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熱視線 間奏曲~インテルメッツォ~3

 大きな駅の駐車場に怜が車を止め、お昼を和食の店に連れて行かれた。
 そしてそのままデパートの地下で食材の買い物しようと店を歩いていた時だった。
 隣を歩いていた怜が足を止めた。
 「怜さん?ど、した…」
 怜の視線の先を見て明羅もはっとした。

 二階堂 宗だ。
 「あれ、桐生じゃね?」 
 宗と一緒にいたのも明羅と同じ学校で、見た事があるやつだった。
 明羅はそそと怜の後ろに隠れるように移動した。
 宗も怜をじっと見ていた。
 「お前ら先行ってていい。ちょっと…」
 二階堂 宗が友達を促して近づいてきた。

 「なんで兄貴が桐生といるんだ?」
 「…別にお前にいちいち言う事か?」
 怜さんの声がちょっと硬い感じだ。
 とういか、二階堂 宗が明羅を知っていたのに明羅は驚いた。
 話した事はない。あっちは勉強もスポーツも出来て背も高くて、かっこいいし、大会社の御曹司と噂で、女の子にももてるし、学校でもかなりの有名人だ。
 明羅は学校でも浮いた存在でクラスで少しは話もするがどこか敬遠されていた。
 それでも明羅は別に問題はなかったが。
 
 「コンサートしたんだって?年1回だけの。それでピアニスト?」
 二階堂の言葉に明羅がむっとした。
 「別に十分だが?」
 怜がくすっと鼻で笑った。
 それに宗が鼻白む。
 どうやら怜さんと二階堂は仲があまりよくないみたいだ。宗の方が一方的に絡んでいるともいうが。
 明羅は学校にいる時のようにすっと顔から表情が消えた。
 「演奏活動もしないピアニスト様か」

 「怜さんの演奏を聴いたこともないのにそんな口利かないでくれる?」
 「え?」
 怜と宗が声を合わせて明羅を見た。
 その年一回をどれだけ明羅が待っていたか。知りもしない癖に何も言う資格など宗にはない。
 「怜さん、いこ」 
 明羅は怜の腕を引っ張って宗から離れた。
 「……驚いた。明羅は学校では女王様か?」
 「はぁっ?…………一体何言ってるの?」
 「だってこう、冷然と上から目線で宗に言ってる姿はまさに…」
 呆れたような視線を怜に向けると怜が肩を竦めた。

 「お前、宗にいつもあんな?」
 「いつもって?話したの初めてだけど?」
 「初めて?宗もお前を知っていたじゃないか」
 「そうみたいだね。びっくりした」
 怜が目を瞠った。
 そして怜が笑いながら明羅の体に抱きついてきた。
 「れ、怜、さんっ?」
 「明羅くぅん…惚れちゃう」
 「な、な……」
 かぁっと身体が熱くなってくる。怜はふざけてるのかもしれないけど、明羅には切実だ。
 すぐに怜が身体を離すのに明羅はほっと息をついた。

 「いや、まじめにお前…ああ。お前もおぼっちゃまだもんな」
 「は?何言ってるの?」
 「いや、宗ってわりと強引くんでしょ?」
 「……それ、怜さんもじゃない?」
 「あ?ああ!そっか。なるほど。俺で慣れてたか」
 「……多分…?……顔とかは似てないけど、雰囲気似てる」
 「よく言われる。…絡んでくるのもな、俺は別に何言われても平気なんだが…」
 「俺はやだ!だからCD出すとかコンサートもっとするとかしようよ?」
 「おまえ……それ自分が聴きたいだけじゃないのか?」
 明羅はむっと口を噤んだ。 
 家で独り占めして聴くのもいいけどやっぱり大きな会場の緊張の中で聴くのは格別だと思う。CDもヘッドホンして聴いたらきっと怜さんの音に包まれると思うのだ。

 「…そんな事ないよ?」
 可愛く見えるようにとわざと首を傾げて見せた。
 怜さんは可愛いとかって言ってくれるけど効くのかな?
 よく小さい頃はこれで大人達に可愛いと誉められたんだけど。
 「この…てめ、自分の武器知ってやがるな」
 怜が言葉を詰まらせた。どうやら怜さんには効いたらしい。
 嬉しい。怜は明羅を可愛いと思ってくれているんだ。
 思わず嬉しくてぎゅっと怜さんの腕に掴まった。
 怜さんが明羅の頭を撫でてくれる。
 はたとさっきからじゃれて歩いているのに恥かしくなって腕を外した。
 「ん?」
 「…絶対変、だよね?」
 男同士でって見られたら…。
 ぷっと怜が吹き出した。
 「お前ユニセックスな顔してるし大丈夫だろ?」
 回りをそっと見てみればデパートを歩く人たちは他人など全然気にしていない様子で明羅はほっとした。
 「今度女の子のかっこするか?」
 怜の言葉に明羅は怜の背中に拳を入れた。
 
 

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