12 翔太(SHOUTA)
なんで和臣はキスしたんだろ?
結局それに関してうやむやになって終わってしまった。
和臣の笑い声なんて聞いたことなくてびっくりして思わず部屋から出てしまって…。
それでまたいつも通りに戻ってしまった。
あの笑いは何にたいしての笑い?
翔太を笑ったのではなかったみたいだけど。
教えてやる、って言ってキスってどういう事?
しかもその後は何もなし。
……別に期待してるんじゃない。
違う。
ふるふると頭を何回も振る。
しかもその前もあるらしい。全然翔太は覚えていないのだが。
ふるふるとまた頭を振った。
「三浦!なんだ文句でもあるのか?前に出て問題を解きなさい」
げっ!
授業中でした。
ちらっと柏木を見たらバーカと口パクで言われた。
「どうしたんだよ?」
帰り道。途中まで一緒にと柏木と一緒に学校を出た。
「うん……」
どうしよう…?でも翔太には誰も相談する相手もいないし、柏木なら馬鹿にしないかな?それにかっこいいヤツから見たら自分はどう見えるだろう?
柏木は頭もいいみたいだし、頭のいい一臣から見たらばかな自分がどう見えるのかちょっとは分かるかもしれない。
「あのさ…俺、好きなヤツいるんだ…」
柏木が驚いた顔して翔太を見た。そして口をパクつかせ、がりと頭をかく。
ムカつく事にかっこいいヤツは何したってかっこいい。
「……………………お前……それ、オトコか?」
はい?今、何て……?
「ぎゃああ~!なっ!!なんでっ!!!?」
いきなり柏木が確信をついてきて翔太は思い切り焦ってしまった。
「だって好きな女を<ヤツ>って普通は言わねぇだろ?好きなコとか言うだろ普通」
コイツ勘も鋭いらしい。
だから頭いいヤツって……、と諦める。
「う~~~……」
がしがしと翔太が頭をかくと柏木がくっと笑った。
「別に偏見ねぇし。俺が好きなのも男だし?」
にっと柏木が翔太に笑いかけてきた。
「えっ!?え?…ええええぇぇぇぇぇっ!!!?」
「……声でけぇって!」
「ま、ま、ま、まじでっ!?」
翔太は柏木の胸の辺りを思い切り掴んだ。
「まじだけど?」
平然としてる柏木に翔太は脱力した。
「柏木って…すげぇ……」
「は?意味わかんね。お前が先に言ってきたんだろ?」
自分はこんなに焦りまくりなのにだって柏木は全然堂々としてる。
というか、きっと女にもモテまくりだろうになんでオトコ?
「柏木って男の方好きなの?」
「んなわけあるかっ!気色わりぃ!その人だけ特別」
蕩けそうな顔。ああ、本当に好きなんだ~と納得する。
「で?好きなヤツがいて?それで?」
「ええと…柏木から見て俺ってどう見える?」
「はぁ?どう……って言われてもな…」
う~ん、と柏木が唸ってる。
「な、男好きなら、俺にキスしたいとか思う?」
「ナイっ!!!キショイ!!!!!つうか俺は男が好きなんじゃねぇ!」
柏木が仰け反って思い切り手を振って答える。
「…だよな」
「つうか、俺がもし万が一お前にキス、うえっ!…したいと思ったとしてもそりゃ意味ねぇだろ。お前が好きなヤツじゃねぇんだから」
「…そうだけど。……いいけど、柏木それってあんまりな態度じゃねぇ?」
「だってどうやったって無理!あ、100万位くれるならしてもいいけど」
「…どんだけだよ」
「あ、でもやっぱ100万貰ったって無理だ~」
「……いいけどね。俺だってヤだし」
「じゃあ言うな!」
「ん…。いやさ、相手さ、頭いいの。かっこいいの。そしたら俺ちんくしゃだし…」
「…ってほどでもねぇと思うけど?」
「そぉ?」
「まぁ…男子校の基準はよくわかんねぇけど。可愛い方だろ」
「……可愛いも嬉しくねぇけど…。で、そいつが何考えてるかどう思ってるかなんてわかんねぇんだ。それに意地悪ぃし」
「意地悪~?」
「そう。優しい時は優しいけど…」
パニックになった時は無条件で優しい。
「仲はいいんだ?」
「ええと、まぁ」
だってずっと一緒にいるし。
柏木が何かを考え込んでいる。
「好きだって言ったのか?」
「い、い、言うわけないじゃんっ!」
言えるはずない。だって和臣は一条の後継ぎで翔太は居候みたいなもの。
いやもっとひどい。だって何もかも世話になっているのだから。
自分から望んだわけじゃないけれど!
テーマ : BL小説
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