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熱視線 間奏曲~インテルメッツォ~2

 「あ、そこ右…で左…そのまま、まっすぐ…」
 明羅の家が近くなって明羅は道を案内した。
 怜の車に乗せられて、に明羅は妙にどきどきした。
 「あ、ここ…ちょっと待ってて」
 明羅は車を止めてもらってインターホンを押し、門扉を開けてもらう。
 そして明羅は車に戻った。
 「そのまま入って、いいで、す」
 「なるほどな…」
 「え?」
 怜が笑っていた。
 「そりゃ普通だわ」
 何が?
 「いや、なんでも」
 怜が一人で笑ってるのに明羅が首を傾げる。
 自動で開いた門扉を怜がくつくつ笑いながら通る。
 
 「俺は?車で待ってるか?」
 「ううん。来て」
 明羅は怜の腕を引っ張って家の中に案内した。
 「これは二階堂様、明羅くんがご厄介をおかけしてしまいましてもうしわけございません」
 「いえ、そんな事はありませんので」
 怜がなんとなく落ち着かなさそうなのが面白い。
 「怜さん、こっち。あ、木田さん、俺また怜さんの所行ってくるから」
 「ご迷惑では?」
 「いや、迷惑ではないので」
 怜が答えてくれるのが嬉しい。

 明羅は怜を自分の部屋に案内した。
 「うわ。お前自分の部屋にこれか!」
 怜が指したのはパソコンだ。線でいろいろ繋がっている。
 「そう。これで曲作ってupしてたらメールで連絡来て」
 「はぁ~」
 「でも怜さんとこのほうが本格的」
 「いいよ。うちのアレはお前専用で。どうせ俺は使えんから」
 怜さんの家からコンサートの時に着ていたスーツを持ってきたのを片付け、かわりにバッグに着替えやいる物を詰めていく。
 詰め終わると怜さんが何も言わずに明羅の荷物を持った。
 「……自分で持つよ」
 「いいから」
 別に女の子扱いじゃなくていいのに。
 「行って来ます」
 明羅は木田に挨拶した。
 「二階堂様、明羅くんをよろしくお願い致します」
 木田さんは日本での父の秘書でずっと家に住み込みでいてくれている。秘書というより家の執事みたいな感じで留守の両親の代わりに家の事を任されているのだ。
 「お預かりします」

 怜も木田に頭を下げていたのが面映い。
 まさか怜さんを家にあげて、自分の部屋になんて信じられない。
 去年の俺に教えてやりたい。
 去年の今頃はずっとピアノばっかり弾いてたはずだ。
 いや、夏休みはいつもピアノ漬けだった。
 年一回の怜さんのコンサートは大体が夏休みに入ったばかりの頃で、その音を聴いていつも夏休みの間ずっと怜さんの音が頭の中をぐるぐるしているのだ。

 それが今年はない。
 そのかわりに隣に二階堂 怜がいた。
 「なんだ?」
 じっと怜を見てたら怜が明羅に声をかけた。
 「…ううん、なんでもない」
 すっかりもうふっきれている。
 あんなにぐるぐるしてたのに今はもうそれがない。
 ピアノに触らなくなって1週間。考えられない事だがそれに焦燥感は浮かばない。
 「不思議だ…」
 怜の車の助手席に乗った。
 「何が?」
 ううん、と明羅は首を振った。

 「昼どっかで食べて買い物して帰るか?」
 「うん。いいけど、俺、自分の分ちゃんと払う」
 「いらない」
 怜が却下する。
 「気にするな。そうだな…お前のあの曲で儲けさしてもらうつもりだから大人しくしてろ」
 「え?何の事?」
 明羅はきょとんとして怜を見た。
 「あれをそのうち発表するつもりだ」
 「…それは、いい、けど…」
 明羅は何て言っていいか分からなくて言いよどんでしまう。
 「ああ、あれを誰かに聞いて欲しいな…。生方を呼んでもいいがヤツじゃ良し悪しが分からんだろうし」
 はぁ、と怜が嘆息する。
 「いや、もっと弾き込んでからだな」
 「…………」
 怜が一人でぶつぶつ言っている。

 「あ、さっきのCMの曲も全部聞かせろ。前のもだ」
 「…いいけど」
 明羅は頷いた。でもなんか恥かしい。
 「よし。じゃ、さっさと飯食って買い物して帰るか」
 怜がぐいっとアクセルを踏んだ。
 「…曲、気に入ってくれ、た…?」
 「勿論」
 怜が即答してくれる。

 よかった、と明羅はほっとした。
 そしてそっと隣を見る。
 そういえばキスしたんだ、と思い出して明羅は顔を俯けた。
 思い出したとたんになんとなく落ち着かなくてもぞもぞと動いた。
 どうしよう?
 音だけでも特別で、音をくれるという怜が特別だったのにさらにそれどころじゃなく特別になってしまった。
 昨日明羅と怜の関係はなんだろう?と思ったけど…
 恋人…?
 明羅は自分で思ってますます落ち着かなくなった。
 
 
 

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