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副会長はいじっぱり 58

58   敦(ATSUSHI)


 毎日如が夜来て隣で寝て、キスはするけど手は出せなくて、敦は身悶えしてた。
 はぁ、と溜息を吐き出すと三浦がどうした?と敦の顔を覗きこんできた。
 「テストが心配?」
 「ああん?いいや。……あ、でもそれもちょっとは…」
 なにしろ満点とらねぇと如に手出しできない。
 じっと三浦を見れば顔色の色艶がいい。それにちょっと落ち着いたしどこか色気も見えるようになった。会長に可愛がられてるんだろう。
 ……想像もしたくないけど。
 「お前は充実してそうね?」
 「え?ああ……まぁ……。でもテストが…和臣に毎日ベンキョさせられてる」
 げんなりした様子の三浦にぷっと笑った。
 「俺入試もぎりだったからさ…マズイんだよね」
 「ギリ?」
 「そう…ああ~!頭振ると覚えた事がこぼれ落ちそうで怖い」
 「んなわけあるか」
 そう言いながらも三浦は幸せ色が見える。
 まぁ、それはいい事だ。こいつらが上手くいってれば如と会長が一緒にいたって安心出来るから。
 「なぁ、柏木ってまだそのフクカイチョとお付き合い、してねぇの?」
 「してないね」
 一応。正式には。
 「………それってどうなの?」
 「ああ?お前にだけは言われたくねぇけど?」
 「だと思うけど!………ほんと柏木ってフクカイチョ以外どうでもいいのな」
 「当たり前だ」
 それは堂々と頷ける。
 「別に正式にお付き合いしてなくたって如は俺のもんだし。いいんだよ」
 「……言い切れんのがすげぇよな……」
 だって毎日如から敦のベッドに寝に来るんだ。
 期待して!というのは多分ナイだろうけど!如の事だからきっと敦がどこまで我慢できるか見計らっての事だろうけど。
 でも本当に如はよく眠れるらしい。
 ここずっと如の機嫌がいい。
 ちょっと前までは毎日イライラだったのに、如からキスしてくれるのもしばしばでもう敦は自分を持て余していた。
 隣に毎夜手を出したい相手がいて、手を出せなくて、熱が籠もったって出せなくて。
 精神的にいいのか悪いのか。
 身体的には絶対悪いと断言できる。
 「早くテスト終わってくんねぇかな…」
 はぁ~と敦が溜息を吐き出すと三浦はヤダ!と騒いでいた。

 
 「嘘だろ………」
 敦は返ってきたテストに呆然とした。
 そしてがっくりとして目を覆った。
 「終わった……」
 ケアレスミスもいい所だ。
 返ってきたテストは最後の教科。英語の答案。
 点数は99点。
 ピリオドのつけ忘れだ。
 なんでこんなミス!?
 もうこの世の終わりのように敦はがっくりとうな垂れた。

 「なぁ!なになに!!?お前英語悪かったの!?」
 喜んだ様子で三浦が休み時間になった途端に寄って来て、答案を出したまま呆然としてた敦の手元を覗き見る。
 「はぁっ!?99~~~!!!何コレ!」
 「ああっ!?お前うるせぇ!……はぁ……」
 今までない位に勉強したのに!答えは満点なのに!
 …ピリオド一つ。
 まだ答えを間違った方が諦めがつく。
 でもきっと如の事だから満点じゃない!って言いそうだ。
 いや、絶対言う!
 「あっ!柏木!」
 「ああん!?」
 三浦に呼ばれてちょっとイラッと声を立てた。
 「フクカイチョ、来てるよ?」
 「え!?」
 休み時間なのにわざわざ如が教室まで姿を見せた。
 この答案見せるのか?
 これまで返ってきた分は全部満点であと残すは英語だけって如も分かってて、わざわざ来たんだからこれを見に来たんだろう。
 敦は答案を持って廊下に出た。
 「んっ!」
 仕方なく如に答案を渡し、如はその点数を見て目を丸くし、マイナスされた箇所を見つけていきなり笑い出した。
 口を手で覆っていきなり爆笑してる如の姿に敦の教室のクラスメイトも廊下を歩く生徒も皆が如を見ている。
 肩を震わせて涙まで浮かばせている如に敦は思い切りむっとした。
 如が答案を敦に返してそして敦の肩の辺りをぽんと叩いた。
 「敦!がんばったな!………ピリオド……で1点……先生も見逃してくれりゃよかったのにな……」
 笑ったまま如が自分の教室に帰っていく。
 きっと如はほっとしてるのかもしれない、と思えば敦はこの答案が憎くなってくる。
 毎晩耐えたのに!
 もう二度と!一生!ピリオドを敦は忘れる事はないだろう!
 
 
 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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