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副会長はいじっぱり 51

51   如(YUKI)


 何がどうしたんだろ?と如がきょとんとした。
 「フクカイチョ…気をつけてね」
 気をつける?
 三浦くんが大きな目で如を見ながらの言葉に首を捻りながら敦を見た。
 「何を?」
 「ん~…何って言われてもな…。俺もアイツが何考えてんのかよく分かんねぇし」
 4人で昇降口に向かって歩きながら話す。
 すれ違う生徒が和臣と如に挨拶してその後ろを歩く敦と三浦くんをチラ見していく。
 三浦くんはそれが気になるみたいで落ち着かないみたいだけど敦は堂々として意にも介してないみたいだ。
 「アイツ俺が柏木の横いたって無視よ!無視!別に話なんかしたくもねぇけど!ムカつく」
 きぃっと三浦くんが喚く。
 無視?
 「そのうち厭きりゃ見向きもしなくなるだろ」
 敦が肩を竦めていた。
 
 和臣と三浦くんと別れて敦と歩く帰り道。
 もう行きも帰りも敦と一緒が普通だった。
 「ねぇ、如は三浦のサッカー部のって話詳しく聞いてる?」
 「いや聞いてない」
 「そっか……」
 敦ががくっとしてる。
 「昼休みがなぁ…」
 ぶつぶつと敦がぼやいていた。
 図書館で二人になれないのが嫌らしい。
 「……別に敦は平気だろ」
 「え?俺平気じゃないけど」
 嘘だ。
 全然敦は平気だろう。
 家に帰ったって敦は触ってくることもしない。

 結局ゴールデンウィークのあの時以降敦は全くそんな気は見えない。
 如の方から言うまで我慢するなんて、どうせ出来ないと思ってたのにもう6月になろうとしている。
 6月になれば前期テストだ。
 こいつ本当に満点取る気か?
 如は勉強してるとこなど見た事なかった敦が教科書を真面目に開いてる姿を目にしてるのに訝しげに見てしまう。
 約束は約束だけど。
 好きなようにって…。
 思わず1回だけされた事を思い出してしまう。
 あんまり細かに覚えてなかったけど敦の手の感触とか身体の重さとかが鮮明に残っているのに如はぞくりとして息を飲む。
 思い出すな。
 どうせ敦は血迷っただけだ。
 きっと。
 だってそうじゃなかったら毎日こうして一緒にいるのに何もしないなんて信じられない。
 自覚してしまった如はたまにくっつきたくなるのに敦はそうじゃないんだから。
 「如?」
 「ああ?何?」
 「……どうかした?」
 敦が如の顔を覗きこんでくる。
 「いいや。別に」
 「……なんか最近の如ってそれ口癖みたいだ」
 敦が眉根を寄せた。
 「なんでもないから言ってるだけだろ」
 苛立つ。
 飄々としてる敦に。
 こんなに振り回しておいて敦は余裕なんだから。
 如は思わず唇を噛んだ。
 敦がキスしたり抱いたりしなけりゃこんな風になんかならなかった。
 そんな事ただの八つ当たりだって分かってるけど。
 もうただの幼馴染に戻れないなんて分かってるけど。
 それでも自分からなんて言えるはずない。
 そしてまったく触れても来なくなった敦にさらに言えるはずなどない。
 自分から言って敦に今更何言ってんの?なんて言われたら絶対死んでしまいたくなる。
 そんな事は敦は言わないだろうけど…。
 悪い方に考えが向かってしまう。
 こうして毎日いるのだって本当はどう思ってるのか。
 そういえば前は好きだとかもさらりと口にしてたのにここ最近全然聞いてない。
 
 やっぱり素直じゃないし、意地張ってる如にもう敦は気持ちが変わってるのか?
 ただ幼馴染で家が隣だしこうしているだけか…?
 でも敦は勉強してるし…。
 満点取ったら好きにしていいを何度も確認してくるし…。
 「……わけわかんねぇ」
 「如?」
 「ああ!?なんでもねぇよ」
 「…………何怒ってんだ?如、口悪いってば」
 「敦しかいねぇからいいんだって言ってんだろっ」
 如はすたすたと早歩きで家に向かう。
 コイツの事なんか考えるな。
 眼鏡を押さえながら敦の顔を見ないようにして如はさっさと敦を置いて自分の家の中に入っていった。
 一体敦が何を思って如をどうしたいのかなんて全然分からない。
 いつもふざけてないと言うけれど、平気そうな敦を見ればやっぱりそんなに好きだなんても思えない。
 如はもうこんなに気にしてるのに。
 玄関のドアを閉めて背中をついて頭を片手で押さえた。
 「…ばかみたいだ…」
 自分が滑稽だった。
 
 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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