33 如(YUKI)
「んぁ……???」
天井が自分の部屋と違う。
目が覚めると身体が重かった。
天井は違うけど知らないものじゃない。小さい頃から何度も見てる天井だ。という事は重いこれは敦の腕か。
ぐいと自分の身体にかかった手を持ち上げた。
「敦。起きろ」
今何時だ?すでに日は高くなってる。
「ん~~~?如…?」
昨日DVD見てそのまま寝ちゃったのか、とそれに関しては何とも思わないけど、なんとなくキスを覚えてる。
したのか?
ダメじゃないって言った気がする。
嫌じゃないけど…。
どうなんだ?
目の前にある敦の茶色の髪が綺麗だ。
鼻も高い。
…ムカつく。
目の前の鼻をぎゅむっと掴んだ。
「てっ…何すんの」
「……起きねぇから」
目を開けるとやっぱり薄い茶色の瞳だ。
「如…はよ。…昨夜の事覚えてる?」
「何を?」
「如がキスしてって…」
「そんな事は言ってない。お前がいいかって聞いたんだろ」
「……………覚えてんだ?」
はっとかまをかけられたのに気付いた時は遅かった。
「如…」
うわっ、と如は目を閉じた。
敦が如の上に乗っかってきたのだ。
「………しないよ」
はぁ、と敦が溜息をついて如の肩に頭を置いた。
「…そんなさ、身構えないでよ。無理に、なんてぜってぇしねぇし」
前はしようとしたくせに…そう思いながらそろりと如は目を開けた。
「……キス、したい、の、か?」
「決まってるでしょ」
敦の目が真剣に如を見ていた。
ふざけてない…。分かる、けど。
如はどうしたい?
「……俺は、…わかんねぇ…よ…」
「ん。いいよ。待つし」
敦が如からよけてベッドを降りた。
「如が嫌じゃないのは分かってる。無理に進めたっていいかなぁ、とも思うけどね…。でも俺にしたらちゃんと如にも好きって言って欲しいし」
「好きだけど?」
「…いや、違うから…」
敦が頭を抱えてた。
「今のは恋愛感情の好きじゃねぇでしょ。俺が言ってるのは愛してるの好きだから!」
あ、愛、って……!
朝っぱらから何言ってんだコイツ!!!
聞いてるほうが恥かしくて耳まで熱くなってくる。
「まぁいくらか前進してるっぽい感じはするからいいけど。ご飯どうする?ウチで食う?」
「いいよ。顔洗って歯磨きしてくるし…」
如は起き上がってベッドを降りた。
「うん。じゃ、また後でね」
軽く言って敦が眼鏡を渡してくれながら口端を上げた。
こういう所が本気なのかな?って疑問に思うんだ。
本気だったら離さないと思うんだけど。
……って何を考えてんだ?
そのまま土日を何事もなく過ごす。
それは今までと変わりないもので如はほっとした。
キスもしないし、何も余計な事もなかった。
それでいいじゃないか。
でも分かってる。
もう前のようにただの幼馴染じゃない。
それが嫌、でもない。
どうにも如は自分が分からなかった。
メールの音がして敦が携帯を弄っている。
休みでもひっきりなしに敦にメールが来るのにイラつくのはどうして…?
別に何でもないのは分かってても苛立つのだ。
イラつくなんておかしいだろ、と平然を装ってるけど気になってる。
言わないけど。言えないけど。
「うるせぇなぁ…」
携帯の着信音にちっと舌打ちしながらも敦はメールを返している。
「…どうしたの?…誰?」
「三浦だよ」
三浦くん、か。
敦とは何でもないというのが分かってても気になる。
どうして…?
いや、違う。
本当はもう分かってる。
自分で自分をガードしているだけだ。
認めたくないだけだ。
だって今だってメールでさえも、ただの友達だって分かってても面白くないんだから。
敦が携帯をいじってメールして全然こっちを見ないのが気に入らない。
三浦くんが敦に抱きつくのが面白くない。
なんでもないって分かっててもだ。
だから、これって…。
認めたくないけど、前も思ったけど。嫉妬、というやつか?
なんで敦に?
それにもイライラする。
自分にも敦にも、だ。
敦は如のものだって言ったのに。
敦だっていいよ、と言ったのに。
「ゆき?どうかした?」
「え?いや別に?」
「…なんか怒らせたか?」
「…別に怒ってねぇし」
空気を悟るのが敦は聡い。
それだけ一緒にいたんだから分かられるのも分かるけど。
本当に如だけが特別なんだろうか?
ただ横に、近くにいたからじゃないのか?
なに馬鹿なことをと思っても少しだけ頭を過ぎってしまう。
テーマ : 自作BL小説
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