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副会長はいじっぱり 43

43  如(YUKI)


 なるべく敦を見ないようにして如は出されたものを口に運んだ。
 敦が料理出来たなんて全然知らなかった。
 自分が知らない敦がいた事に驚きだ。
 普段は敦の家も如の家も母親が用意するし、今まで両家で出かけても親も一緒だったから敦が、なんて事は見た事もなかったのだ。
 しかも料理したなんて聞いた事もねぇし。
 なんとなく自分が知らなかったのが面白くない。
 でもそれを言うのも癪に障るので勿論言わない。
 「どう?」
 「……美味いよ」
 如が言えば敦が満足そうに笑う。
 「夜は何いっかなぁ…」
 敦がコーヒーカップ片手に呟く。
 如は顔を上げ敦を見た。
 大きい手。
 同じコーヒーカップ持ってるはずなのに全然違う。
 長い足を組んでる姿もどれもが絵になりそうな感じだ。
 外人だ、とか小さい頃はその髪の色で言われてたのに…。
 今はかっこいいでしかないんだからずるい。
 そんなのは、敦の髪が綺麗で気に入ってたのは、ずっと如だけだったのに。
 敦の背から朝の光が射しているので髪の色が金色に見える。
 目の色だって薄いし。
 ハーフとかクォーターだって言った方が誰でも納得するような容姿だ。
 「如?」
 敦がじっと見てた如に気付いて顔を上げた。
 すると敦のテーブルに置いてあった携帯が鳴り出した。
 「誰だぁ?……はぁ…また三浦だよ…」
 げんなりとした様子を見せるけれど敦は電話に出た。
 「はい?………はぁっ!?何言って!……テメ、いい加減にろ!………嘘だろ…あぁ、分かった。じゃ後でも一回電話よこせ」
 敦がぶちっと電話を切ると大きく溜息を吐き出して頭を抱えた。
 「……三浦、今から来るって。あ、如の携帯は?」
 「………自分の部屋かも」
 「ちょっと会長に連絡して欲しいんだけど。如、カイチョーの電話とかメール知ってる?」
 「…知ってる」
 三浦くんが来る?
 なんで?
 如は眉間に皺が寄りそうになる。
 「如、携帯とって……身体ひどいか。俺取ってきていい?」
 「いいけど。和臣に?なんで?」
 「なんでじゃねぇし!三浦今から来るって邪魔でしかねぇだろ。せっかく如と二人っきりなのに!カイチョーにさっさと引き取ってもらわねぇと!!!」
 「…………多分机の上かベッドの脇だと思う」
 如はあんまり携帯に誰からかかってくるわけでもないのでいつでも持ち歩くわけでもなかった。
 「じゃ、ちょっと取ってくる」
 敦が二階に上っていく。玄関から行けばいいのに、と如はくすっと笑ってしまった。
 なんだ…。邪魔、か。
 敦の言葉に如がほっとしてしまう。
 三浦くんが来る、の敦の言葉に思わず一瞬如もそう思ってしまった。
 敦もそう思ったという事にほっとしたのだ。
 「あ~ぁ……」
 決定だろう。
 「如っ!!電話!」
 ばたばたと敦が声を上げて階段を下りてくる。
 「誰?和臣なら出ていいよ」
 そう声をかけると敦の話し声が聞こえたのでやはりかけてきたのは和臣だったのだろう。
 「さっき三浦から電話きてウチに向かってるって。ただウチの場所知らないからって…はい。ああ、お願いします。あ、如に変わります…え?」
 「敦、別に変わらなくていいよ」
 敦が如の顔を見てた。
 「あ、はい。それじゃ…」
 どうせ和臣の用事は三浦くんの事なのだろう。
 敦が電話を切った。
 「よかったの?切って」
 「いいよ。別に俺用事ないし」
 「まぁ、カイチョーも三浦の事でだったらしいけど」
 「だろうね」
 「ったく人騒がせな!迷惑だっつぅの!」
 すると今度は敦の電話がなってる。きっと三浦くんなのだろう。
 敦が電話に出ると家までの道順を教えている。
 どうやらもう近くまで来ているらしい。
 はぁ、と思わず小さく溜息が漏れてしまう。
 素直で可愛い三浦くんが来るってだけで如は憂鬱になってしまう。
 「如?どうかしたか?…あ、身体、その…ひどい、か?」
 敦が聞いてくるのに思わずかっと顔が赤らむ。
 「くそっ。…んとに邪魔なヤツだな」
 がしがしと敦が頭を掻いた。
 「如、リビングの方行ったら?ソファの方いいだろ」
 「………そうする」
 ソファの方が身体が楽だろうと顔を赤くしながらも如は頷いた。
 「運んでやる?」
 「…いらねぇ」
 ちぇっ、と敦が舌打ちしたのに如は口端が緩みそうになった。
 
 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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