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副会長はいじっぱり 45

45  敦(ATSUSHI)


 如が話すのに敦は余計な事を言わずに黙っておく。
 「三浦くんは怖いって言うけど、嫌なんじゃないだろう?」
 「…嫌じゃないよ……でも和臣、意地悪言ったりするし。好きなの俺ばっかだし」
 「は?」
 如が呆れた声を出す。
 「………好きでもない相手追いかけてこないと思うけど?」
 三浦が首を振った。
 「だってアイツ俺様だから。好きもないし。俺のものだ、だけだもん」
 如が頭を抱えた。
 「そういう君はちゃんと好きって言った?」
 「……言ってない。そんな事言えねぇし!絶対」
 …会長といったい三浦はいったどういうことになってんだ?
 思わず如と顔を合わせた。
 「でも好きなんだろ?」
 如が話を続ける。
 「…そうだけど。きっと和臣はちげぇもん」
 「………ちゃんと話をした方がいいね。いい機会だからここでしたら?敦?どう思う?」
 「…その方がいい。だいたいこっちが迷惑だ」
 「…ごめん」
 三浦がしゅんと小さくなってる。
 しかし如は自分の言ってる事分かってるのかな?と敦は三浦の事より如の方に気を取られる。
 なので思わずじっと如を見てしまう。
 「…何?」
 「ん~、…なんでもねぇ」
 敦は三浦のいるここでは余計な事は言わない方がいいな、と首を振った。
 「…あの、なんで二宮副会長いるの?…幼馴染、っては柏木に聞いたけど」
 「隣ん家だから」
 如が何でもない事のように言った。
 「?」
 三浦が首を捻ってる。
 敦はぷっと笑った。
 「如ん家とウチの両親が一緒に旅行に出かけて俺ら留守番だから」
 「ふぅん…」
 三浦が頷いている。
 「如の部屋と俺の部屋一歩で行き来できる位近いから、いつもわりと一緒にいるし」
 「敦、別に余計な事はいいだろ」
 「そお?」
 如が眼鏡に手をかけている。
 「敦、お前ちょっと外見て来いよ?和臣まだか?」
 「ああ、じゃ見てくる」
 敦は如に言われてすぐに外に出てみると黒塗りの車がやってきて止まった。
 「柏木」
 車から降りてきたのは会長様だった。
 さすが財閥の御曹司様だ。高級車でご登場だ。でも少し焦っている感じだ。いつものように泰然としてはいなかった。
 「待ってましたよ。本当迷惑」
 「ああ、すまない」
 どうぞ、と敦は会長を家に入れた。
 

 敦の家のリビングに4人で顔を付き合わせる。
 「俺達いない方いいんじゃねぇの?」
 如がいつも敦に向ける口調で言ったのに会長と三浦が驚いた顔をした。
 多分家だから素が出たんだろうけど。
 「だな。如、俺の部屋行こ。三浦、いいか、きちんと話しろ!きちんとだ!」
 「う……はい…」
 「和臣。お前も。頭ごなしに物事言わない方がいいと思うけど?だから三浦くんが逃げるんだろ」
 如がだるそうに立ち上がるのに敦はそっと身体を起こすのを手伝うと如はそれを当然の様に受けている。
 思わず敦の顔がにやけそうになる。
 その顔を見せないように気をつけながら敦は会長に向かった。
 「会長、話終わったら声かけてください」
 「……分かった」
 会長が如と敦を見比べてふっと笑みを漏らした。
 コレ、もしかして気付いたか?
 敦は如に見えないように黙ってて下さいと唇に人差し指を添えると会長が小さく頷いた。
 やっぱし気付いたんだ。
 「優しく、です」
 小さく敦は会長の耳元に会長にだけ聞こえるように言った。
 「それと会長から口にした方簡単です」
 「…口に?何を?」
 「……順番があるでしょ?言葉。三浦は言えないって」
 ぴくっと会長の眉が動いてはぁと溜息を吐くと小さく頷いた。
 「悪い」
 「いえ」
 実を言えば大迷惑だけど、そこは謙遜しとく。
 「敦?」
 「はいはい」
 如の呼ぶ声に敦はリビングを出た。

 「如、だいじょぶ?」
 階段の下で敦は声をかけた。
 「身体だりぃよ」
 「うん。ごめんね。如何もしなくていいから」
 「……敦」
 「え?」
 珍しく如から手を広げて敦の首にぶら下がってきた。
 「ゆき、ちゃんっ?」
 びっくりして敦は声が上擦った。
 「……何もしなくていいんだろ?二階まで連れてけ」
 「勿論」
 如の耳が赤くなってるのが見えた。
 照れてはいるらしいけど、如がこんな事するなんて、と敦は驚いた。
 驚いたけど余計な事は言わないで如の身体を抱き上げる。
 「如…」 
 甘える如が嬉しくてぎゅっと抱きしめる。
 まさか如の方からこんな事してくるなんて。
 どうしたんだろ?
 いつもだったら絶対無理してでも敦の手なんか求めないだろうに。
 「ゆき…」
 そんなに身体が酷いのか?
 でも降りてきた時もちゃんと一人で降りてきたし、さっきだってキッチンからリビングに部屋移動も一人だったのに?
 敦は首を捻った。
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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