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副会長はいじっぱり 54

54  如(YUKI)


 分かった、と言って敦は窓から自分の部屋に帰って行った。
 なんだよ…。
 もうずっと敦は触ってこない。
 自分から言う…?
 そんなの言えねぇ!…恥かしくて。
 ゴールデンウィーク中なんて朝から晩までずっと一緒だったのに。
 ベッドだってずっと一緒に…。
 チクショー。
 それが満足なんて…。

 敦が自分の部屋行ってからもひとりで如は悶々としていた。
 分かったと敦が言ったのでいくらか苛立ちは治まったものの、それでもやっぱり時間が経つとまたイライラしてくる。
 時計を見るともう11時。カーテンの隙間から隣を見ればまだ電気がついている。
 如は窓を開けた。
 「敦」
 呼ぶとすぐに敦が窓が開ける。
 「どうした?」
 「寝らんねぇ。そっち行く」
 「え?…ああ」
 ちょっと困ったような顔をする敦を如は見なかったことにする。
 電気を消して渡ろうとすると敦が手を伸ばして如を掴んで受け止める。
 それが嬉しい、と思えてしまうんだから仕方ない。
 如は困った感じの敦を無視して敦のベッドに横になった。
 「……寝ねぇの……?」
 「…寝ます」
 敦がすぐにぱたぱたと机の上を片付けるとベッドに乗っかってきたので如は端に寄ってスペースを作った。ベッドの端に敦が座って頭を抱えてる。
 「あ~…くそ……如、ずりぃよ。我慢してんのに!抱っこしていい?キスしていい?」
 …したくないんじゃないのか?
 「さっきお前困った顔しただろ」
 「困るに決まってんだろ。我慢が限界なのに。如を目の前にしてどこまで我慢できっか俺でも分かんねぇもん」
 座ったまま敦が顔を近づけてきて軽くキスする。
 「あ~……ゆきちゃん…」
 そのまま如を抱きしめた。
 如の心が満たされてくる。
 やっぱり敦が足りなかったんだ。
 敦の顔が首筋にかかって息がかかるのがくすぐったい。
 敦の柔らかい髪を撫でた。
 なんだ、敦は我慢してただけか。
 如から言うまで、というのに敦が我慢してただけなのが分かってほっとした。
 「電気」
 敦がリモコンで電気を消すと如の隣に身体を横たえるのに如は背中を向けた。
 「如」
 敦が背中からぎゅっとくっついてきて如の身体にぴたりとつけてくる。
 「如……今日のなしね」
 「あん?何が?」
 「なかった事にしといて。俺の我慢継続中」
 如はぷっと笑った。
 そんなに言って欲しいんだろうか?
 でも最近は敦だって言ってないから如も敦からの言葉を聞いてない。
 確かに聞いてないと不安かもしれないと初めて思った。
 言わねぇかな、と思ったけど敦はやっぱり言わなかった。
 それにちょっとがっかりしてしまったんだから言葉は大切かも、と考え直す。
 好き。
 ……やっぱそれを言うのは超絶に恥ずかしい。
 でももう確かに好きなんだと思う。
 だってこうしてればイライラもなくて幸せな感じがする。
 そのうち…。
 多分…。
 背中に敦の体温があるのに安心する。
 イライラも治まって如はとろりとすぐに眠くなってきた。


 「如、ゆきちゃん。起きる時間」
 「ん…?」
 耳に敦の声が聞こえてうっすらと目を開ける。
 久しぶりにぐっすり眠れた気がする。
 「…敦いるとよく寝られる…」
 ふわ、と欠伸しながら如が起きた。
 「え~…俺は寝らんねぇけど…」
 「え?そうなのか?」
 「そうでしょ。もうイタズラしたくてしたくて必死に我慢した」
 はぁ、と敦が溜息をついている。
 「…そっか。じゃ来ない方いいのか?」
 「いえ。我慢すっから来て?」
 「……どっちなんだよ」
 「だってやっぱ如抱っこして寝たい」
 それに返事もしないで如は起きだして自分の部屋に戻る。
 敦もついてきて必ず手を差し出す。
 「じゃ、後で」
 部屋に戻って如は顔が緩む。
 なんだ、我慢してただけ。 
 敦も一緒にいたいのだと分かればイライラはもうすっかりなくなっていた。
 三浦くんの時でも分かってるけど、どうしてこんなにほんの少しの事で苛立ったり嬉しかったりするんだろう?
 敦なんかずっと一緒だったのに、それでもまだ足りないなんてなんで思うんだろうか。
 もう10年以上も一緒にいるのに。よく飽きないなぁと思う。
 まぁ、それのほとんどは幼馴染としてであって、如の知らない敦だっていたんだから一概には言えないけれど。
  
 
 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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