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副会長はいじっぱり 52

52   敦(ATSUSHI)


 はぁと敦は溜息を吐き出して自分の家に入る。
 すでに如はすたすたと隣の自分の家に入っていってしまった。
 何か機嫌を損ねてしまったらしいのになんだろ?と敦は首を捻る。
 ずっと如がなんとなく苛立っているようだった。
 聞いても何でもないって言うし。
 それにどうもそれは敦が原因らしい。
 今もイライラした声で行ってしまった。
 あんまり如の苛立ちというのは見た事なかったんだけどな、と敦は頭をかく。

 敦が高校に入ってから如はどうも変わった。
 それが自分がした事のせいだって分かっているけれど。
 だってただの幼馴染だなんてもう我慢できなかったから。
 「うまくいかねぇな」
 敦は玄関で靴を脱いで自分の部屋に向かう。
 別れたはずの如はこの自分のすぐ隣の部屋にいるはず。
 制服脱いで着替えでもしてるだろう。

 如がなんとなく変だけど、それが自分の所為で、意識してるから、ならいいんだけど。

 どうにもイライラさせてばかりのようでそれがどうしてかまでが分からない。
 敦は制服を脱いでベッドに横になった。
 うつ伏せになって思い出すのは如のアノ時の姿。
 それだけでもうすぐに如を手に入れたくて仕方なくなる。
 頑張って我慢して。
 如だって嫉妬までする位だから敦を好きなはず。
 幼馴染としてだけじゃないはず…。
 そう自分に言い聞かせて。
 やっぱり満点とって如におねだりが一番早いかも。
 言って欲しいと言ったら一応頑張ってるとこも知ってるから言ってくれるかもしれない。
 それを期待する事にしよう。

 6月に入って衣替え。
 上の学生服がなくなってシャツだけだ。
 詰襟の学ランは如をストイックに見せてたけどそれがなくなって明るくみえる。
 衣替えしてすぐに三浦の問題が片付いたと会長から報告があった。
 けれど放課後生徒会の用事がある時は敦は三浦とやっぱり生徒会の仕事を終わるのを待つ。敦は如を、三浦は会長を待つために。
 サッカー部の問題もどうだったなんて三浦に詳しく聞く事もしなかったけれど、サッカー部だった2年生の1人が退学したらしいという噂にやはり何事かはあってそしてそれは会長がした事だろうと敦は検討をつけている。
 それをわざわざ聞いたり、問いただしたりなんてことはしないに限る。

 今日は生徒会の仕事がそんなに時間がかからないと言われていたので教室に残ってた。
 教室に敦と三浦以外はもういない。
 「最近はもうずっと大人しいな」
 くすっと笑いながら言うと三浦が真っ赤になった。
 「だって、和臣、意地悪しなくなった、から。いや意地悪は言ったりするけど…前と違う、し」
 「よかったんじゃね?」
 「うん……」
 どうやら会長と上手くいっているらしいのに羨ましい。
 敦はオアズケ喰らいまくりなのに。
 といってもこれは自分で望んでやってることだから仕方ない。
 本当は別に我慢しないでいつでも手出していいとは思うのだが。
 だって如も嫌がってなかったし。
 でも我慢だ。
 意地っ張りな如は切羽つまらないときっと言葉を吐き出してくれないだろうから。
 でも辛い。
 すぐ横にいるのに何も手が出せないのが堪える。
 はぁ、と小さく溜息を漏らした。

 「柏木?どうか………げ!また来たよ」
 嫌そうな三浦の声。
 何故かここ最近敦に付き纏ってくるやつ。
 五十嵐 駿也(しゅんや)がやってきた。
 「柏木!」
 つかつかと教室に入ってくる。
 五十嵐は同じ1年だけどクラスが離れてて階が違うので、普通ならそんなに会わないはずなんだけど、なぜか敦の周りに出没する。
 三浦はいないものとして綺麗に無視。
 敦と三浦が話していても全然気にしない。
 いっそ清々しいとまでいえそうな位の無視っぷりだ。
 五十嵐は敦に誰を待ってるとかも聞きもしないで、敦の隣の席のやつの椅子を引っ張って敦の目の前に座る。
 誰でも敦が生徒会に副会長と幼馴染だという事はすでに知れ渡っている事で朝も帰りも一緒では当たり前だ。
 そんな敦を分かっているだろうに、この五十嵐は一体何を考えているのか全然敦には分からなかった。
 どこからともなく現れて敦の隣を陣取り、そして如が来れば消える。
 何が目的なんて全然分からなかった。
 「柏木お昼はどこに行ってるの?なんで内緒なのさ?」
 「…別に内緒じゃねぇけど」
 どうしても返事は戸惑ってしまう。
 三浦に助けを求めるけど完全無視な三浦が口を挟んでも綺麗に無視されるだけだ。
 ほんとどうしたらいいのかと三浦と敦は顔を合わせた。
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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