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副会長はいじっぱり 49

49   如(YUKI)


 明日はもう親が帰ってくるという日の晩。

 如はずっと敦の家に、部屋にばかりいた。
 遊びに行ったり買い物行ったり以外は敦の家だ。
 敦が普通にご飯炊いたりパソコンでレシピみてそれを作ったりして食わせてもらって。
 ほんと何でも出来るやつだなと改めて如は自分の無能さが嫌になってくる。
 見た目も背も高くてかっこよくて、頭もよくて、性格は……如に対してはちょっとなとこもあるけど、基本優しいし、親切だから普通だったら文句なしだろう。

 ダイニングに並んでテレビ見ながらご飯を食べていた。
 流れてるのはニュース。
 ニュースだけど、その内容に敦と顔を合わせた。
 「これ…」
 二人で声がハモる。
 現職議員の収賄のニュースだ。
 その議員の名前が赤井沢だ。
 「………会長……?」
 「…かも。和臣の家、政界にも力持ってるらしいし」
 「…う、わ………まじ、で?」
 こえ~、と敦がテレビにまじまじと見入っている。
 
 その敦は本当にアレ以降何もしてこなかった。
 コイツは一体何を考えているんだろう?
 如から好きって言えとか、シテって言えとか。
 そんな事言えるはずないのに。
 三浦くんに対して嫉妬してたのまで言わせられたのに、コイツはもう分かってるだろうに。
 なんで?
 こうして一緒にいるのは普通。
 部屋に一緒にいるのだって小さい頃から変わりはない。
 一緒に寝てるのだって小学校の頃はほぼ毎日だったし。
 中学校になってからはさすがになくなったけど。
 高校になったって変わりがないはずだったのに、なんでこんなに変わった?
 なんとなく物足りないのはなんでだよ?
 キスもしない。
 本当に一緒にいるだけ。
 これじゃ小学校の時と変わりない。
 いや、それでいい、んだろ?
 
 テレビに見入ってる敦の横顔をみる。
 正直学校であった事なんかすっかり忘れてた。
 今のニュースで赤井沢の名前が出て思い出したくらいだ。
 思い出せばやはり苦く不快な思いが思い出されるけれど、そんなものはすでに払拭されていたのだ。
 敦が、全部…。
 それほど強烈だったのに。
 如はただぼうっとして敦を見ていた。
 「如?どうした?」
 「え?あ、…なんでもない」
 敦がいつの間にか如を見ていた。
 その態度はいつも変わらない。
 好きっていう時だって、さらりといつも自然だ。
 余裕がないと言ったアノ時は敦の心臓もどきどきしてたけど、それ以外の時はいつだって敦は普通でうろたえるのはいつも自分だけ。
 三浦くんの事だってバカみたいに面白くなくて。
 図書館で絡まれそうになった時だって、朝のアレの時だって敦はいつでも冷静だ。
 テストで満点なんて無茶な事言ったのにも敦はそうしようとしてるのだ。
 本当は別に満点なんかいらない。
 何にもいらないんだ。
 如が素直じゃないだけだ。
 三浦くんに対して面白くないと思える位にもう敦はただの幼馴染じゃなかったって事だし、敦がキスするのだって勿論嫌だなんて思った事なんてなかったし、抱かれたのだってとんでもなく恥ずかしいだけで嫌だったんじゃない。
 敦だって分かってるはずだ。
 それなのに何もしない。
 
 「如?」
 如が顔を俯けると敦が伺う様に顔を見てくる。
 「…なんでもねぇよ」
 「…そう?……な、赤井沢がいなくなったなら図書館また行けるだろ?」
 「ああ、そうだな…」
 「じゃ、昼はあそこな?如、俺行く時以外寝るなよ?」
 「……お前も寝てただろ?お前こそ寝るな」
 「え~?俺は別にいいだろ。如はダメ」
 「なんでだよ」
 「如が美人さんだから!絶対襲われる!」
 「はぁ?んなわけねぇだろ」
 「あるって!とにかく如はダメ」
 「敦がいれば問題ないだろ」
 「……まぁ、そうだけど」
 「どうせ敦が来ないならあそこまで行かなかった、し…」
 ヤバイ…別にここまで言う事なかった。
 「あ?……俺いたから如、来てた、の?」
 だって学校じゃろくに会えなかったから、なんて…。
 帰ってくりゃいつだって隣に敦がいるのにどんだけだよ。
 「……お前が来てって言ったんだろ」
 「そうだけど、さ」
 なぁんだ、と敦ががっくりした顔をする。
 そうだよ、お前がいたから行ってたんだ。
 なんて言えるはずない。 
 
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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