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副会長はいじっぱり 53

53  敦(ATSUSHI)


 「なんでいつも二宮副会長を待っているんだ?ただの幼馴染なんでしょ?」
 「まぁ、そうだけど。別に五十嵐に言われる筋合いはないな。俺がしたくてしてることだし」
 なんかさすがに敦もイライラしてくる。
 こいつが何を目的にしてるか分からないから。
 そんなくだらない質問を次々に五十嵐から向けられる。
 よくも飽きずに聞いてくるよな…といつも三浦と呆れる。

 「…敦?」
 ドアから如と会長が姿を見せたのにほっとした。
 「じゃ、五十嵐」
 すかさず鞄を持って三浦と二人の方に逃げるようにする。
 「助かった…」
 ぽそりと如に耳打ちする。 
 「俺、滅茶苦茶睨まれてんだけど…?」
 「え?」 
 如の言葉にくるりと敦が振り向くと醜い顔の五十嵐がいた。
 本当に如をいきなり睨んでいる。
 「…まじで…。うわ…どういう事…?」
 「アレは小学部の頃からずっとこの学年の女王様扱いだったからな。いい男は自分のいいなりになると思ってる」
 「は?意味分かんねぇんだけど…」
 会長の説明に敦が眉を寄せた。
 「お前達は外部組だからな。学年1位の可愛い座は翔太に奪われ、焦って新しく学年1位のいい男を手に入れたいんだろ」
 「はぁ?……やっぱ訳わかんね。ナニソレ?1位って、それってもしかして俺ってこと?」
 「当然だな」
 敦は頭を抱えた。
 「迷惑なだけだっつうの。これだから男子校って!男に言い寄られて何が嬉しいはずあるかっ」
 会長がくっと笑う。
 「仕方ない。ずっとそうしてここにいたから今更変えられないんだろう。ここの学校にいる間は閉塞的だからな。そして特に小学部からいるやつらは家が金持ちのちやほやされて育った坊ちゃまだから。まぁアレは小物だからそのうち諦めるだろう。直接二宮にも何かするってほどの度胸もないから」
 「そうですか。ならいいけど」
 会長が言うなら間違いはないだろう。
 「ウチの傘下のグループの社長の息子だ。俺の事はよく知っているからな。柏木がちゃんとしてれば問題ない。ま、多少煩わしいだろうが」
 「如に問題ないなら別にいいや」
 敦は会長の言葉にほっとする。

 「会長はああ言ってたけど如、気をつけてね」
 「ああ?何言ってんだ?気をつけるのお前のほうだろ。いつでもつきまとわれて」
 「まぁ…ウザイけどとりあえず害はねぇし」
 「なんでそうお前は余裕なんだよ!」
 如がまたイライラしているようだ。
 会長達と別れて家までの道のり。
 毎日如はイライラしてる。
 「如…?…俺、別に余裕ってほどじゃねぇけど…」
 特に如に関してなら。
 すでに切羽詰ってると言っていい位なんだけど、そんなのカッコ悪くて如に見せられなくてやせ我慢してるだけだ。
 自分がキレるのが恐くて如の部屋にも行けない状態だ。

 そのまま無言で家までつくと如が敦の腕を引っ張った。
 「如?」
 「ちょっと来いっ!」
 部屋は何かと我慢出来なくなってまずいんだけど…。
 そう思っても滅多にない如からのお誘いを断れるはずなどない。
 いつも用事がなければ如からは来ないし、ゴールデンウィーク終わってからそれこそ如は敦の部屋に来ていない。敦から如の部屋には行ってたが、ほんの少しだけ。
 勉強するから、と切り上げれば如も何も言わなくて、言い訳は全部勉強のせいにしてた。
 「敦っ」
 「はい」
 机の椅子に座らせられて如が敦の肩に手を置いた。
 如の顔が目の前にある。ちょっと顔を近づければキスできそうだ、とまた考えはそっちに向いてしまう。
 「ヤなんだけど!」
 「…はい?」
 「どうにかしろ!」
 「ええと…?何が?」
 「アイツだ!敦に付き纏ってる!」
 「………五十嵐?」
 「そう!!」
 如が肩から手を離して顔を少し赤くしながら眼鏡に手をかける。
 「だいたいお前がちゃんと相手なんかするからわりぃんだ!」
 「分かった。どうにかする」
 敦は即答する。
 そりゃあ如にそう言われたらそうするしかないでしょう。
 すると如はよし、と満足そうに笑った。
 如がいらいらしてたのはこのせいか?
 なんだ、そうか、と敦は顔がにやけた。
 
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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