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副会長はいじっぱり 50

50   如(YUKI)


 「1年の体力測定の1位は柏木だ」
 「は?」
 生徒会室で和臣がデータを見ながらそう言ってきた。
 敦が1位?
 「ほぼ全部で運動部のやつらを抑えてる。中学ん時は何部だった?」
 「…サッカー。サッカーも上手かった。2年でレギュラーだったから」
 「ほう。ヤツはなんでも出来るんだ?頭もいいようだし」
 和臣が感心したように言ったのに如は複雑だ。
 そう、敦はなんでも出来るんだ。料理だって出来るし。
 「でも残念ながら俺よりは低いな」
 くすっと笑いながら満足そうに和臣が言うのに如も何故かほっとする。
 「俺がいなかったら学校のカリスマ的存在になれたかもしれないのに運が悪かったな。いや、あいつはそんなモノになりたいとそもそも思わないか」
 そうだろう、と如も内心で頷く。
 今回のこれだって如が真面目にしろ、って言ったからその結果であって如が言わなかったらきっと手を抜いていただろう事はわかる事だ。
 容姿が容姿だったからか目立つのを敦は嫌っていた。

 手を抜くようになったのは小学校からだ。
 小学校の時は敦は他の子より小さくて、テストでいつも100点ばかりとってたら外人のくせにとか言われてたらしい。
 小さい敦がちょっとだけそんな事を言ったことがあったと思い出す。
 いつも泣いて如にすがってきてたけど敦は余計な事はあまり言わなかったのだ。
 もう抑える事はないと思う。
 思うけど…。
 如はふると頭を振った。

 その敦は三浦くんと一緒に図書館で生徒会の会議が終わるのを待っているはず。
 如の問題は片付いたけど、サッカー部に目をつけられているという三浦くんの方はまだ片がついてないらしい。
 それでも三浦くんはすっかり落ち着いて敦に抱きついたりもなくなったのに如はほっとしていた。
 きっと和臣が何か言ったんだろうとは思うけど。
 ちらっと和臣を見る。
 何にでも秀でていて誰でもそのカリスマ性に惹かれるだろう。人を自然に従わせる。従わずにいられない。

 そんな和臣は三浦くんが大事らしい。
 そしてその三浦くんを任せるほど敦は信用されているらしいのが不思議だ。
 秀邦は自主性を重んじていてあまり先生の干渉が少ない。
 というのも各界の実力者の子息が多く通うからあまり口出しできないという事なのだろうけれど。
 とくに和臣はその中でも群を抜いているし和臣が学校を牛耳っているといってもいい位だ。
 赤井沢の例がいい例だ。
 そりゃ先生達もご機嫌取りにならざるを得ないだろう。
 
 「じゃ、ご苦労。続きはまた今度だな。二宮、図書館に行こうか」
 和臣が当然の様に声をかけるのに如は頷く。
 すでに4人でいるのが普通に見られていた。
 それでなくとも一人でいたって目立つだろう和臣と敦が一緒にいたら目立たないはずはない。
 それに一応副会長してる自分に可愛いといわれてる三浦くんだ。
 
 「おや…」
 和臣と図書館の入り口から顔を覗かせると敦の茶色の頭が見えた。
 ノートを広げて勉強していたらしい。
 見えたけど…。
 隣にいるのは三浦くん。
 それはわかる。
 でもその反対側の隣に別な子が座って敦に顔を寄せていた。
 「また厄介なのに目をつけられたな…」
 「厄介?」
 如は和臣の言葉に眉を顰めた。
 「持ち上がりじゃないから二宮は知らないだろうけど、あれは翔太が入るまでずっと学年のアイドル扱いだったやつだ。今までずっとちやほやされてきてすっかり天狗になってるからな」
 はっと小さく和臣が嘆息する。
 「小ずるいとこがあるからな…気をつけろ。柏木は多分まぁ、大丈夫だろうけど」
 はっと顔を上げた敦がドアの所に立っていた如と和臣に気付くと嬉しそうに表情を変える。
 三浦くんに耳打ちしてさっさとノートを片付け、敦が隣にいた子に手を挙げ挨拶してすぐに二人が廊下に出てくる。
 「待たせたな」
 「いえ、それほどでも。如?」
 和臣が口を開いたのに敦が返事している脇で如は視線を感じると、敦の隣にいた子が如を睨んできていた。その視線を如は顔色も変えずにただ受け止めた。
 「どうかしたか?」
 敦が如の顔を覗きこんだ。
 「…いや、別に」
 「……あいつか?」
 敦が振り向く。
 「アイツ嫌~い」
 三浦くんがむっと口を尖らせた。
 「まぁ…確かに。誉められる態度じゃねぇよな」
 敦も頷いてる。
 「あからさま!ばっかみたい!柏木なんで話すんのさ」
 「…って言われてもな…」
 敦が困った様に頭をかいていた。
 
 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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