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副会長はいじっぱり 31

31  如(YUKI)


 「わっ!敦!見た!?今の?……………敦?」
 隣に座ってる敦の服を引っ張りながら敦に視線を向けたら、敦はじっとこっちを見ててもろに視線がぶつかった。
 その敦の顔がなんか全然テレビ向いてなくて、自分の方見てて、顔がこっちが恥かしくなりそうな優しい表情してたのにぼっと顔が熱くなった。
 なんだよ、その顔。
 思わず眼鏡に手をかけた。
 「見てたけど~…如見てる方面白い」
 「んなわけあるか!ちゃんと見ろよな!折角借りてきたのに」
 「はいはい」
 敦がふざけてくれたのにほっとする。
 急に敦の服をずっと掴んでた手が恥かしくなってくる。
 二人掛けのソファで身体が大きい敦とでは身体は触れるわけで。
 別にそんな事気にした事もなかったのに、今更、なんか全部が恥かしくなってくる。
 なんだよコレ。
 だからって手離すのもおかしいし、離れるのもおかしくて。
 急に夢中になってたテレビから意識が敦に向かってしまった。
 これじゃまるきり意識してんのもろバレになんじゃん!と余計恥かしくなってくる。
 しかもテレビではアクションシーンが終わってて間の悪い事にキスシーンからベッドシーンだ。
 嘘だろぉ、と冷や汗まで出てきそうになる。
 「ゆきちゃん?どしたの?……ああ、恥かしい?」
 くすくすと敦が余裕かましてるのにムカつく。
 真っ赤になってるだろう顔を見られたくなくて敦の肩に顔をくっ付けるように隠した。
 「さらっと流せばいいのに~」
 敦が如の肩に腕を伸ばしてきて抱きしめるような感じで肩をトントンと叩いてた。
 くっそ~~。
 別にDVDだけのせいじゃねぇっつうのに。
 「…ほら、終わったよ?」
 敦の胸の辺りの服を掴んでちらとテレビを見ればまたアクションシーンに戻ってる。
 そのまま敦に寄りかかるようにしてまたテレビに視線を向けた。
 敦の腕も如の肩にかかったまま。
 それにおかしいとも思わないで結局そのまま1本を見てしまった。
 
 「面白かった!」
 「…よかったね」
 すぐ耳元で敦の声が聞こえる。
 いつのまに声低くなったんだっけ?
 可愛かったのに。
 掴んでる胸も広いし腕の太さもいつの間にか如より男になってる。
 如が寄りかかったって全然びくともしなさそうだ。
 「如?もうすぐ飯の時間だろ?続き風呂も入ってからにする?」
 「だな!明日休みだし遅くまで起きててもいっかな」
 「まぁね」
 敦が如の身体から何気なく手を離してDVDを片付ける。
 こういうとこスマートなんだよな、コイツ。
 如が一人でわたわたしてるのに敦は全然そんなとこないし。
 「……やなヤツ」
 「うん?」
 「…なんでもねぇよ。じゃ全部終わったらまた来る」
 如が立ちあがって窓に向かうと敦がついてくる。
 「大丈夫だって言ってんだろ」
 「分かってるけど、一応ね。だって心配だし」
 渡る時に敦が如を守るかのようにして腕を伸ばしてる。
 「来る時も声かけてね?」
 「……大丈夫なのに」
 「分かってるけど!一応」
 なんとなく敦のその態度に大事そう、というのが見えて如は照れくさくなる。
 なんなんだよ。なんか大人になったみたいに敦は余裕かましてるし。
 「……ムカつく」
 「は?」
 「ムカつく!じゃ、また後で」
 ぴしゃっと窓を閉めたら敦が笑ってる声が聞こえてくる。
 何が恥かしいの?だ!
 恥かしいに決まってんだろうが!
 
 そういえば三浦くんに和臣に抱きついてやれば、と言ったのを思い出した。
 今までいつも敦から抱きついてきてたんだ。
 三浦くんに言ったように自分から抱きついてやるか。
 そうしたら敦はどうなるんだろう?
 後ででそうしてやろうとくすっと如は笑った。
 敦も少しは動揺すればいいんだ。


 「え?」
 「だから!敦君と留守番お願いね?別にもう高校生だからいいでしょ?」
 「…そりゃいいけど」
 夕飯の席で母親が言うには敦の両親と如の両親でゴールデンウィークは泊りがけで遊びに行ってくるから留守番よろしく、だった。
 「料理は敦くん少しは出来るらしいから」
 「え!?」
 「ほんと何でも出来る子よねぇ。如はなんにも出来ないのに」
 「………」
 確かに。と思わずむっとしてしまう。
 やっぱムカつく。
 
 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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