14 翔太(SHOUTA)
柏木に可愛くって言われたけどやっぱりそんなの分からなくていつもと一緒になる。
それはいいんだけど和臣の機嫌がどうも悪い気がする。
自分何かしたっけ?と考えるけれど何も思い当たらない。
ここしばらく和臣はあんまり機嫌よくないのが続いてた。
「翔太」
学校から帰って来て着替えを終えると和臣に呼ばれた。今日は和装じゃなくてちょっとがっかりだ。和臣の着物姿が凛としててかっこよくて好きだから。
「何?」
「ちょっと座りなさい」
なんか静かに和臣が怒ってる…?苛立ってる…?
やっぱり自分は何かしてしまったんだろうか?
でも朝は普通だったし、学校では顔を合わせてないんだから何もないはずなんだけど。
和臣に言われて座布団に座る。膝を付き合せて和臣が座っているけどやっぱり顔が怖い。
何したっけ?と今日一日を思い出しても全然思い当たらない。
「……えと…何…?」
伺う様に和臣を見ると和臣が携帯を取り出した。
「これはどういう事だ?」
「え?」
和臣が取り出した携帯を覗き込むと自分がいた。
そして柏木も。
しかも抱きついてる。
ああ!あん時の!と翔太は納得する。
「…えと、それがどうかした?」
和臣の片眉だけぴくりと動くとさらに顔が恐くなっていく。
「…どうかした…?そうじゃないだろう?説明しろと言ってるんだ」
「説明って……言われても……」
恋愛相談乗ってもらって、ってその当の本人前に言えるわけないだろう。
「別にただふざけてただけだけど…?っていうかなんでソレ…」
和臣があの場にいた?
「これは回りまわって俺のとこまで回ってきた。学校中に回るところだ」
「え?でも別に柏木とは何でもねぇし」
「何でもない?ふざけただけ?……お前は誰にでも抱きつくのか!?」
「はぁ!?んなわけねぇだろっ!なんだよソレ!!」
「お前が言ったんだろう?」
「なんでだよ!それにしたって別に和臣に言われる筋合いねぇだろ!?それにっ!好きでもなんでもないヤツにキスするヤツよしましだろっ!!!」
「…………ほぅ?」
和臣の周りの空気の温度がまた下がった。
なんかまた和臣の地雷を踏んづけてしまったらしい。
「翔太は何も分かっていないんだな」
「分かるって何が!?」
だからどうしてこう喧嘩腰の口調になってしまうんだろう?
きっと和臣が何もかも分かっていると言わんばかりの断定する言い方するからだ!きっと!
こんなんで可愛くなんて絶対になるはずない。
柏木~~!と思わず救いを求めたくなる。
どうすりゃいいの?
なんかめっちゃ和臣が怒ってるんだけど…。
「翔太」
静かに名前を呼ばれると腕をつかまれ引っ張られた。
「な、何!?」
身体を掴まえられて和臣の顔が目の前に来る。
つうかこの体勢何事!?
この間もだけどまるで抱かれてるみたいに和臣の腕の中にいるのはなんでだ?
ぐるぐると目が回りそうになる。
「俺よりまし?柏木が?」
「は!?何言ってんの?誰がそんな事言ったんだよ?」
「お前だろ?」
「誰も柏木がって言ってんじゃねぇよっ」
和臣が何を言いたいのか分かんねぇ。
その和臣の手が翔太の顎にかかる。
何…?
顔が近づいてくるとまたキスされた。
だから!なんで和臣はキスなんてすんだよ?
翔太は和臣の胸をどんどんと叩き、手で和臣の顔を押し戻そうとするけれど、体格も違うし力も違くて全然敵わない。
「ん、んんーーーー!!!」
やだ!和臣は好きだけど、これは違うって翔太にだって分かる。
「暴れるな」
手も足もばたつかせる翔太に和臣が舌打ちする。
なんだよソレ。
うっと涙が浮かんでくる。
「なんで、こんな事、すんだ、よ…」
和臣の顔はまだ目の前にあるけれど唇が離れたのに暴れるのをやめた。
「…柏木ともキスするか?」
「はぁっ!?するわけないだろ!キモい!」
「……キモい…?………ふぅん」
和臣は翔太の答えに満足そうにする。なんで?
「だからっ!なんで和臣はこんな事すんだよ!?」
「ああ?したいからに決まってる」
「……は!?」
したいから?したけりゃ誰でもいいのかよ…?
そりゃ一番一緒にいる時間が長いし、ここには誰も滅多に来ないし都合はいいだろうけど。
翔太は和臣から顔を背けた。
でも和臣は逃してくれない。
それからも何度もキスされ、翔太は言いなりになるしかなかった。
テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学