18 翔太(SHOUTA)
昼休みになると柏木はさっさと、もしくはいそいそと図書館に行く。
図書館の何がいいのか翔太には分からない。
「柏木って毎日図書館行くよなぁ?三浦は行かねぇの?」
「え~!俺本好きじゃないし。行ったって仕方ねぇもん」
教室でただ喋ってるだけ。
あんまり柏木以外とは話が合わないけどそこ等辺は合わせる事も出来るし、苦痛ってほどでもない。
「柏木行くならついてく、じゃねぇの?」
「は?なんで?」
なんでってなぁ、と周りのやつ等が顔を合わせるのに不思議だ。
「ちょっ!!!大変っ!柏木が二宮副会長お姫様抱っこして図書館から保健室まで運んだって!!!」
教室に一人が真っ赤な顔で飛び込んできた。
柏木が?副会長を?
へぇ、と翔太はただ思っただけだけど、次の瞬間に教室中の視線が翔太に突き刺さった。
「???」
何?
きょとんとすると今まで一緒に話してたヤツが恐る恐る口を開いた。
「お前平気なの?」
「は?何が?」
「だって柏木が他の…しかも副会長を、って…」
「は?だから何が?」
「ほら副会長って綺麗だろ?」
「そうだね~。だから何?」
「……彼氏、取られちゃうんじゃねぇの?」
「?」
彼氏?誰が?
「は?何言ってんの?」
「柏木と付き合ってんじゃねぇの?」
「…………………はぁああああっ!!?誰がぁ!?俺???」
「え…?違ぇの?」
「んなわけあるかっ!!!キモイ!!」
クラス中がしんとなった。
「え???もしかしてクラス皆そう思ってたって事???」
「クラスじゃなくて学校中みなそう思ってると思う…けど?」
目の前のヤツが答えるのに思わず大きく目を見開いた。
「なんじゃそれーーー!!学校中ってなんだ?意味分かんねぇぞ!どういう事だおい!?」
思わず目の前のヤツの襟首を掴んで揺さぶった。
「え~?だから三浦と柏木は付き合ってるって噂で…まぁ、学校中全員ではないと思うけど、皆そう思ってるって」
「はぁ?何で?」
「何でって…今年の1年の一番可愛いのと1番かっこいいのがくっ付いたって話だから」
「はぁぁぁ???」
やっぱり意味分かんね。
「柏木とは何でもねぇの?」
「何でもねぇよ!気持ち悪いっ!」
そうなんだ、とクラス中が以外だという顔をしてるのに頭がおかしくなりそうだ。
男子校って!
だから柏木と話が合うんだ!今はっきり分かった。
それにしてもそんな噂があったなんて全然知らなかった。
「なぁ…。その噂って学校中…って言ったか?」
「え?ああ、まぁ。普通は、余程疎くなければ三浦と柏木ってそう見られてたけど?」
……という事は和臣は絶対それ知ってるはずだよな?
でも和臣の口から聞いた事はないけど。
別に翔太の事なんかなんでもない、からか…?
抱きついてた写メは出回ってたって見せられたけど。
ああ、ああいう事してたからそんな噂になったのか?
疲れる……。
はぁ、と三浦は溜息ついてがっくりする。
しかも相手が柏木なんて。
「キモっ!」
「……本当なんだ?」
翔太が吐き出す言葉に目の前のやつ等がやっと納得を見せる。
「当たり前だ!ああ~…キショイ!」
柏木が帰って来たら教えてやろうと思ったけど柏木は帰ってこなかった。
保健の先生が柏木の鞄を取りに来てそのまま早退するという。
柏木が具合を悪くしたわけでもないのに?
どうしてだろう?と疑問は浮かんだけど、別に明日聞きゃいいや、と翔太は午後もそのまま普通に授業を受けた。
翔太も柏木も部活にも入ってなかったのでここ最近は一緒に途中まで帰っていたいたけれど今日は柏木が早退してしまったので一人。
とぼとぼというわけなんて別になく、普通に歩いて階段を降り昇降口で靴を履き替える。
運動もそんなに得意でもなかった翔太は中学の時も文科系の科学部に所属していて、そこはほとんど帰宅部だった。
さらに高校になって運動部に入る気もないし、そうなったら帰りも遅くなってしまうからそもそも入る気がない。
和臣の着物を綺麗にしたり、陰干ししたり、自分に出来る事があるんだからそっちを優先したい。
でも、しなくていいって言われた事を思い出すと気分が沈む。
和臣にお前などいらないって言われたような気になってきてしまう。
テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学