会室で4人でいた。
 如が言ってから三浦くんは敦に抱きつかないで大人しくしてれば和臣も満足そうで三浦くんが如に感謝の目を向けてくる。
 そうじゃないのに。
 如が我慢ならなかっただけなのに。
 素直な三浦くんに如は自分が汚く思えてくる。
 「如?どうかした?」
 「……別に」
 「そろそろ予鈴だ。教室に戻ろう。柏木、終わったらまた連れて来てくれ」
 「了解っす」
 「来週はもう朝の服装検査もないから…そうだな、やっぱりウチの教室に来てくれ。それで翔太を渡すから」
 「……俺モノじゃねぇのに」
 「当たり前だ。心配してるだけだ」
 和臣が言えば三浦くんは顔を赤くしてる。
 それが確かに可愛い、と思う。
 「ゴールデンウィーク明けには片付けるようにしとくから」
 「……お願いします」
 和臣と敦の会話にも苛立つ。
 「…如?」
 敦が如を気にしているのは分かっていたけれど自分が一体何に対して苛立っているのかもう全然分からなくなってくる。
 結局敦とろくに顔も合わせない、話もしないまま昼休みは終わってしまった。

 この苛立ちはなんなのか?
 三浦くんに対してもだ。
 三浦くんが好きなのは和臣って事は分かったけど。
 ぐちゃぐちゃとした自分の中の気持ちが汚いと思う。
 なんだよコレ。
 まったく変な熱出たり自分が可笑しくなっている。
 敦のせいな事は確かだ。
 キスしたりするからだ。
 でも…自分からもした、んだ。
 如は自分の唇を押さえた。
 「ここテストにだすからな」
 先生の声に耳に聞こえてきて、はっと如は意識を授業に向けた。
 まったく授業に身が入ってない。
 ダメだ、こんなの!
 如は考える事をやめて授業に集中した。


 「如、どうしたの?今日…。具合悪い?」
 「いや、別に……。なんでもねぇよ」
 帰り道。歩きながら敦が如を気にしていた。
 横を歩く敦と足の長さがちげぇな、と思いながら下を向いて如は歩いていた。
 「………なんか俺また如、怒らすような事したか?」
 「してねぇよ」
 三浦くんが抱きついてたのが面白くなかったとかなんて言えるはずがない!!
 触ってもこないとか!
 言えるか!
 ………でもそれが面白くないって……。
 さらに顔を俯ける。
 「如?」
 「う、わっ!」
 敦の顔がいきなり目の前にあった。
 かっと思わず顔が熱くなって如は思い切り顔を仰け反らせた。
 「な、なんだよ!?」
 「なんでもないけど……」
 敦がすっと離れるけどその顔つきが険しい。
 「…そんなに嫌か…?」
 「え?」
 「昼もちょっと触っただけで如びっくりするし、今だって…」
 「ち、違う!嫌だなんて言ってねぇだろ。驚いただけだ」
 「…そう…?」 
 訝しげに敦が見てる。
 なんとなく三浦くんに言った自分の言葉が後ろめたくて如は慌ててしまう。
 でも自分が悪いのは分かる。
 ふざけてると一蹴してるのも自分だし、満点取れとか、触るなとか、言ってるのは全部如で、敦はちゃんとそれを守ってる。
 「敦……」
 「何?」
 如が呼んだだけで敦は嬉しそうな顔をするのに心が苦しくなった。
 「……なんでもねぇ…。な、なんかDVDでも借りようか?どうせ明日明後日暇だからなんか見る?」
 「見る」
 敦が頷いた。
 如の部屋にはテレビがなかったから見るときは敦の部屋だ。
 そういえばしばらく敦の部屋に行ってなかったと思い当たった。
 いつも来てたのは敦ばっかりだ。
 「如何見たいの?」
 「なんかシリーズ物でも…?ゴールデンウィークもあるし」
 「お!いいかも。ずっと連続で見られるじゃん!」
 敦も頷くのに如も笑った。
 敦は遊ぶ約束とかもないのか。
 如といる事が前提になってるのだ。
 「でもベンキョもしないとな」
 「するよ~。さすがにしねぇと満点なんか取れねぇもん」

 別にいいのに…。
 思わず如が思った。
 自分が言った事だったけれど、無茶言ってるのは分かってる。
 抱きしめたたって何したって別にいいのに。
 本当は怒ってもないんだ。
 じゃあ、何?
 如は隣の敦を見上げた。身長はもう15センチも違うのだ。
 この腕が抱きついてくるのがずっと普通だったのに今はない。
 
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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