21 和臣(KAZUOMI)
いつの間にか翔太は眠っていた。
それでも手は自分に触れたままだ。
それにひどく満足する。
まだ明るいのに自分から隣に行っていいかなんて言う位だからよぼど恐かったのだろう。
眠ってしまった翔太の髪を撫でた。
猫毛の髪。
身体を丸めて寝てるのに本当に猫みたいだとふっと笑った。
そういえば噛み付いてくるときも毛を逆立てているようだし。
まだ日が高く、夜になってもいないのにコレだという事は今日はこのままずっとべったりなはず。
それはそれで歓迎される事だが、恐怖がなければ翔太はこうはしてこないという事が面白くもない。
何度も何度も確かめるように髪を撫でる。
さて、翔太を輪姦すなんて言った阿部をどうしてくれようか。
あれの家は小さな個人会社を経営していたはず。
もう少し出方を見るか…?
一応阿部はサッカーでは名がいくらか知られている。
もうすぐ地区予選も始まるが…。
翔太がこうして自分を頼ってくるのはいい事だ。一度だけなら目を瞑ってやろうか?いや、腹を殴ったとも言ったからな…同じ目には合わせてやらなければならないか?
それにしたって地区予選があるからあと少しは猶予を与えてやるか。
馬鹿をするかどうか見てればいいだろう。
何度も髪を撫でていたら翔太が目を開けた。
「…な、に…?」
「なんでもない。寝てていい……と、ダメだ。もうすぐ夕飯の時間だ」
「あ、…うん。起きる。寝てたんだ俺…?」
「ああ。腹は?」
「うん。全然大丈夫」
むくりと翔太が起き上がった。
そして身体をもぞもぞしながら視線を彷徨わせている。
触れていた手を離してしまって不安で仕方ないらしい。
「翔太」
手を出してやればぱっと安心したように笑って和臣の手を掴んだ。
「え、と……ごめん…」
「なにが?」
「だって……俺、もう高校生なのに……こんなで」
「別に構わない。そんなの知ってるの俺だけだからな」
自分が翔太をそうさせたんだ。
そこを後悔もしてない。
「夕飯はこっちに運んでもらおう。手を繋いだままじゃ母屋に行けないからな」
「……ん」
翔太が小さく頷く。
「俺は別に構わないが…。翔太が嫌だろう?」
「あ、あ、当たり前っ!」
ぱっと顔を赤くするのにふっと笑ってしまう。
まさか怖いので手を繋いでます、なんて言えるはずないだろう。
「じゃあ勉強でもしてるふりしとくか」
「……ん」
恥かしそうにしているけれど自分でもどうしようもないらしい。
可愛い事だ。
「あのさ…マワすって何?なんか言ってた意味分かんないんだけど?五十嵐って誰?」
食事の時はどうしたって手を離さなきゃ箸が持てない。
左利きと右利きだったならば手繋ぎっぱなしも可能だっただろうがあいにくと翔太も和臣も右利きだ。
おかげで翔太はぴったりと和臣の隣に身体を寄せるように座っている。
「……あとで教えてやる。食事の時に話す事じゃないな」
「あ、そう…?」
全然知らないのか?
「……お前、男同士でどうするかは知っているのか?」
「え?何を?」
「ナニ、をだ」
「え?だから何?」
きょとんとして翔太が和臣を見ている。
「セックスだ」
その瞬間見た事ない位に翔太の顔が赤くなった。
ああ、知っているのか。
和臣はちょっと安心した。
「……男同士って出来るの…?」
「……………は?」
…………本当に知らない、のか?
嘘だろう、と和臣は頭を抱え込みたくなった。
真っ赤になったのはその言葉だけに反応しただけか。
幼いとは思っていたけどまさか…。
和臣は力が抜けそうになった。
「女と男のは分かっているんだ?」
「ええ…と……う、ん……一応?…中学ん時に…雑誌見せられた。でもちょっとだけ!すぐにお前はいいからって、言われた、し…」
翔太が言い訳するように言うのにふっと笑いが漏れる。
確かにコレに見せるにはちょっと躊躇するだろう。中学の時はもっと子供っぽかったし。
だけどもう高校生だ。
……怖いって手を繋いでる位だから仕方ないのか?
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