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副会長はいじっぱり 47

47   敦(ATSUSHI)


 まさか如の口から嫉妬が聞けるとは!
 敦の顔がにやけてくる。
 「なんだよ!この顔!」
 如が敦の頬をぐいと引っ張った。その如の顔は赤くなってる。
 そんな事されたって可愛いだけだ。
 「だって嬉しいから…如」
 三浦が来るって聞いて迷惑だと思ってたけど、如の嫉妬が聞けるなら万々歳だ。
 「だいたいなんだよ?お前、抱きついたり、キス、したり、しないって言ったのに!…昨日はっ…」
 「それは如が悪い。だって煽るんだもん」
 「煽…ってなんか、ないっ」
 「煽ってました。それにいい?って聞いたらいいって言ったじゃん」
 「言ってないっ!」
 「言ったよ」
 如はちょっと考える。
 「あ、あれは、そんな意味でいいって言ったんじゃねぇよっ」
 「…え?そうなの?でももう何言っても遅いし」
 確かにそうだけど。
 思わず如が黙ってしまう。
 「でも嫌じゃなかった?」
 「………ヤ、じゃねぇ、よっ」
 さらに如の顔から耳、首まで真っ赤になっている。
 すっかり如の記憶から学校で朝あったことが消えているらしいのにほっとした。
 あんな事があって如の気が滅入ってたというのも要因かもしれないけどいつの間にか如の中で自分はちゃんと幼馴染から昇格していたらしい。

 相変わらず言葉はないけれど、三浦が抱きついたのがおもしろくないって事はそういう事だろうし、昨日だって本当に嫌なら泣いて叫んで抵抗するはずだ。
 そんな事全然なかったし、今だって二階まで運べなんて首に腕巻いてくる位だし。
 …本当に身体がだるいってのもあんのかもしんないけど。
 でも、やっぱちゃんと言葉は聞きたいと思っても悪くはねぇよな?と敦は如を見た。
 「如」
 顔に手を伸ばして頬を撫でれば如が大人しくさせてるのに心臓を掴まれそうな位ぐっとくる。
 強がりな如だけど、繊細なのは知ってる。いつでも外では自分を作ってるし。
 それも如だけど、自分の前だけの素の如がやっぱり好きだ。
 キスしたら怒られっかな~?と思いつつ顔を近づけたら如の手が敦の顔を押さえた。
 「何すんだ?」
 「何ってキスしたいな~、と」
 「誰がいいって言ったんだよ?」 
 「……ゆきちゃん…」
 がくりとやっぱり自由にならないのに敦は肩を落とす。
 「敦っ!」
 そのまま敦は如の上に覆いかぶさり如を抱きしめた。
 「…こうしてるだけ。ダメ?」
 ダメと拒絶の言葉は出てこないのでこれはいいらしい。

 でもすぐに階下から会長の声が聞こえてきた。どうやら話し合いは終わったらしい。
 敦は如を離して立ち上がった。
 「如は?下行く?」
 「……行く」
 「抱っこしてく?」
 敦が腕を広げるとぴしゃりと叩かれた。
 「いらねぇ」
 甘えただったのは一瞬だけか。
 でもそれでも意地っ張りの如にしたら画期的な事だ。
 それだけ我慢できなかったという事だ、と敦は思わず嬉しくて口端が笑ってしまいそうになった。
 「なんだよ?」
 如がむっとしたように口を尖らせた。
 「ん~~ん。なんでもない」
 手を出せば如はそれを自然に取る。
 身体を起こしてやって。
 …ほんとはこのまま滅茶苦茶にしてやりたい、という思いまで出てきてしまうのを押さえた。
 

 会長と並んで座ってる三浦の顔が真っ赤になっていた。
 会長は涼しい顔。
 「迷惑をかけた」
 「………それで?解決したんでしょうね?」
 如がいつもの学校での口調になっている。
 「ああ」
 うっすらと笑みを浮べる会長の顔を見れば満足そうなので敦も安心した。
 「…親御さんは?」
 会長が敦を如を見て不思議そうに聞いてきた。
 「旅行に行っていない…っす」
 「ふぅん」
 会長がにやりと敦を見て笑う。
 「それは邪魔して本当に、悪かったな」
 「………」
 敦が如の顔を見ると如が複雑そうな顔をしていたのに敦はくすっと笑ってしまった。
 邪魔、と思ったって事だろう。
 「解決したならいいですけどね」
 「…柏木、あの、フクカイチョも…ごめんなさい…」
 三浦が小さくしゅんとして言った。
 「ああ、それと赤井沢の事だが三人は自主退学にしたから安心していい」
 「………」
 何でもない事のように会長が言った。
 自主退学にしたから……ねぇ。
 敦は少しだけ苦笑を漏らし、会長に頭を下げた。
 
 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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