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副会長はいじっぱり 30

30  敦(ATSUSHI)


 「如?」
 じっと如が意味ありげに見上げてくるけど全然分からない。
 なんか今日は一日如が変だった。
 それにしても振り回されている。
 ちょっと触ろうとしただけで身体をびくつかせられたり、仰け反られたり。
 かなりそれにはがっくりときてしまったけど、嫌ではないと慌てたように言ってる。
 嫌じゃないならいいけど…。
 拒否られるのは正直キツいからやっぱり距離とった方いいのか。
 あんなに身体をびくっとさせる位じゃな、と昼休みの如の態度を思い出す。
 前に押し倒してしまった時の事が残ってるのか?
 それなのにDVD借りて観ようって誘ってくるんだから性質が悪い。
 如の部屋はテレビないから必然的に見る時は敦の部屋だ。
 でも勿論如からの誘いを断るはずなどありはしない。
 
 途中でレンタルしに店に寄ってどれにするかと相談。
 基本敦はなんでも選り好みしないので如のいいなりだ。
 如がアメリカのドラマシリーズものを見てみたいというので、面白いと話題になったヤツを借りる事にした。
 「なぁ、帰ったらすぐ行っていい?」
 珍しく如が興味津々で嬉しそうに聞いてくるのに勿論と敦は答える。
 どうやら見てみたかったらしい。それなら言えばよかったのに。
 顔を紅潮させちゃって可愛いんだから。
 あんまり友達とかも如は家に呼ばない。敦もあんまり呼んだ事はないけど。
 だいたいいつも一緒にいたんだから今更ながらどんだけだろと自分でも呆れる。
 でも如だってずっとそうしてきてたんだから。
 学校での会長との会話とか聞いてても普通に友達な感じだけど遊ぶとかってないのかな?と今更ながら不思議に思った。
 けれどそれは如にとっても敦がいる事が普通だったって事だろうから。
 今だってゴールデンウィークも一緒にいるのが前提なのだから。
 くすっと思わず笑ってしまった。
 「何?」
 如が顔をちょっと赤くしたままつんと澄ましてるのがおかしい。
 「いいや?別に。帰ったら見よ?」
 「ん」
 こくんと頷く姿に溜息をつきたくなる。
 本当に素だとこれだから!学校では素を出してないみたいだからいいけど。
 
 部屋はとりあえず綺麗だし、別に何もまずいものってねぇよな?と頭の中で部屋の中を考える。
 「じゃ、あとすぐ行く」
 玄関で別れて部屋に入って着替えながら部屋を確認してテレビの前に二人掛けのソファを移動させた。
 いつもは一人でだらっと横になってテレビ見たりゲームしたりしてるけど、如が久しぶりに来るのにちょっとテンションが上がってるかもと苦笑してしまう。
 「敦?」
 そっと窓から如が渡って来たのに慌てて敦は窓を開けて如の腕を掴まえた。
 本当に一歩分しか離れてないけど敦より背が小さい如の一歩とでは幅が違うはず。
 「なんだよ?別に平気だけど?」
 「一応。だって如来るの久しぶりだろ」
 「……そうだけど」
 来てない自覚はあったんだ。
 しばらく来てはいなかったけど如はすぐに安い二人がけソファに座って早くつけろと急かしてくるのに笑って電源を入れた。
 如の隣に座ってリモコンを持ち並んで見る。
 …けど、敦が気になるのはいっそ隣の如ばっかりだ。
 見ながら如が無意識に敦の服を掴んで引っ張ったり、笑ったり、驚いたりで、その顔を見てるほうがよっぽど楽しい。
 手が敦の手よりずっと小さい。
 身体だって肩幅なんかずっと違う。
 抱きしめてぇ、と思ったって仕方ないと思うんだけど、如は全然そんな気なんかないのか気にもしないのか、DVDに夢中だ。
 こんな事ばっか敦が思ってるなんて如が知ったらさすがに部屋にこねぇよな、と思えばじっとそれを押し隠して我慢するしかないだろう。
 ここでへそ曲げられたらきっとゴールデンウィーク中会えなさそうだ。
 敦はソファに肘をついて頬杖つきながらずっとDVDに夢中になっている隣に座る如の顔ばっかりを見てた。
 派手なアクションシーンにびくんとしながら如は無意識に敦の服に手を伸ばして掴んで離さない。
 抱きしめてぇ、キスしてぇ、と敦はそればっかり頭がぐるぐるしてるけど、夢中で満足そうに見てる如の邪魔もしたくないとも思ってしまう。
 こんなに好きなのになぁ、と溜息をつきたくなってしまう。
 
 
 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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