34 敦(ATSUSHI)
なんか如が大人しくなった。
DVDを普通にただ並んで見てただけで土日が終わってしまって、また学校だ。
大人しくDVDを見て、夜は如は勉強するといって帰って行ったし、それを邪魔するも出来なくて、仕方なしに敦も教科書をさらった。
なんか不機嫌、とも違うんだけどあんまり喋らなくなったのはどうしてか?
怒ってないと如が言ってたように、確かに怒ってはなかったけど。
分かんねぇな…と敦は呟きながら制服に着替えると窓を開けた。
「如。用意出来た?」
「ああ、今降りてく」
すぐに窓が開いて返事が返ってくるのに安心した。
学校始まったばっかの頃は話しかけるなって言われてたけどそれがなくなったのに顔が緩む。
如が噂に疎いのがまたラッキーだ。
お姫様抱っこの後、噂になってたのは知ってるらしいけど、どんなまでは知っていないんだろう。
知ってたらこうして一緒に登校なんて絶対しなさそうだ。
敦には大歓迎の噂なので今の内に既成事実を作っておいて損はない。牽制は大歓迎だ。
如は幼馴染だから、で敦の説明をしたつもりなのだろうけど、普通幼馴染でも男同士でお姫様抱っこはしないだろ、まで行き着いていないのに笑える。
階段を下りて靴を履き外に出れば如も出てくる。
何も言わないで隣に並んで歩き出した。
いつもよりも如は遅い時間。敦は早い時間。
今まで服装のチェックをしてたけどそれが終わったので如も普通の時間に登校だけど、真面目な如はちょっと早くに出る。
「別に付き合わなくていいのに」
「如と一緒に行けるなら別に早くても苦じゃないし。そういや親達いつ出発?詳しく聞いてなかった」
「あ?なんだ聞いてなかったのか?3日だ。6日まで」
4日間か。
その間如と二人。
今日明日学校行けば…。
口端が緩みそうになるのを敦は手で隠した。
如の教室まで送っていってカイチョーと三浦が来るのを待ってカイチョーと交代する。
本当なら如にずっとついていたいところだけど仕方ない。
「じゃまた昼休みは生徒会室で」
カイチョーににこやかに告げられて敦は頷いた。
本当は如と二人っきりがいいけど、赤井沢っていう3年がどう出るか分からない今は仕方ない。
三浦を連れて如のクラスから1年のクラスに向かいながら敦は口を開いた。
「お前は?サッカー部に睨まれてるって何したんだ?」
「…何にも」
「何にもで睨まれねぇだろ」
「…そうだけど…」
言うつもりはないらしい。
「それよりメールうるせぇんだけど」
「だって!和臣が……」
「優しくない、ってのはもう何百回も聞いたけど」
「………スミマセン」
三浦がしゅんとした。
「いいけど…なんで素直になれねぇかな…?好きなんだろ?」
「………なんか、分かんねぇ…」
はぁと敦は溜息を吐き出した。
「分かんねぇわけねぇだろ。お前分かってる?俺によこしてるメールの内容。和臣が、和臣が、和臣が、和臣が…だけだけど?それを俺が受け取ってどうしろと?」
かっと三浦が顔を真っ赤にしてた。
「俺によこしてるメールの内容そのまま本人に言えばいいだろうが」
「………無理」
敦は頭を抱えた。
「めんどくせぇなぁ…」
「…スミマセン」
「ほんとだよ。俺だって人の事構ってられねぇってのに」
「柏木、そう言いながらも優しいよな。フクカイチョもだからきっと柏木好きなんだろ。俺、なんで優しくないのに和臣がいいのかな?」
「知らねぇよ」
如にはまだ好きだなんて言ってもらってねぇけど、なんて事は言わない。
その日は何事もなく学校も終了。
異変は翌日だった。
昨日と同じようにちょっと早めに登校。この日を終えれば親なしの如と二人のゴールデンウィーク突入だ。
2年の如の教室に着くと教室にいるのはまだ2人ほど。
それも昨日と同じ。
ただ、その二人の顔が嫌悪に歪んでいたのに敦は気付いた。
いつもと同じと思っていて視界に何も映していなかったけど…。
「如、ちょっと待って」
教室に入って自分の席に行こうとした如を止めた。
「二宮…」
如のクラスメイトの二人が教室の端に寄って如に向かって首を横に振っている。
「…何?どうか…」
「ゆきっ」
如が自分の席に視線を向けようとしたのに敦は如の腕を引っ張り、如の頭を抱えるようにしてから如のクラスメートに声をかけた。
「ちょっと!コレ!」
「知らねぇよ!俺ら来た時にはもう」
「…だろうけどね」
敦は頭を抱えた。
「敦?なんだ?」
「あ~~~……如、ちょっとそっちの端行ってて」
「敦?なんだって聞いてるのに」
「いいから」
敦はぐいと如の腕をつかんで教室の端に連れて行った。如の目の前に立って教室に目を向けないようにしているのに如が怪訝な表情をしている。
「そんで、出来るなら廊下の方見ててくんない?」
「はぁ?なんで?」
「ん~~~…机運ぶから」
「ああ?」
如が敦の陰から首を伸ばして自分の席の方に視線を向けた。
「…………あつ、し…」
如は声を詰まらせると敦の制服をぎゅっと握った。
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