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会長様は俺様閣下 6

6   和臣(KAZUOMI)


 くったりと意識を手放してしまった翔太の身体を和臣は寝室に敷かれた自分の布団に運んだ。
 「離れるってどういう事だ?」
 目を閉じている翔太に問うけれど、意識がないので翔太は勿論答えない。
 恐くて和臣から離れられないのが嫌だと?
 わざわざそうなるようにずっとしてきたのに。
 初めて一条の家に来た時の翔太はずっとびくびくしてた。
 離れで人の気配もなくて、それが余計に翔太の恐怖を煽っていたのだろう。

 …お化けが出るんだ。
 最初はただのイタズラでそう翔太に言ってみた。
 すると案の定、翔太はぶるぶる震えだして和臣にぴったりとくっ付いて離れなくなった。
 それが満足だった。
 慣れてくるとその話題を持ち出して、何度も何度も繰り返した。

 …あれ?なんか今戸が開いた音したね。
 …誰か来たと思ったんだけど。
 家鳴りの音まで利用して。
 その度に翔太が和臣から離れられなくなるのだ。
 大きくなってくると段々慣れて平気になってきたのに何度舌打ちしたことか。
 刷り込んで刷り込んで、翔太を守るのは和臣だけだと。
 そのおかげで今日みたいに翔太が恐怖に包まれた時助けられるのは和臣だけになったのだ。
 和臣は離す気など毛頭ないのに離れる?
 なにをふざけた事を言ってるのか。
 
 まったく神経を逆なですることばかりを平気で翔太はするのだ。
 学校が始まったばかりで出来た友人があの柏木?
 今年の1年のなかでは飛びぬけてるだろう。
 容姿は和臣とは正反対と言っていいような甘い容姿だ。
 王子様という言葉が当てはまりそうなヤツ。
 チャラいのかと思っていたが今日目の前で見た柏木は実際チャラくはなかった。といって真面目かといえばそうでもなさそう。
 気だるそうにしてやる気がなさそうな感じ。どうも読めない、と珍しく興味を持ったが、それとなんで翔太が仲良くなるんだか!
 忌々しい。
 チッと舌打ちが出る。
 まぁ、ヤツは外部組だから翔太にそういう意味で興味を持つかといったら当てはまらないだろうけど。
 それにあの容姿だ。
 いままでだって女達はヤツを離しはしなかっただろう。
 そんなやつがわざわざ男に走るはずはないだろうし、だったらかえって安全か?
 いや、そんなの分からない。
 無邪気な翔太は全然何も考えていないだろうから。
 もし万が一何かありそうだったら捻りつぶせばいいだけだ。
 和臣は布団に寝せた翔太の顔を見てそして頬を撫ぜた。
 

 翔太は寝ている間無意識に身体を摺り寄せてくる。
 一人で寝ている時はどうしているのだろうといつも不思議だ。
 小さい頃はずっと一緒に寝ていた。今でも恐さでパニックになっている時はそうしているし、夜中に翔太が目を覚まして潜り込んでくる事もある。
 恐くて震えてる時は大人しいし全部を和臣に縋ってくるので可愛い。
 昼間はどうしたって言う事を聞かないときもあるが、夜はそれはほとんどない。
 それにしても翔太は幼い、と思う。
 風呂場でだって裸でも平気で抱きついてくるしこうして無防備に一緒の布団で寝ているのだ。
 翔太がウチに来てからずっとしてきた事だから、小さな頃からの延長だから何とも思わないのかもしれないが。

 しかしなんでさっきはキスなんてしてしまったのか?
 思わずそうしていた。
 考えている間もなかった。突発的にだ。この自分が?
 いつでも翔太に関しては予測が出来ない。翔太自身の行動も自分の行動も。
 それが何なのか。
 「か、ずおみ…?」
 「いるよ」
 翔太の不安そうな声に和臣が答えるとほっとしたようにして和臣に抱きついてくる。
 …これが全部無自覚。
 一生翔太をここに閉じ込めておければいいのに、いつもそう思ってしまうのはまさか言った事はない。
 「翔太…安心していい」
 翔太の耳に囁いてやればすりと身体をよせてくる。
 こんな事をされて身体に熱が籠もってきそうになる。
 これはまだ子供だ。
 そう自分に言い聞かせた。
 でももう高校生だ。
 どうしたら和臣が満足するように翔太が手に入れられるのか?
 ふむ、と翔太の顔を見ながら和臣は考え込んだ。
 
 
 
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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